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桃源郷

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第四章

「それならだ」
「信じて頂けますか」
「我等の話を」
「うむ、お主達の目を見てもな」
 太守はそちらも見て述べた。
「嘘は吐いておらぬ」
「信じて頂き何よりです」
「わし等にとっても有り難いことです」
「しかしその様な場所があるならな」
 太守は今度は興味深そうに述べた。
「私も行ってみたい」
「太守様もですか」
「そうされたいですか」
「興味を持った、では案内してくれ」
「途中幾つか目印を付けておきました」
「それを辿っていきましょう」
「ではな」
 太守は二人を道案内として兵達も引き連れてその村に向かった、二人は付けてきた目印に道を通って来た記憶を辿ってだった。
 その途中の道は同じだった、しかし。
 二人はその途中であることに気付いた、そのことはというと。
「桃がないな」
「桃の木がな」
「花が咲き誇っていたというのに」
「もう散ったのか」
「いや、桃の木がない」
「それだけがない」
 二人はこのことについて怪訝に思った。
「道は合っているのに」
「何故だ」
「桃の木がない」
「どうしてそれだけがない」
 二人はこのことに首を傾げさせた、だが。
 道には目印もあり桃以外は記憶の通りだった、それでそのままだった。
 船で上がっていった、そして山に着いたが。
 目印はあった、しかし。
「おや、穴がない」
「どういうことだ」 
 馬と陳は山の麓にあった穴がないことに驚いた。
「一体」
「この前はあったというのに」
「不思議だ」
「穴がないぞ」
「お主達の言う通りここまで目印はあった」 
 太守は穴がないことに驚き周りを必死に探す二人に述べた。
「しかし穴がない、このことはな」
「わし等も訳がわかりませぬ」
「この前はあったというのに」
「その村はこの世の村ではあるまい、ここに来るまで桃の花が咲き誇っていたそうだな」
「そうです」
「左様でした」
「桃は桃源郷のもの」
 太守は二人に話した。
「お主達は桃源郷に入ったのであろう」
「そうだったのですか」
「我等はそうだったのですか」
「そうであったのだろう、桃源郷には行こうと思って行こうと思えばな」
 そうしようと考えればというのだ。 
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