イベリス
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第五十四話 雨が降る中でその三
「あんな悪い連中ないし」
「そうよね」
「巨人だけは駄目よ」
「悪事の限りを尽くして」
「本当に酷いことしてるからね」
「いつもいつもね」
「そんなチームだからね」
「その巨人の本拠地見ることはね」
このことはというのだ。
「それだけで腹が立つわ」
「今年は開幕二十連敗でね」
「今もぶっちぎり最下位だけれど」
「それでもね」
「いるだけで邪悪なのよね、巨人って」
「見ているだけで」
「その巨人を見ることは腹が立つわ」
山手線で言うと文字通りど真ん中にある、心ある人はその路線を通る時に見える邪悪な瘴気を放つドームを見て悪を成敗せねばと思うという。
「そのことだけはね」
「思うのね」
「まあ巨人本拠地でも勝率低いけれどね」
「二割位でね」
「大抵負けてるけれどね」
「それでも腹立つことは事実だから」
このことは否定出来ないというのだ。
「本当にね」
「それでなのね」
「結界のお寺や神社巡っても」
「そこで神聖なものを感じてね」
「聖地巡りも出来ても」
「声優さんをお見掛け出来ても」
「巨人を見ることだけは嫌よ」
本当にというのだ。
「どうもね」
「まあそれはね」
「仕方ないわよね」
「巨人については」
「あそこに本拠地あるから」
「ええ、だからね」
それでというのだ。
「出来たらどっかに行って欲しいわね」
「そうよね、平壌とかね」
「そうしたところに行って欲しいわね」
「そこで野球して欲しいわね」
「巨人は」
「ええ、読売ジャイアンツじゃなくてね」
この邪悪に満ちた名前だけでなくというのだ。
「平壌ジャイアンツとかね」
「あっ、いいわね」
「北朝鮮で野球出来るかどうか知らないけれど」
「施設とか設備整えるお金もあるかどうか」
「食べものすらね」
「そんなところだけれど」
それでもというのだ。
「巨人ならいいわね」
「巨人には無様な恰好悪い姿が似合うし」
「それならね」
「あの街に行って」
「何もないのがいいわね」
「だからよ」
それでというのだ。
「そこだけが思うわ」
「東京ドームね」
「巨人の本拠地」
「それさえなければ」
「結界の中に」
「そう思うわ、ただね」
ここでだ、咲は。
暗い顔になってだ、クラスメイト達にこうも言った。
「本所とか行ったらね」
「ああ、七不思議」
「それよね」
「本所七不思議って有名よね」
「おいてけ堀とかね」
クラスメイト達も知っていてそれはと応えた。
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