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イベリス

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第五十四話 雨が降る中でその十

「そういう奴」
「あの神父ね」
「確かにあの神父はかなりよね」
「あのシリーズ悪役も強烈だけれど」
「最初から悪のカリスマ出たけれど」
「あのカリスマは人間止めるって言ってね」
 第一部で出た名台詞の一つである。
「それで吸血鬼になったでしょ」
「自分を悪だってわかってるのよね」
「そのうえで動いてるのよね」
「だから人気あるのよね」
「それでいて只の悪党でないし」
「この神父も人気あるけれど」
 このシリーズのキャラの多くはそうである、それだけ作者の方の創作力が凄まじく魅力的なキャラクターを生み出しているということだ。
「悪い度合いで言うとでしょ」
「マフィアのドンは最低最悪でね」
「あの神父はドス黒いのよね」
「もう救い様がない」
「悪のカリスマよりずっとドス黒い感じするのよね」
「だからね」 
 それでというのだ。
「正しいことをしていると思って暴走したら」
「最悪よね」
「その為に何をしてもいいってなると」
「それこそね」
「そこに悪意が入ったら」
 人間誰しも悪意が存在している、問題はそれを自分の行動に入れるかどうかであるのだ。
「終わりだからね」
「悪意入るとね」
「そのまま悪だからね」
「正義じゃなくなるわね」
「もうそうなったらね」
「何処が正義ってなるわね」
「そうよね、ヴィーガンでも何でもね」
 この世のあらゆることはというのだ。
「正しいことをしていると言っても」
「暴走してね」
「暴力振るったら駄目だし」
「まして悪意が入ったら」
「正しくも何でもないわね」
「悪意が入って正義掲げたら」 
 それこそとだ、咲はクラスメイト達に話した。
「邪悪よね」
「それ以外の何でもないわね」
「何が悪かって定義が難しいけれど」
「けれどそうした場合ってね」
「悪になるわね」
「悪といっても色々だろうけれど」
 咲は考える顔と目で述べた。
「そうした場合も悪よね」
「まさにね」
「そうよね」
「何といっても」
「本当にね」
「ええ、悪も悪で」
 さらに言うのだった。
「邪悪の中でも」
「吐き気を催す邪悪?」
「それ?」
「あのシリーズでも出て来た」
「そういうのよね」
「そう思うと」
「そしてそれに自分では気付かない」
 自分が主張する正義が正義どころか邪悪それも吐き気を催す邪悪という最悪のものになっているということにというのだ。
「そうなってるのよね」
「もう最悪よね」
「そうなったらね」
「人間として」
「本当に」
「ええ、人間そうなったら」
 本当にと言うのだった。
「終わりよね」
「ええ、本当にね」
「そうなったら」
「その時はね」
「おしまいね」
「何ていうか」 
「吐き気を催す邪悪って」
 まさにとだ、咲はまた言った。 
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