ウルトラマンカイナ
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過去編 ウルトラシスニャーファイト
前書き
◇今話の登場ウルトラマン
◇ウルトラシスニャー
別次元の地球を守護している宇宙警備隊の一員であり、遥か遠くの世界から新人ウルトラマン達を見守っていたレッド族の女性ウルトラ戦士。猫耳やツインテールに、尻尾を生やした紅いキャットスーツを想起させる独特な外見の持ち主であり、巨乳の谷間にあるタイマーは猫の肉球型でピンクに光っている。必殺技はハート型の光線で相手を「魅了」し、一瞬のうちに抱擁で相手をへし折るヘヴンズハグ。
※原案は黒子猫先生。
この次元の地球における、全ての怪獣災害の元凶となった殺戮集団――テンペラー軍団。その襲来から約2年前の地球は、当時のBURKと、ウルトラマンアークこと八月朔日要に託されていた。
『くそッ……! なんなんだこの怪獣、いくら斬ってもキリがないッ!』
――とある孤島の海岸線を舞台に繰り広げられている激闘。その戦場に立つアークは斬撃の光輪を矢継ぎ早に放ち、怪獣の一部である緑色の触手を斬り続けていた。
だが、何度切断されてもその瞬間に再生する触手は、アークの斬撃などものともしていない。触手の主である「植物怪獣」ことグリンショックスは、何度身体の一部を斬られても意に介することなく、獲物であるアークを執拗に狙い続けていた。
『うッ!? くそッ……! こいつ、再生が早いだけじゃない……! これじゃあ、光線を外さないように近づくことも出来ないぞッ!』
――M78星雲に存在する惑星ソーキンを故郷とする怪獣「ソーキン・モンスター」。その一種であるグリンショックスは緑色の触手を全方位に振り回し、アークを寄せ付けまいとしている。
従来種の半分程度の身長しかない50m級の個体なのだが、それでも今のアークにとってはかなりの脅威となっていた。
アーク最大の必殺光線であるメタリウムアークシュート。その一閃を確実に叩き込める間合いまで、近寄れずにいるのだ。
『ぐぅうッ!?』
やがて無数の触手はアークの首に絡み付くと、そのまま本体の懐に引き摺り込もうとして来る。頭部の花弁に貯蔵されている禍々しい溶解液は、ぐつぐつと煮え滾っていた。
その光景から自分に迫りつつある危機を察したアークは、首に絡み付いた触手を掴み、懸命に踏み止まろうとする。だが触手の引力は凄まじく、アークは足元の土を抉りながらグリンショックスの眼前に引き摺り出されようとしていた。
『く、くそッ……! このまま、やられてたまるかッ……!』
このままではアークが捕食されてしまう。その窮地を目の当たりにしたBURKの戦闘機は懸命にミサイルを連射し、その頭部に弾頭の嵐を叩き込んで行くのだが――植物怪獣は怯みもしていない。
「弘原海隊長、このままではッ……!」
「ちきしょうッ……! アークをやらせるわけには……うぉおッ!?」
その光景に歯噛みする間も無く、まるでハエを払うかのようにグリンショックスの触手が飛んで来る。弘原海隊長と駒門琴乃を乗せたBURKの戦闘機は、その一閃を辛うじて回避していた。
『く、くそォッ! もう、ダメなのかッ……!?』
BURKのミサイル攻撃でもびくともしない植物怪獣。その攻撃を阻止する方法など、無いというのか。
そんな考えが全員の脳裏を過った……その時だった。
『こらこら、ダメだよアーク! 決着が付く前から諦めても良いなんて、お姉さんは教えてないぞぉ〜?』
『げっ……!?』
突如、鈴を転がすような女性の声が鳴り響いたかと思うと。遥か上空から、女性のウルトラ戦士が飛来して来たのである。
その女性戦士はグリンショックスの頭上からハート型の光線を照射し、怪獣の動きを足止めしていた。光線の効果によるものなのか、光を浴びた触手の動きは非常に緩慢なものとなっている。
彼女はその隙にアークの傍らに着地すると、首に絡み付いていた触手を簡単に引きちぎってしまった。女性らしい優美な曲線を描いた身体からは想像も付かないそのパワーには、アークもBURKも困惑している。
『全く……地球での戦いでちょっとは成長したかと思ってたんだけど、まだまだ未熟さは抜けてないみたいだねぇ。そんなんじゃあ、立派なウルトラ戦士にはなれないよっ!』
『げほ、げほっ……! シ、シスニャー教官……!』
地球に来る前のアークに戦闘の基礎を叩き込んだ、女性戦士の「ウルトラシスニャー」。彼女はおどけたような口調で「教え子」を嗜め、咳き込むアークの鼻先を細い指先でピンっと弾いている。
猫耳やツインテールに、尻尾を生やした紅いキャットスーツを想起させる特徴的な外見。たわわに揺れる巨乳の谷間に埋め込まれ、ピンクの輝きを放っている猫の肉球状のカラータイマー。細くくびれた腰に、ぷりんと弾んでいる巨尻。
そのどれもが、従来のウルトラ戦士像からはかけ離れたものとなっていた。
「あ、あれもウルトラ戦士の1人……なのか!? どう見ても女じゃねぇか……!」
「……しかし、見た目が女だからと言って非力だとは限らないようですね。現に彼女は今、アークでもどうにもならなかった奴の触手をああもあっさりと……!」
上空から戦況を見守る中、その(色々な意味で)規格外なシスニャーの容姿に瞠目している弘原海を他所に、琴乃は先ほど彼女が見せた並外れたパワーを思い返していた。
斬撃光線の類でもないただの握力だけで、あの強靭な触手を千切ってしまったのだ。見かけこそ「スタイル抜群な女性」だが、その外見に騙された者から痛い目を見ることになるのだろう。
『……あんっ!』
『シスニャー教官ッ!?』
それを知ってか知らずか、グリンショックスは触手で狙う相手をアークからシスニャーへと切り替えていた。グラマラスな彼女の肢体にねっとりと絡み付く緑色の触手が、その全身を這い回っていく。
握力だけで触手を千切って見せたシスニャーのパワーでも、引き寄せる力には抗えないのか。彼女の肉体は徐々にグリンショックスの方へと引き寄せられようとしていた。
『シスニャー教官ッ! このッ……!』
『……大丈夫だよアーク。この子、もう私に「魅了」されちゃってるみたいだから』
『えッ……!?』
アークは師を救うべく斬撃の光輪を放とうとするのだが、当のシスニャーは弟子の攻撃を制止し、敢えてされるがままとなっていた。先ほど彼女が照射したハート型の光線によって、グリンショックスはシスニャーに「魅了」されていたのだ。
そのためグリンショックスは、触手で絡め取った彼女を懐に引き寄せはしたが――溶解液を浴びせようとはしていない。あくまで彼女を自分の手元に置こうとすることに拘っているのか、その巨体を彼女の肉体に擦り付けようとしていた。
『うふふっ……甘えんぼさんだなぁ。でも残念、あなたみたいにヌメヌメしてる怪獣って……私のタイプじゃないんだよねぇ』
そんなグリンショックスの姿に、妖艶な笑みを溢すシスニャーは。その優美な両手を怪獣の背に回し、豊満な乳房をむにゅりと押し当てるように抱き締めると――
『……ふんッ!』
――先ほど触手を引きちぎったパワーを全開にして。グリンショックスの上体を、「抱擁」の要領で両断してしまうのだった。
魅了の光線で相手の敵愾心を解きほぐし、懐に誘い込ませたところで放つ「ヘヴンズハグ」。女性戦士ならではの色香と、その裏に隠された攻撃性を併せ持つシスニャーの必殺技であった。
『アーク、この子は海水が弱点だよ! 後は分かるねっ!?』
『えっ……あ、はいッ!』
その悍ましい攻撃にアークと弘原海が戦慄を覚える中、シスニャーの声が上がる。気を取り直したアークが両腕を振りかぶったのは、シスニャーが「射線」から逃れるべく真横に転がった直後であった。
『メタリウムッ……アークシュートォッ!』
やがて、L字に構えられた両腕から放つ眩い光線が、再生直後のグリンショックスに直撃する。その光線の勢いに押し流された怪獣の巨体は、踏み留まる暇もなく海面まで吹っ飛ばされてしまうのだった。
――ヘヴンズハグによって上体を切断されたグリンショックスは、持ち前の再生能力を活かしてそのダメージからも回復して見せたのだが、千切られた上半身全てを再生し切るまでには大きな隙が生じていた。触手1本とは損失の量が比べ物にならないからだ。
その隙にメタリウムアークシュートを叩き込めば、グリンショックスが反撃に転じる前に弱点の海に突き落とすことが出来る。そこまで読んだ上での、シスニャーの作戦だったのである。
『……ふふん、どお? 凄いでしょ、うちのアークは』
そんな彼女の術中に嵌った植物怪獣は、そのまま海中で崩れ落ちてしまうのだった。教え子の必殺技が完璧に決まったことに喜ぶ女性戦士は、得意げに巨大な爆乳を揺らしている。2大ウルトラ戦士の勝利を目の当たりにした弘原海と琴乃も、上空でほっと胸を撫で下ろしていた。
『シスニャー教官、ありがとうございました……! 教官がいなかったら、俺……』
『良いの良いの、君が一人前になるまでしっかり面倒を見るのが教官の仕事なんだから。……君なら、きっと地球を救える。私も、そう信じてるよ』
『教官……』
いずれ教え子達の前に立ちはだかることになるであろう、テンペラー軍団。その影を予感していたシスニャーは、真剣な笑みを浮かべてアークの肩を軽く叩くと――巨尻を弾ませて地を蹴り、遥か宇宙の彼方へと飛び去っていく。
まだ若く未熟な戦士が、彼女の期待通りの活躍を見せることになるのは、この戦いから約2年後のことであった――。
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