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大統領の髭

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第二章

「注目される、だからだ」
「あなたに足りないものね」
「それがわかればな」
 その時はというのだ。
「それを足してだ」
「より見られる様にするのね」
「合衆国は選挙で政治家を選ぶ」
 リンカーンはアメリカのこの特色も話した。
「大統領もだ、当選しなくてはだ」
「意味がないわね」
「どれだけ優秀でも当選してこそだ」
「政治の場に立てて」
「そして自分が実現したい政策もだ」
 これもというのだ。
「実現出来る」
「まさに全ては当選してこそね」
「そして当選するにはな」
 選挙に勝ってというのだ。
「注目されることでだ」
「そして注目される為には」
「外見でもな」
「そうされることね」
「それが現実だ、人相も問題だが」
「外見もなのね」
「そうだ、だから足りないというものをだ」
 それをというのだ。
「わかればな」
「足すのね」
「そうする」 
 必ずとだ、こう言ってだった。
 リンカーンは自分の外見がより整いその為に注目されるには何が足りないのかを考えていった。そうしている間に。
 ある少女から手紙が来た、そしてその手紙を読んでからだった。
 リンカーンは髭を伸ばしはじめた、頬から顎にかけて一つになっているそうした髭になった、色は髪と同じだった。
 その伸びてきている髭を見てだ、妻は目を瞠って夫に言った。
「似合っているわね」
「君が見てもだね」
「ええ、かなりいい感じよ」
「実はある女の子から手紙が来たんだ」
「女の子!?」
「うん、その娘が手紙で私に教えてくれたんだ」
 リンカーンは自分で自分の靴を磨きながら妻に話した。
「私の顔に髭があれば」
「尚いいって書いていたのね」
「そうだったんだ、だから」
 それ故にというのだ。
「私はだよ」
「お髭を生やしだしたのね」
「そうだよ、君も似合っているというのね」
「これまでは顎が寂しかったわ」
「私は面長だから余計にだね」
「どうもね、けれど今はね」
 妻は夫の今を話した。 
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