大衆の正義
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第二章
「死刑判決受けてもな」
「死刑執行されるまで時間あるしな」
「死刑執行されるまでのあいつを養う金も税金だぞ」
「全部税金から出るんだぞ」
「あれだけのことしてあの態度の奴をな」
「口開いたらしばくぞかよ」
「考えれば考えるだけ腹立ってきたな」
小西を見て考えてだった。
彼等は実際に怒りのボルテージがこれまで以上に上がってきた、それである日の裁判の後であった。
裁判所から出て悪びれない態度の彼を見てだった。
群衆の誰かがこう言った。
「俺達でケリつけてやれ!」
「ああ、そうだな!」
「もうここで終わらせろ!」
「何が死刑反対だ!」
「死刑執行まで税金で食わせるな!」
「さっさと殺せ!」
「ここで終わらせろ!」
他の者達も言い合った、そうしてだった。
彼等は留置所に戻る為に車に乗ろうとした小西に殺到した、そして警官や死刑反対をこの場でも喚く市民団体を退け。
そしてだ、小西を捕まえた。小西は彼等にもこう言った。
「しばくぞ・・・・・・げふっ!」
「何がしばくぞだ!」
「いい加減にしろよこの野郎!」
「六人殺してその態度か!」
「遊ぶ金欲しさに強盗して四人強姦してか!」
「手前の下らねえ欲の為に何人死んだと思ってるんだ!」
彼等は小西を囲み殴り蹴りながら言った、最初に顔を拳で殴った者が誰かは全くわかりはしなかった。
彼等は小西を囲んだ、そして。
「俺達がここで終わらせてやる!」
「死刑だ死刑!」
「死ね!」
「お前みたいな奴は生きているだけで害だ!」
「生きる価値すらない屑が!」
「生きてるだけで迷惑なんだよ!」
「殺せ!殺せ!」
口々に言ってだった。
彼等は小西を裁判所の公園に連れて行き。
そこで殴り蹴るの暴行を加え続けた、彼等を追った警官達は機動隊まで呼んで威嚇射撃までしてだった。
彼等を止めた時にはもう一時間経っていた、その一時間の間に。
激しい暴行を受けた小西は死んでいた、顔の形が完全に変わり歯は全部折れて鼻はひしゃげ片目はもがれており。
手足は指も含めてあちこちが折れて外れており身体中瘤や痣だらけになっていた、内臓も何ヶ所も破裂しており。
滅茶苦茶に折れた肋骨が肺に刺さり睾丸は両方共蹴り潰されていた、それで彼は完全にこと切れていた。
だが実行犯達は。
「しまった、逃げられた」
「容疑者の亡骸の確保の間にそうなった」
「誰も捕まえられなかった」
「一体誰がやったんだ」
「そもそも数が多過ぎる」
「誰が容疑者を殺したかわからないぞ」
「これは警察の失態だ」
警察は小西をリンチで殺した群衆を捕まえ損ねた、しかも。
「あんな奴ああなって当然だ」
「というかさっさと死刑にしなかったからだろ」
「俺だってああしてたぞ」
「俺もだ、あそこにいたらな」
「悪人を成敗したんだぞ」
「誰も訴えるな」
「警察は今回何もするな」
世論はこうした意見が多かった、それでだった。
警察も苦慮し玉虫色の決断を下した。
「犯人はわからない」
「誰も捕まっていないしな」
「ではここは名乗り出た人を逮捕しよう」
「そして不起訴だ」
「証拠不十分というか誰が何をしたかわからない」
「それじゃあな」
「そうしよう」
こう話してそしてだった。
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