少女は 見えない糸だけをたよりに
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次の日から、私は、お店の前で声を掛けていた。もちろん、新しい商品を売るためだ。何人かが、気を留めてくれて、買って入ってくれた。
そんな中、50代位の女性の人に声を掛けられて
「あのグリーンサラダばっかりじゃぁ駄目? 私 お肉 食べないの」と、
「あっ えーと 待ってくださいね 大丈夫です 詰め替えでもいいですか?」
「ええ いいわよ ごめんなさいね 手間かけて」
「いいんです ちっとも 少し、待ってくださいね」と、私は、急いで詰め替えて、お渡ししていくと
「これね 大根のお漬物 干したの入っているでしょ おいしいの ほうれん草も身体に良い気になるしね それに、外の皮がおいしいの サクッとしていて、ふんわりして 昨日ね うちの研究室の子にもらって、食べたら、おいしくってね」
「ありがとうございます 合成調味料なんかも使わないで、全部自然のものですよー」
「うふふ そうみたいね あのね 私 火曜と金曜 12時半に通るから 用意しておいてくださる?」
「わかりました お待ち申しております ありがとうございます」
その女性は大学の校門のほうに歩いて行った。あのマカロニのグリーンサラダは私の自信作なんだ。眼を留めてくれたことに、私は、すごくうれしかった。
午後になって、手が空いた時、すみれさんが
「香波ちやん 余計なことなんかも知れないけどね フルーツサラダの切り口をもっと ちゃんと並べられないかしら せっかくの苺が曲がっているのね だから花びらみたいに両側に均一にね」
「そうですね 今 見た目 悪いですね 工夫します」
「それとね キューイ せっかく入っているのに 埋もれているのよ だったら、箱に入れた後に載せるってどう? その方が新鮮よ 立体感あるし、目立つし」
「うわー すみれさん やってみます ですよね だから、フルーツサラダ売れ行き悪かったのかなー」
「それとね グリーンサラダのも 真ん中にアクセントでラディシュとか赤ピーマンを小さく切って置いたらどうかしら」
「ですね その方が見栄えするかも知れませんね じゃあ 焼き豚のも何か考えます ありがとうございます すみれさん」
「ふと 思っただけよ だけど、香波ちゃん この商品 きっと、評判になるような気がするわよ 外側の皮 おいしい 今までに無い、食感と味よ」
「香波ちゃん 良かったわねー パン屋さんのプロに認められた味よ」と、それを聞いていた暁美さんも
「そんなー 暁美 私は、しがない貧乏パン屋の女房でございます」と、仲の良いふたりがふざけ合っていた。
すみれさんが言っていたように、お客様に認知されるにつれて、売れ出したのだ。一日、50セットを作って2時過ぎには、完売していた。だけど、燿さんはそれ以上は作らないと言って居たのだ。そして、すみれさんは、翌年、思いがけないことから、そのパン屋さんの事業を拡げて行くことになるのだ。
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