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展覧会の絵

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第四話 インノケンティウス十世像その九

 その彼を見てだ。事務員達はまた話すのだった。
「うちの塾ってあれよね」
「そうよね。副理事長さんだけでもやっけいけるわよね」
「しっかりしてるし真面目だし」
「しかも優しいしね」
「人望もあるから」
 それでだというのだ。見れば彼女達の若田部を見る目は尊敬するものだ。
 その尊敬する目で見ながらだ。若田部のことも話される。そんな状況の塾だった。
 そして入塾から数日後だ。十字のいる教会にだ。
 試験の結果が来た。それはというと。
「合格ですか」
「うん、それも一番成績のいい人がいくクラスになったよ」
「といいますと」
「国立のね。最上級コースだよ」
「この国では大学は国立が一番ランクが高かったですね」
「そうだったね。それも」
 その国立の中でどの大学が最もランクが高いかもだった。十字は神父に話した。
「旧七帝大だったね」
「帝国大学ですか」
「そう、東京大学や京都大学だよ」
「そうした大学に入る為のコースに合格されたのですか」
「そうだよ。それでもね」
 どうかとだ。十字はだ。
 そのことに実に素っ気無い態度でだ。こう神父に述べた。
「僕には関係のないことだね」
「そうですね。枢機卿は既に」
「ボローニャ大学を卒業しているから」 
 イタリアの名門大学だ。欧州の中でも屈指の歴史を誇る。あの悪名高き法皇アレクサンドル六世、ボルジア家の主であるその法皇の出身大学でもある。
 それでだ。その大学をだ。十字は出たと自分で言うのだった。
「既に博士号も持っているしね」
「神学に哲学、法学に」
「文学もね」
「博士号も持っておられますから」
「もう大学に行くことはないよ」
 そうだったのだ。彼はだ。
 それでだ。そのコースに受かったこともだった。彼にとってはどうでもよかった。
 それでだ。神父にこう言うだけだった。
「潜入は成功したよ」
「では早速ですね」
「塾を調べるよ。色々と怪しいところもあるし」
「そうですか。早速ですか」
「うん、まず塾の理事長だね」
 何につけても彼だった。彼が疑問に思ったのは。
 それでだ。また言うのだった。
「彼のことを調べておかないと」
「そうですか。彼のですか」
「うん、調べるよ」
「清原塾といいますと」
 神父も彼が通うことになった塾のことも知っていた。
 そのうえでだ。その塾についてこう言うのだった。
「さしあたっては悪い評判はないですが」
「ないんだね」
「ただ。立地している場所が問題ですね」
「そういえば近くにコンビニやゲームセンターやカラオケがあるけれど」
「そうした店自体は問題がないのですが」
「そこに出入りしている客が問題だね」
「よからぬ者達が多いのです」
 そうだとだ。神父は十字に話すのだった。
 そのことを聞いてだ。十字はだ。方針を変えることにしたのだった。
「ではそうした店から調べようかな」
「はい、それではですね」
「まずはそこからだね。塾生といっても色々だし」
「清原塾には八条学園の生徒も多い様ですし」
「そう。調べればね」
「面白いことがわかるかも知れませんね」
 こうした話もしたうえでだ。十字は清原塾に通うことになった。彼が塾に来るとだ。あの警備員が彼に対してだ。気さくな笑顔で声をかけてきた。
「やあ、入塾おめでとう」
「はい、通わせてもらうことになりました」
「それも国立の最上級コースだね」
「そこになりました」
「凄いね。テストも殆ど満点だったそうだね」
 事務員もそのことを聞いていた。それで十字本人にも話したのである。 
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