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Fate/WizarDragonknight

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バイクが壊れた

 見滝原南。
 大きな川に断絶され、秩序も経済も全くないその地域。
 前回は近くにある橋から可奈美、紗夜、リゲルとともに訪れた。
 今回はハルトただ一人。
 輸送用の通路から降り立ち、ハルトは見滝原南を一望し、空を見上げた。
 青空が紅に染まる時間。今回おそらく遭遇することになるであろうフォーリナーが得意とする時間帯。

「時間はあまりないよね……」

 ハルトは息を吐き、アクセルを入れる。
 道路交通法などもないこの場所は、たとえ狭い道であろうともバイクの走行を咎める者はいない。
 蒼井晶の拠点の場所は覚えている。
 廃墟となったスーパー。
 建物の壁にマシンウィンガーを停め、ヘルメットを外す。
 そのままハルトは砕かれたガラス片を踏む音を聞きながら、ハルトは暗くなったスーパーに足を踏み入れた。

『ライト プリーズ』

 光の魔法で、スーパーのフロア全体を照らしていく。
 二階への入り口であるエスカレーターは、前回のフォーリナーとの戦闘で半壊している。ジャンプで破損個所をスキップしながら、ハルトは二階へ上がっていく。

「でも、入口がこんな壊れたところで住み続けるわけないよね……」

 ハルトはそう言いながら、二階で再び光の魔法を使った。明るくなったフロア、そのバックヤードに入る。
 だが。

「まあ……いないよね」

 蒼井晶の私物があった場所には、もう彼女のものがない。
 用具や着替えがなく、彼女がいた形跡も無くなっている。

「……どうやって探したものかな」

 ハルトはスーパーを後にしながらマシンウィンガーに跨った。

「そもそもこれ以上のアテがないな。どうしたものか……」

 ハルトは再びバイクを走らせるが、見つけられるのは浮浪者やゴロツキのみ。
 やがて、夜の闇が濃くなっていく。
 その時。

「ひゃっひゃっひゃ」

 それは、男の笑い声。
 ハルトを囲む、三人の男たち。顔には黄色の刺青らしきものが刻まれており、それにより印象がかなり変わってくる。
 男たちはハルトを吟味するように睨み、やがてマシンウィンガーに目を留めた。

「おうおうおう。イカしたバイクなんか乗ってきちゃってよお!」
「えらいハリキリボーイがやって来たじゃねえか!」
「ハリキリボーイって……」

 なかなか耳に馴染まない言葉に、ハルトは戸惑う。
 だが、ハルトを取り囲んだ男たちは続ける。

「コイツは金になるぜ!」
「関係ねえ! 身ぐるみ引っぺがしちまえ!」
「ヒャッハアアアアア!」
「っ!」

 言葉にならない叫び声を上げながら、男たちはハルトへ迫って来た。
 ハルトは急いでマシンウィンガーから降り、男たちに応戦する。
 回し蹴りを中心とした格闘。的確に男たちの意識を刈り取れる箇所を蹴り、全員が地に伏せた。

「……ふう。前回紗夜さんが来た時こんな奴らに遭遇しなくてよかった……」

 ハルトは気絶した彼らを見下ろしながら、改めてマシンウィンガーに跨る。
 前回蒼井晶と遭遇したスーパーがもぬけの殻だった以上、

「今日は止めた方が良かったかな……?」

 そう言っていると、やがてハルトはやがてブレーキを踏んだ。

「今度は何だ?」

 廃墟の背後に感じる気配。
 それは、人。人。人。
 それぞれがローブを纏いながら、ゾンビのような呻き声を上げていた。

「な、何?」
「ここは、わたくしたちの土地」

 ローブを纏った人々の内一人が、語りかけるような口調で発言する。

「ここを通りたいのでしたら、通行料を払ってもらいましょう」
「通行料? そんなの、何で?」
「ええ。そうですね……そのバイクを頂きましょうか?」

 彼の一言で、ローブの人々は徐々にハルトとの距離を詰めていく。
 ローブとは表現しているものの、その実は衣服などではない。何度も使い続けたのだろう、汚れや色が重なっている。

「ダメなら服でも金でもいいですよ?」
「どうせなら両方頂きましょう」

 丁寧な言葉遣いの裏に、必死さが顕れる。
 やがて彼らは、やがてじりじりとハルトとマシンウィンガーに触れようとする。

「ちょ、ちょっと!」
「バイク……バイク!」
「よこせええええ……」
「コイツがあれば、金だ……金になるうううううう!」

 彼らは亡者のように、ハルトに群がって来る。
 ハルトはバイクの上から彼らを蹴り飛ばし、アクセルを再び噴かせる。
 金の亡者たちから逃げ、ハルトは大きく息を吐いた。
 バイクをウィリーし、瓦礫を台に飛び上がった。
 春の冷たい空気を貫き、ハルトは一気に息を吸い込む。

「っ!」

 大きな音を立てながら、マシンウィンガーが着地する。スプリングの勢いに体を揺られながら、ハルトはカーブしながら静止する。
 ゾンビのようにジャンプ台の向こうで群がっていく人々を見上げ、ハルトは急いでマシンウィンガーを走らせようとする。
 だが。

「……あれ?」

 おかしい。
 ハルトは、何度もマシンウィンガーのアクセルを入れる。
 エンジンを吹かす手応え返って来るが、マシンウィンガーが動く気配がない。

「もしかして……壊れた?」

 マシンウィンガーは、市販品ではない。
 ハルトの魔力を動力に動く、ウィザード専用のマシン。
 おそらく魔法石を使えば修復できるだろうが、夜の、それも浮浪者が元気に狙ってくるこの地にいるのは危険すぎる。

「最悪だ……!」

 ハルトは慌ててマシンウィンガーを押して、道を外れる。浮浪者たちからは見えない路地に隠れてから、一度マシンウィンガーを倒す。

『ライト プリーズ』

 暗闇でお馴染み光の魔法で、マシンウィンガーを照らす。さらに、光がある間に、エンジンの蓋を開いた。

「ゲホッゲホッ……」

 エンジンから吹き出した黒い煙に、ハルトはむせ込んだ。
 顔が黒ずむ不快感を覚えながら、さらに指輪を使う。

『コネクト プリーズ』

 発動した魔法陣を、ラビットハウスの自室に繋げる。自室に置いてあるメンテナンス器具ケースを取り出し、その蓋を開いた。

「早くメンテ澄まさないと、探す時間も少ないのに……」
『ライト プリーズ』

 再び光の魔法で、マシンウィンガーの調子を確かめる。
 だが、時間制限がある僅かな明かりの中でマシンウィンガーを見下ろしても何も分からない。

「困ったな……」
「ハルトさんッ!」

 頭を掻いていると、後ろから明るい声がかけられた。
 振り向けば、明るい笑顔の少女がハルトへ膝を折っていた。

「やっほーッ! 」
「響ちゃん!? こんなところで何してるの?」

 手にしたペンチを、思わず取りこぼした。
 立花響。
 ハルトと同じく、聖杯戦争の参加者の一人。マスターであるハルトとは異なり、サーヴァントとして参加している。クラスはランサー、そのマスターはハルトと同じく魔法使いだが、近くには見当たらない。

「人助けだよッ!」

 響はにっこりと答えた。

「人助けって、こんなところで?」
「えへへッ!」
「しかもこんな時間に?」
「まあねッ!」

 響は胸を張って答えた。
 すでに夕刻を回り、空から青が完全に抜けきっている。普通の町でさえ、あえて出歩く時間ではないのに、治安が悪いこの場所だと、尚更不安になる。

「何でこんなところで?」
「困ってる人を助けているうちに、気付いたらこっちに来ちゃったんだよッ!」
「そうはならんやろ……」
「ところがどっこいなったんですッ!」

 響が満面の笑顔で答えた。彼女はそのままハルトの隣にしゃがみ、一緒にマシンウィンガーのエンジンを見下ろす。

「それで、どうしたのハルトさん?」
「ああ……なんか、バイクが動かなくなっちゃってさ」

 ハルトはペンチを拾い上げ、作業に戻る。
 各ネジを調整し、中に埋め込まれている魔石を調整する。

「うわあ……何やってるの?」
「魔力の調節だよ。マシンウィンガーって、ウィザードの魔法で動いてるから」
「へ、へえ……」

 目を白黒させながら頭から煙が昇っている。
 だが、ハルトは何度も魔力を調整するが、マシンウィンガーは一向に直らない。油を刺しても、出力を動かしても何も起こらない。

「わ、わたしは手伝おうか?」
「ありがとう。それじゃあ、エンジンの中枢部にあるアメジストの魔法石に潤滑油を通した後エメラルド鉱石の隣にあるピストンの錆をふき取ってトルマリン魔法石に魔力を注いでガーネットのシリンダーをチェックしてサードオニキスとシリマナイトのクランクシャフトの動きを確認してアズライトのコンロッドがちゃんと物理的に回転するかを見てもらってネフライトの吸排気バルブが魔力を放出できてるか確かめてもらっていい?」
「待って待って待ってッ!」

 ハルトの注文に、響は大慌てでストップをかける。

「横文字ばっかりでわかんないよッ! いつからハルトさんは外国人になったのッ!?」
「まあまあ」

 ハルトはそう言いながら、今自分が言った作業工程を一通りこなしていく。
 だが、それでもマシンウィンガーは息を吹き返さない。その上、周囲もますます暗くなっていく。
 いよいよ時間が無くなっていくと困り果ててきた時。

「故障ですか?」

 背後から尋ねてきたのは、壮年の男性。
 黒い衣服に身を包んだ人物。
 夜であってもサングラスを付けた男性は、手慣れた動きでサングラスを外した。あまりにも似合いすぎて、ハルトは一瞬彼が役者か何かかとさえ思ってしまった。

「少し、見せていただいても?」
「は、はあ……」

 ハルトは静かに頷いた。
 彼は屈み、マシンウィンガーの機関部を調べ始めた。

「なるほど。特殊なバイクですね。改造のようだ」
「まあ、いろいろありまして……まあ、もらい物なんですけど」
「ほう……」

 機関部のパーツに埋まる魔法石。
 一般人にはあまり見られたくないものだが、彼はそれには気に留めることもなく、外れているパーツを目ざとく発見した。
 微笑した男性は引っ張り出したチューブを、彼の私物であるライターの炎であぶり、再び接続させる。

「すご……」
「何をどうやってるのかさっぱりだよ」

 ハルトの隣で、響が頭をフラフラと揺らしている。

「これで大丈夫だと思いますよ」
「はい」

 男性に言われ、ハルトはアクセルを入れる。
 すると、さっきまで何もなかったアクセルが、エンジンの音を響かせた。

「本当だ! ありがとうございます!」

 ハルトのお礼に、男性は笑顔で応える。

「この辺りは危険です。よければ、安全な場所までご案内しますよ」
「ありがとうございます!」

 ハルトは背後で這い寄って来る人々を振り返りながら言った。
 男性は頷き、ハルトと響を導いていく。
 そんな彼を見送りながら、響は手を叩いた。

「凄い人ッ! この場所では珍しく優しい人だねッ!」
「君は何の役にも立たなかったけどね。それより、速く行くよ」
「はわわッ!」

 置いて行かれそうになった響は、慌ててハルトと男性を追いかけていった。 
 

 
後書き
可奈美「ハルトさん大丈夫かな……?」
友奈「心配だよね。でも、元参加者を助けようとしてるんでしょ?」
可奈美「うん……」
友奈「でも、たまたまだけど、可奈美ちゃんまで見滝原南に行ってたらファントム退治も大変だったよ」
可奈美「そうだね……ガルちゃんが来ても誰も気付かなかっただろうし」
友奈「そうだね。あ、ゲートの人……大丈夫?」
???「はい……ありがとうございます。えっと……刀使(とじ)さんですか?」
可奈美「そうだよ! あ、でも私のことは内緒でお願いね?」
???「は、はい……」
???2「見つけたみい!」
可奈美「みい?」
友奈「強烈な口癖の女の子が来ちゃったね」
???2「いつまでこんなところで油売ってるみい? 休憩はとっくに終わってるみい!」
???「は、はい!」
可奈美「運動系の部活?」
友奈「今丁度春休みだから、こういう練習も一杯あるよね」
???「休憩は一時間に1分みい!」
???「ええっ!」
可奈美「想像以上にブラックな部活だった!」
友奈「アイドルなんだ!」
???「アイドル目指してます。KiRaReってグループです」
???2「そうだみい! 折角だから、この人たちにもステージを見てもらうみい! こういう時こそ、ファンを増やすみい!」
???「わ、分かりました! 助けてくれたお礼に、楽しんでください!」



____KiRaKiRa輝く 太陽よりまぶしく まっすぐなヒカリで見えそう___



可奈美「すごいすごい!」
友奈「二人とも息ピッタリ!」
可奈美「これはきっと、ぱーふぇくとでえたーなるっていうものなのかな?」
友奈「違うよ! こういうことが、えもーしょなるでせんせーしょなるなハードコアって言うんだよ!」
???「二人とも意味分かってないみい……」
可奈美「こ、こちらが今回のアニメ、Re:ステージ! ドリームデイズ♪!」
友奈「2019年7月から9月まで放送していたアニメだね! アイドルを目指すKiRaReの物語!」
可奈美「アイドルのお姉ちゃんとのコンプレックスから再起して、アイドルの祭典、プリズムステージを目指すアニメだね」
友奈「例のシーンは公式名称だよ! でも、他にもいいシーンがいっぱいあるからね! 
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