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そういう奴だとわかった

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第二章

「この娘は」
「はい、上司のことは気になりますが」
 それでもとだ、美菜見も応えた。
「しかしです」
「それでもですね」
「この娘は保護して」
「新しい飼い主を探しますね」
「そうしましょう」
 こう美菜見に話してだった。
 美菜見も頷いてそのうえでだった。
 ミーコを保護して里親を募集することにした、だが。
 美菜見は会社で伊川のことを詳しく聞いた、これまでは普通にいい上司と思っていたが彼の同期の者で一人だった。
 眉を顰めさせてだ、美菜見に話した。
「伊川は自分しかない奴だ」
「そうなんですか」
「ああ、何でもない時は普通に付き合うがな」
 それでもというのだ。
「けれど何かあるとな」
「その時はですか」
「次の日にでも掌を返してな」
 そうしてというのだ。
「それまで友達とか言っていた奴でもな」
「切り捨てるんですか」
「そんな奴だ、この目で見た」
「友達と言っていた相手を平気で切り捨てるのを」
「そうした後は徹底的に冷たくするからな」
 伊川という男はというのだ。
「だからな」
「課長にはですか」
「猫の話を聞いたが当然だ、そんな奴と思って信用するんじゃない」
「自分の都合で裏切って切り捨てるので」
「そんな奴だからな」
「わかりました、ミーコを捨てたこともですね」
「当然だ」
 まさにというのだ、こう美菜見に話した。
 そして実際にだった、暫くして。
 伊川は育児に忙しくなった妻が自分の相手をしなくなったと言いだして密に不倫をして妻子に適当な理由をつけて別れてだった。
 再婚したことを知った、それで社内の誰もがわかった。
「ああ、そういう奴か」
「自分の都合でどんな相手も切り捨てる奴か」
「奥さんも自分の子供もか」
「子供さん可愛がっていたっていうけれど」
「それが自分が不倫して」
「その不倫相手と一緒になる為に邪魔だから」
 自分にとってそうだと判断してというのだ。
「それで奥さんに押し付けて」
「何だかんだで理由付けて慰謝料も値切って」
「そんな奴なのね」
「これは絶対に信用出来ないわ」
「本当に自分の都合だけで裏切って切り捨てて」
「そんなことする人なのね」 
 誰もがわかった、それでだった。
 伊川は社内で冷たい目で見られる様になり。
「人望を完全に失いまして」
「それで、ですか」
「仕事でかなり酷いミスをしたんですが」
 美菜見は団体の施設でスタッフの人に話した。 
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