| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

イベリス

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十二話 夏になる前にその四

「誰も大事に出来ないんだ」
「人間も」
「ああ、若しご飯あげるのも面倒臭いとかな」
「それだけで?」
「ドッグフードでなくてご飯を作ってもな」
 それでもというのだ。
「面倒臭いとか父さんや母さんが言ってたらどう思う」
「お父さんもお母さんも言わないでしょ」
 そもそもとだ、咲はむっとした顔で返した。
「そんなことは」
「けれど言ったらどうだ」
「それ位で面倒臭いならね」 
 咲はその顔のままで言った。
「もう何をしてもでしょ」
「家事はな」
「どれだけものぐさなのよ」
 そう思うと言うのだった。
「というか家族としてね」
「どうかと思うな」
「ええ、何がしたいのよ」
「それはもうずっと遊びたいんだよ」
「自分が遊べさえしたらいいの」
「家事なんかしなくてな」
「それって家族じゃないし」
 咲はさらに言った。
「それでモコを大事にしないんだったら」
「飼育放棄だな」
「家族じゃないわよ」
「そんな人間は咲は嫌いだな」
「無責任でしょ、お父さんやお母さんがそうでなくてよかったわ」
 そうした輩でなくてというのだ。
「本当にね」
「お母さんもそう思うわ、そんな人にはなりたくないし」
「モコを大事にしてるのね」
「家族を大事にしないで自分だけ遊んでるとね」
 そうした生活ならというのだ。
「何にもならないわ」
「飼育放棄に育児放棄ね」
「それで自分だけ遊んでいたらよ」
「あれよね、三面記事とかインターネットの」
 そうしたところのだというのだ。
「駄目親よね」
「そうなるわよ」
「ああなったら人間終わりでしょ」
 咲はそうした親に侮蔑を感じて述べた。
「もうね」
「そうでしょ」
「ええ」
 咲はまさにと答えた。
「本当にね」
「そうした親になったら」
 それこそというのだ。
「駄目だから」
「それでよね」
「そうならない為にもよ」
「モコを大事にしないとね」
「それだけの気持ちを持っていないとね」
「駄目よね」
「犬一匹愛情を注げない人が人を大事に出来ないでしょ」
 母は咲に言った。
「そうでしょ」
「絶対にね」
「それじゃあ咲もね」
「というか私モコ大好きだし」
 その彼女を見ながら話した。
「こんないい娘いないわよ」
「性格凄くいいでしょ」
「優しいし愛嬌があってね」
「穏やかでのんびりしていてね」
「それで素直だしね」
 そうした性格でというのだ。
「本当にね」
「いい娘でしょ」
「ええ」
 母にその通りだと答えた。
「それに外見だってね」
「可愛いわね」
「だからお家に来た時からよ」 
 まさにその時からだというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧