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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百二十一話 張勲、昼に寝るのことその二

「わかったわね。貴女は第二陣に務めなさい」
「いえ、わたくしはもう盟主ではありませんわ」
 袁紹も負けてはいない。胸を張ってこう言い返す。
「ですから先陣を務めても問題はありませんわ」
「言うわね。水軍を率いた経験はないじゃない」
「泳ぎは達者ですわ。船酔いもしませんわ」
「けれどその指揮はどうかしら」
「わたくしにできないことはありませんわ」
 あくまで言い合う。だがその二人にだ。
 曹操と孫権が呆れた顔でだ。こう言うのだった。
「あのね。わざわざ敵が網を張ってる場所に入ってどうするのよ」
「姉様、ここは迎え撃つべきです」
「しかも麗羽、貴女まだ先陣がしたいって」
「いけませんの?」
「駄目に決まってるでしょ」
 曹操は呆れた顔で袁紹に告げる。義勇軍の時と同じやり取りだ。
「全く。どうしていつもそう先陣に立ちたがるのよ」」
「将の務めですわ」
 袁紹はむっとした顔で言い返す。
「ですからわたくしはあえて」
「そういうでしゃばりなところは相変わらずなんだから」
「積極進取、これがわたくしの座右の銘ですわ」
「ちょっとは落ち着きなさい」
 段々姉が妹に言う様な口調になってきていた。
「子供の頃から全く変わらないんだから」
「姉上もです」
 孫権は困った顔で姉に話す。
「ここは落ち着かれて下さい」
「攻めるよりもっていうのよね」
「はい、迎え撃つのも戦術です」
 そこから話す孫権だった。
「それは軍師達にも言われていると思いますが」
「それでもね。どうも性分でね」
「攻めずにはいられませんか」
「ええ、そうなのよ」
 実に孫策らしい言葉だった。
「袁紹と同じでね」
「全く。もう少しご自重頂ければ」
 いいとだ。孫権は困った顔で述べる。
「私としても有り難いのですが」
「御免なさいね」
「とにかく戦いは間も無くです」
 そのことは孫権も呂蒙達から聞いてわかっていた。
「その時に迎え撃ちましょう」
「そうね。その時にこそね」
 あらためてだ。孫策は真面目な顔で述べた。
「戦うわよ」
「そうしましょう。是非共」
「それでわかったわね」
 孫権の話が終わってからだ。曹操は再び袁紹に話した。
「麗羽、貴女もよ」
「わかりましたわ。仕方ありませんわね」
「そこで仕方ないことって言うのがね」
 曹操は溜息を出してやれやれといった顔になった。
「本当に反省しない娘なんだから」
「うう、それでも攻めることは」
「時と場合によるでしょ。ましてやいつも先陣になりたがるから」
「それが問題というのでして?」
「問題も問題、大問題よ」
 まさにそうだというのだ。
「春蘭といい貴女といい」
「春蘭はいい娘ですわ」
「いい娘でもね。猪突猛進なのは困るのよ」
「つまり周りを見ろってことですのね」
「大将は迂闊に前線に出たら駄目でしょ」
 何かあってはそれで指揮に支障をきたすからである。それは時と場合によるが袁紹はとかく常に出たがるから問題だというのだ。
「まして水軍の指揮なんて未経験なのに」
「ですからわたくしは戦は」
「未経験だと問題があるに決まってるでしょ。けれどもういいから」
「天幕に戻るのでして?」
「そうしましょう。お茶とお菓子を用意してあるから」
「わかりましたわ」
 ようやく袁紹も頷きだ。そうしてだ。
 袁紹も孫策も引いた。そうしてだった。
 連合軍は全軍で待っていた。敵が来るのを。
 そして敵の方もだ。彼等の陣でだった。
 于吉がだ。こう同志達に話していた。
「それではです」
「ああ、いよいよだな」
「攻撃を仕掛けましょう」
 こうだ。左慈にも答えるのだった。
「それで宜しいでしょうね」
「ああ、遅れたがな」
「しかし今から遂にです」
 攻めるとだ。于吉は述べた。
 
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