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少女は 見えない糸だけをたよりに

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8-3

「ねえ 香波 祇園祭いくのー 彼氏と」と、くるみちゃんが

「ううん 彼 バイトだから」

「そうなんだ 可哀そうね ウチ 彼と約束してんだー 一緒に行く?」

「嫌なこった 当て付けみたいにされるに決まってんだから」

 だけど、家に帰って、お姉ちゃんに聞いてみたら

「うーん 見に行っても、コンチキチンだけだしなー 去年は、香波に見せてあげようって思ってたから・・ 彼は?」

「うん バイトって・・ 駄目なんだよ」

「行きたいの?」

「ウン! 見てると楽しくなるじゃぁない」

「それじゃぁさ あなたの、もうひとりの彼氏におねだりしてみたら 喜ぶよ きっと」

「もうひとりって?」

「いつも 一緒に、散歩してるじゃない」

「あぁー お父さん? そんなの悪いわよー」

「そんなことないよ 香波の言う事なら、なんだってー」

 そして、晩御飯の時、お姉ちゃんが

「お父様 香波が 宵々山 連れて行って欲しいんだって 甘えたいみたいよ」

「えー そーなんか そりゃー ワシは 構わんけどな 香波」

「えぇ お願いできればー」と、私は、下を向きながら・・。お姉ちゃん 私 そんなつもりじゃー・・。

「なに 言っとんじゃー 香波の言う事なら なんでも ワシは嬉しいよ」

 そして、その日の夕方 浴衣を着せてもらって、お姉ちゃんにお化粧もしてもらった。お姉ちゃんも、浴衣姿だったんだけど・・。

 タクシーで、河原町の四条まで行って、それから、歩いた。もちろん、私は、お父さんの腕を掴むように組んでいた。お父さんは、夏物の着物なのか浴衣ではなかったのだけど。

「香波 あの上に登ったことはあるのか?」

「あれって あの山鉾の上ですかー? ないですよー」

「そうか じゃぁ 登ってみるか」と、そこへ連れて行ってもらった。2階から、覗いているような・・周りは提灯で・・月鉾だって聞かされた。だけど、お父さんは誰かと話していて、私だけで・・浴衣姿の人達がぞろぞろ歩いているのが、見えて、これが動くなんて信じられなかった。

 帰りは、歩いていいかと聞かれて、木屋町通を上がって行って、三条を過ぎたところの懐石料理屋さんに入って行った。お父さんは、事前に言っておいたみたいで、鴨川も見渡せる席に通されて、お父さんはビールを頼んでいた。そのうち、小鉢とか鮎の塩焼きとか

「輝が、今夜はうまいものを作ると言って居たから、あんまり食べられないけどな 歩いたから、途中休憩じゃ」

「素敵なお店 まだ 鴨川を歩いている人 あんなに居るんですね」

「そうだなー こんなに繁華街が近くて、雰囲気があるところは鴨川の他には無いんじゃぁないか 恋人たちが多いようだけど ワシみたいに、娘と歩いているなんて、そう居ないぞ それも、とびっきりの美人だ 何人も振り返って、香波のこと見ていたぞ」

「そんなー お父さんを見ていたんじゃぁないですか 素敵なお着物ですから」

「香波 もっと 自覚しなさい お前は綺麗な一人の女性なんだよ もう、誰が見ても、男の子じゃぁないんだから」 
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