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ウルトラマンカイナ

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女傑編 ウルトラビートルファイト

 
前書き
◇今話の登場人物及び登場メカ

◇ラウラ・"クーカ"・ソウザ・サントス
 BURKスペイン支部から教導のため来日していた女性パイロットであり、可憐で小柄な外見からは想像もつかないほどの経験を積んで来たベテラン。37歳。
 スリーサイズはバスト72cm、ウエスト50cm、ヒップ79cm。カップサイズはA。
 ※原案はただのおじさん先生。

◇BURKビートル
 駒門琴乃が隊長の座に着いた頃に完成した、BURKの新型戦闘機。爆撃機としての機能も備えており、駒門琴乃(こまかどことの)、アメリア、凛風(リンファ)の3名が搭乗する。


 

 
 ――ダダの一件を通じて、BURKの女傑達と知り合うようになってから約1ヶ月後。
 新作漫画のための「取材」として、辻凪(つじなぎ)あやめはこの日――BURKの新型主力戦闘機「BURKビートル」に乗り込み、とある森林地帯の上空を飛行していた。

「す、すみません皆さん。まさか私なんかのために、こうして取材の場を設けてくださるなんて……」

 後部座席で肩を縮ませている彼女は、おずおずと口を開いている。その視線の先には、指揮官席と操縦席に座している3人の美女達が居た。
 頼もしいBURKの主力隊員であり、あやめの友人でもある彼女達は、艶やかな口元をふっと緩めている。

「気にするな、あやめ。梨々子(りりこ)お嬢様の頼みでもあるし……私達の仲でもあるからな」

 メタリックイエローとシルバーを基調とするBURKビートル。その流線形の機体を操縦している駒門琴乃(こまかどことの)は、戦闘服の下から激しく主張しているLカップの爆乳を揺らしながら優しげに微笑んでいる。

「それに今回の漫画はBURKの広報用アカウントに掲載するんでしょ? それなら、公私混同ってことにはならないわ。これも立派なお仕事ってことよっ!」
「大丈夫大丈夫、私達が付いてるんだから、心配することなんてないわ。中国支部最強パイロットの凛風(リンファ)様に、どーんと任せちゃいなさいっ!」
「あ、ありがとうございます、皆さん……!」

 その両脇の席に座っているアメリアと凛風(リンファ)も、溌剌とした笑顔であやめを受け入れていた。KカップとGカップの豊穣な乳房は、今日もゆさゆさと揺れている。
 そんな彼女達の言葉にほっと胸を撫で下ろしたあやめは、ようやく少しだけ緊張がほぐれたのか、優しげな笑みを浮かべるようになっていた。

「……それは良いんだけどよぉ。何でこの俺が後部座席なんだよっ! 俺だって一端の戦闘機(ファイター)パイロットなんだぞっ!」

 ――その一方で。あやめが膝の上に乗せている金髪の小柄な少女らしき(・・・)女性隊員は、不満げに頬を膨らませていた。
 彼女の名は、ラウラ・"クーカ"・ソウザ・サントス。BURKスペイン支部からはるばる教導に来ていたベテラン(・・・・)パイロットであり、その可憐で幼い外見からは想像もつかない経験を積んで来た女傑の1人……なのだが。

「仕方ないだろう、クーカ。民間人のあやめでは、万一の時のための脱出装置を使いこなすのは難しいんだ」
「そーそー! BURK隊員たるもの、民間人の安全はしっかり守ってあげないとねー?」
「ベテラン様はそこでゆっくり寛いでるのがお似合いだもんねぇー?」
「こ、このっ、カラダだけいっちょ前なガキ共がぁ……! 帰投したら覚えとけよぉ……!」
「あ、あはは……」

 琴乃の言う通り、脱出装置を扱えないあやめを万一の際にサポートするためとして、今回は彼女の膝の上にちょこんと座っている状態なのだ。
 あやめ以上に小柄なクーカはどれほど凄んでも威厳が皆無であり、涙目になりながら膨れている彼女を肩越しに一瞥しているアメリアと凛風は、にやにやと嫌らしい笑みを浮かべていた。ぷるぷると顔を赤らめているクーカを宥めるように、あやめは苦笑いを零しながらも、彼女の頭を優しく撫でている。

「全くあいつらは……! あやめ! お前のことは俺が守ってやるから、お前もしっかり自分の仕事をこなすんだぞっ!」
「は、はいっ! ……ありがとうございます、クーカさん」

 ――あやめの友人であり、BURK司令官の娘でもある風祭梨々子(かざまつりりりこ)。彼女からの提案でBURKのプロモーション漫画を描くことになったあやめは、特別にBURKビートルに乗り込むことになったのである。
 BURKビートルはテンペラー軍団との戦いの後に開発された最新型の戦闘機であり、当然ながらあやめはこの機体に搭乗した初めての民間人となる。その事実に震えながらも、彼女はこのチャンスをものにすべく懸命に、機内から見える全ての景色をスケッチしていた。

「……でもさぁ、こーんな退屈な哨戒任務なんてちゃんとしたネタになるの? どうせなら怪獣との戦闘を見せてあげたかったわねぇ。絶対イイ画になるのに」
「馬鹿を言うなアメリア、そもそもこの機体に民間人を乗せるということ自体が特例中の特例なのだぞ。……それに、そんな危険な現場にあやめを連れて行けるはずがなかろう」
「そりゃあ確かにそうなんだけど、アメリアの言うこともちょっと分かるわ。ねぇあやめ、あなたとしてはその辺どうなの?」

 アメリアの発言を嗜めている琴乃の隣では、凛風が複雑な表情を浮かべていた。今回あやめが同行しているのは比較的安全な哨戒任務であり、戦闘になる可能性は非常に低い。
 だからこそ同行の許可が降りたのだが、この哨戒任務が退屈でたまらないアメリアとしては、漫画の取材として成り立つのかという懸念もあったのだ。そんな彼女の思いを汲んだ凛風の言葉に暫し考え込んだ後、あやめは意を決したように顔を上げる。

「……確かに、皆さんが実際に戦ってる場面を見ることが出来たら、凄くカッコいい画になるなぁって思います。でも今回頂いた案件は、皆さんの『普段のお仕事』をPRするための作品なんです」
「……!」
「アメリアさん達にとっては退屈でも、それはとても大切なお仕事なんだってことを皆に伝えるための漫画を書く。それが私のお仕事なんですから、心配しないでください! せっかく頂いたチャンスなんですから、しっかりネタにして見せますっ!」
「……なんだか、自分が言ってたことが急に恥ずかしくなってきたわ」
「……あんたよりよっぽどまともなこと言ってるわね、この子」
「お前達、少しは彼女を見習ったらどうなんだ。……各支部最強の名が泣くぞ、全く」
「やれやれ……やっぱりカラダだけのお子ちゃまだよ、お前らは……」

 あくまで「普段のお仕事」を描くのが目的なのだから無理に魅せる必要はない。そうせずとも民間人の読み手には新鮮に伝わるのだから、飾らず自然体でいて欲しい。
 その旨を語るあやめの言葉に嘆息するアメリアと凛風は、なんとも言えない表情を浮かべていた。そしてそんな2人に、琴乃とクーカが深々とため息をついた――その時。

「……!? あれはッ!」

 森林地帯を彩る深緑の木々が、大地を迫り上げる「何か」に薙ぎ倒され始めたのである。その光景を目にした琴乃が声を上げた瞬間、地を裂く轟音と激しい土埃と共に――「何か」がそこから這い出て来た。

「琴乃、あれってまさか……!?」
「くそッ、よりによってこんな時に……!」

 地中から突如出現したその「何か」とは――「凶暴怪獣」の異名を取る、アーストロンだったのである。長らく地中で眠っていた怪獣が、この地で目覚めてしまったのだ。

 この次元の宇宙において、最凶最悪と恐れられてきたテンペラー軍団が、6人のウルトラ戦士とBURKによって倒されてから約半年。
 地球の戦力に恐れをなした外宇宙の異星人達は、そのほとんどがすでに侵略を諦めるようになっていたのだが。それ以前から地球に潜んでいた異星人や怪獣達は、今も地球に残ったままとなっているのだ。このアーストロンも、その内の1体なのである。

「あれは凶暴怪獣アーストロン……! こんなところで眠り続けてたっていうの!? あぁもうっ、こっちにはあやめが居るっていうのにっ……!」
「おいおい、早速俺の出番になっちまうのかよッ!」

 こうした個体が突如出現しては暴れ出すという事件はさほど珍しくもなく、その度にBURKが対処に当たっているのだが――今回はよりによって、民間人のあやめが同行している状況なのだ。
 最悪のタイミングで怪獣と遭遇してしまったことに、凛風とクーカは悔しげな表情を浮かべる。

 普段なら即座に攻撃を仕掛けているところなのだが、あやめを危険に晒すわけにもいかない。
 それにアーストロンには、その大顎から吐き出す「マグマ光線」という、強力な飛び道具もあるのだ。万一撃墜されるようなことがあれば、あやめを死なせてしまうことにもなりかねない。

「琴乃、速く奴を倒してしまわないと街に被害が出るわ! 前翼部のレーザー砲を使うわよ!?」
「待て、あやめを一旦安全な場所に降ろすのが先だ! 私は機長として、彼女を戦闘に巻き込むわけには……!」
「私達だってそうしたいわよっ! でもっ……!」

 だが手をこまねいていては、暴走しているアーストロンが森林地帯を抜けてしまう可能性もある。それで市街地に被害が及ぶようなことになれば、本末転倒だ。

「……私なら大丈夫です! 琴乃さん、アメリアさん、凛風さん……戦ってください!」
「……! あやめ……」
「私、信じてますから! BURK最強の皆さんなら……絶対、勝ってくれるって!」

 その葛藤を抱える3人の背に、凛々しい声を掛けたのは――あやめだった。スケッチブックとクーカを強く抱き締めながら、勇ましい表情で自分達を見つめている彼女の眼に、琴乃達はハッとした表情を浮かべる。

「……ふっ。どうやら今度は、この私が彼女に教えられてしまったようだな。アメリア、凛風! 急降下攻撃で一気に奴を仕留めるぞッ!」
「オッケー! あやめ、しっかり掴まってなさいッ!」
「私達が、最っ高にカッコいい画を見せてあげるわッ!」
「……はいッ! お願いしますッ!」

 やがてBURK隊員として、戦乙女としての貌に戻った彼女達は、意を決したように各席の操縦桿を握り締めていた。もはや、迷いはない。

「……おおぉおおーッ!」

 琴乃の操縦によって急上昇したBURKビートルは遥か天空で宙返りすると、そのまま一気に急降下して行く。
 その凄まじい風切り音から「敵」の接近を感知したアーストロンは、真上に向かってマグマ光線を放つが――琴乃が操るBURKビートルの機体は、その悉くを紙一重で回避していた。

「無駄だアーストロン、お前のデータはすでに分かり切っているッ! アメリア、頼むぞッ!」
「任せなさいッ!」

 無数の熱線を巧みにかわしながら、急降下を続けるBURKビートル。その機体の前翼部に搭載されているレーザー砲が、一気に火を噴いた。
 射手を担当するアメリアの正確無比な狙いにより、そのレーザーはアーストロンの一角を焼き切り、怪獣の全身を隈無く撃ち抜いていく。悲鳴を上げてのたうち回る凶暴怪獣は、すでに瀕死となっていた。

「凛風、奴にとどめだッ! 急上昇の瞬間に仕掛けるぞ、タイミングを合わせられるかッ!?」
「当然よ、この私を誰だと思ってるのッ!」

 だが、まだ油断は出来ない。最後の最後まで、攻撃の手を緩めないのがBURKの基本戦術なのだ。
 地表に激突する寸前のところで一気に操縦桿を引き戻し、BURKビートルの機体を上昇させる瞬間。凛風の操作によって機体下部から投下された爆弾が、倒れたアーストロンの大顎に直撃する。

「……決まった!」

 そして。戦況を見守っていたクーカが声を上げるのと同時に、空高く舞い上がったBURKビートルがアーストロンを背にした瞬間。
 凶暴怪獣は爆発四散し、跡形もなく消し飛んで行くのだった。

「アーストロン、完全に沈黙……私達の勝利だな」
「よぉおしっ、今日もパーフェクトに決まったわねっ! あやめ、しっかり見てたっ!?」
「これでつまらない漫画なんて描いたりしたら、承知しないわよっ!」
「俺達みんな、楽しみにしてっからよっ!」
「……はいっ! 私、頑張りますねっ! 皆さん、本当にありがとうございましたっ!」

 天高く立ち昇る爆炎を肩越しに見遣る琴乃達は、その光景に自分達の勝利を確信し、ほっと息を吐き出している。どうやら、予定よりも遥かにダイナミックな取材になったようだ。
 しかし、その甲斐は十分にあったのだろう。夕焼けに照らされながら帰路についているBURKビートルの機内では、戦いを終えた美女達が華やかな笑顔を咲かせていたのだから――。

 ◇

 ――それから、約1週間後。
 SNSで人気を博しているWEB漫画家「ツジーン」が、BURKの広報用アカウントで公開した新作漫画は爆発的に拡散され、期待以上の人気を博したのだが。
 それを目にした一部の美少女達からは、密かに不満の声が上がっていたらしい。

「……確かに素晴らしい漫画です。我々の日常を写実的に描き出した、見事な芸術作品です。ただ……BURKビートルでアーストロンを撃破した場面以外が、悉く地味なのですが。私達の仕事を描いている場面が、凄まじく地味なのですが……!」
「だってしょうがないじゃない。あの子がエレーヌ達のところに取材に行ってた時は、ほんとに何も起こらなかったんだもの。今回の漫画はノンフィクションなんだから、盛るわけにもいかないし」
「俺なんてずっと後部座席に居たから、漫画の中じゃあマスコット扱いだったんだぞ! ちくしょう、あやめの奴〜っ!」
「ふふっ、なるほどなるほど……! よく分かりました……! ならば『何か』が起きた時、あやめ様には是非とも再び取材に来て頂かなくては……!」
「……お前達、毎度毎度いい加減にせんかぁーっ!」
「や、やばいっ! 琴乃がキレたわ! 逃げるわよ皆〜っ!」
 
 

 
後書き
 
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