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イベリス

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第五十三話 雨の東京その二

「太宰のことを考えたらね」
「思うところあるのね」
「そうだったわ」
「太宰治ね」
「教科書にも出てるしね」
「誰でも知ってる作家さんだしね」 
 当然咲も知っている、それでこう言うのだ。
「走れメロスとかね」
「人間失格とか斜陽とか」
「誰でも知ってるわね」
「走れメロスなんてね」
 そのクラスメイトもそれこそという口調で話した。
「道徳の教科書にも出て来るしね」
「小学低学年でね」
「そんな人だから」
「もう誰でも知ってる人で」
「自殺したこともね」 
 心中したということをだ。
「知ってるわね」
「そうよね」
「津軽の人で」
「大地主のお家に生まれて」
「物凄く有名よ」
 他のクラスメイト達も話した。
「写真見たら男前だしね」
「そうそう、あの人かなり顔いいわよね」
「芥川龍之介も男前だけれど」
「太宰もかなりよね」
「そういえば二人共美形ね」 
 咲は太宰だけでなく芥川の話が出て二人共顔が整っているという話を聞いて確かにと頷いて述べた。
「それもかなり」
「そうよね」
「傍にいたら絶対好きになりそう」
「頭いいしあのイケメンだったら」
「作品も読んだらね」
「志賀直哉も美形だけれど」 
 咲はこの作家の名前も出した。
「二人もかなりよね」
「そこもポイント高いわよね」
「写真見たら実際かなりだし」
「結婚してくれとか言われたら頷くかも」
「私も」
「心中するのは嫌だけれど」
「もてたでしょうね」
 太宰も芥川もとだ、咲は心から思った。
「間違いなく」
「だから愛人さんいたんでしょ」
「正妻の人だけでなく」
「あの顔で人気作家でお金もあったら」
「それならね」
「そうよね、当時はちょっとお金と立場あったらお妾さんいたし」
 そうした時代であったのだ、昭和までは政治家や大企業の経営者も普通に妾がいたりした、太宰だけではなかったのだ。
「太宰もそうだったけれど」
「あの顔だから余計によね」
「もてたでしょうし」
「作風ももてる感じらしいし」
「それだとね」
「今だと愛人いたら叩かれるけれど」
 不倫であるとだ。
「昔はよかったのね」
「あの頃それで言う人いなかったのよ」
 太宰の話をしたクラスメイトも言ってきた。
「愛人さんいてもね」
「そうだったのよね」
「本当に当時は普通だったから」
 愛人当時で言う妾がいたことはだ。
「心中したことは言われても」
「愛人さんがいたことは」
「そのうちのお一人との間に子供がいても」 
 認知はしている、この愛人が斜陽の主人公である。 
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