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第三章
「そうした国だとご理解下さい」
「それではくれぐれもご用心を」
「江戸に向かわれそうされる時も」
「宜しいですね」
「そうします」
シーボルトはオランダ人達の言葉に頷いた、そうしてだった。
そのうえで江戸に向かい幕府の天文方である高橋作左衛門と話が出来た、それで彼に頼んで日本の地図を貰うことになったが。
穏やかな顔の高橋はシーボルトに密かに話した。
「私も地図位ならとです」
「実際にそうですよ」
シーボルトは素っ気なく答えた。
「今時」
「そう思うからお渡ししますが」
「それでもですか」
「幕府はです」
「神経質過ぎますね」
「どうしても、ですから」
「地図はですね」
「お渡ししますが」
それでもというのだ。
「門外不出で」
「それで祖国まで、ですね」
「送って下さい」
「それはご安心を、すぐにオランダに向かう船に乗せて」
シーボルトも幕府の警戒心に神経質過ぎると思いつつも理解していた、それで彼も迂闊なことはせずにと答えた。
「そうしてです」
「日本に置かれないですね」
「そうします」
「それではそうして下さい」
高橋はシーボルトに強張った声で頼み込んだ。
「是非、そして」
「それからはですね」
「お国でもそうは出されない様に」
「慎重過ぎませんか」
「それだけ幕府も警戒しているのです」
「幾ら何でもですが」
「本当にお願いします」
こう言ってシーボルトに日本の地図を渡した、そしてシーボルトは高橋に約束した通りにすぐに地図を船に載せ。
祖国に送った、これで彼は言った。
「色々ややこしかったですが」
「これで、ですか」
「安心ですか」
「そう言われますか」
「はい、もうこれで」
出島の港で地図を載せた船を見送りつつオランダ人達に微笑んで話した。
「安心です」
「出来れば貴方ご自身が保管されてです」
「隠しておいて」
「貴方が出られる時に持って行くべきだったかと」
「これは」
「そこまでしなくていいでしょう」
シーボルトはオランダ人達にいぶかしむ顔で応えた。
「流石に」
「海は荒れます」
「津波も嵐もあります」
「貴方もここまで来てご存知でしょう」
「このことは」
「確かにそうですがそうそう船も沈まないからここまで来られていますね」
オランダ人達に笑って応えた。
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