トイレ掃除の人から聞いて
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第一章
トイレ掃除の人から聞いて
八条総合警備の営業部の社員式守正真は入社した時から優秀な人物として知られている、彼は行動力よりもだった。
情報通で知られていた、細面で糸の様に細い目で黒髪をオールバックにしている。背は一七〇程で痩せていてスーツがよく似合っている。三十代になったばかりで抜群の営業成績である。
その彼にだ、若手社員達は尋ねた。
「あの、どうしてですか?」
「式守さん相手企業のことご存知なんですか?」
「もう何でもご存知で」
「どの人がどういった人か」
「社内の状況もよくおわかりで」
「どうしてなんですか?」
「それはあれだよ」
式守は若手の面々に話した、落ち着いた冷静な声である。
「見るべきものを見てね」
「見るべきものですか」
「それをですか」
「見るんですか」
「その会社の入り口に」
それにというのだ。
「トイレだよ」
「トイレですか」
「そこですか」
「そこを見ることですか」
「ちゃんとした会社やお役所はトイレも奇麗なんだ」
こう言うのだった。
「掃除されていてね」
「ああ、そうしたこと言われますね」
「そういえば」
「俺聞いたこともあります」
「俺もです」
「自衛隊の基地や艦艇は何処もトイレが奇麗だっていうから」
徹底的にそうされていることをだ、彼も知っているのだ。
「しっかりしているんだ、しっかりしていないと」
「トイレが汚い」
「そうなりますか」
「そうだよ、もういい加減なところになったら」
会社自体がそうなってというのだ。
「お掃除ががおろそかになって」
「汚くなって」
「トイレもですか」
「汚くなりますか」
「特にね、汚い場所だからこそ掃除しないといけないけれど」
尚更というのだ。
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