少女は 見えない糸だけをたよりに
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朝、5時半に起こされた。燿さんに連れられて、顔を洗って、お台所に行くと、もう、お母さんが動いていた。
「燿さん、えーと 鰤を焼いてちょうだい 香波ちゃん 海老焼けるかしら」
「はい お母さん 私 鰤も海老も一人で焼けます」
「そう じゃぁ お願いね 燿さんは、数の子を小鉢に入れて、お餅焼いてちょうだい」と、お母さんはお皿とかお椀を用意していた。
梅の花の絵のついた大きめのお皿に、鰤の照焼を載せて、熊笹を敷いて、海老を乗せていた。そして、端っこに菊の花にみたてた蕪の酢漬け、昆布巻きを置いて、飾りにはじかみ。
「燿さん お父様のは 鍋に入れといてくださいね 少し、煮込むから」
全部用意が出来た時、燿さんに連れられて、お部屋に・・
「トレーナーじゃあね お正月 早々 お父様 嫌がるのよー」と、白いブラウスを出して、襟元にブローチをつけてくれた。自分も、着替えてパールのネックレスを付けていた。
「スカートはそのままでいいわ どっちみち、後から、お着物になるから 寒い? 今日は、暖かいから平気よね」と、「えー 着物?」と、思っていると、私に、マスカラとチークだけお化粧してくれていた。
奥の座敷に行くと、お母さんが全部運んでくれたみたいで、直ぐに、蓋つきのお椀にお雑煮を持って来てくれた。皆が揃うと、お父さんが
「あけましておめでとうございます 今年は家族も増えたから、みんなで元気にすごしましょう」と、言って、お父さんがみんなにお屠蘇を注いでいた。銀色に光った盃。
「香波 かたち だけな じゃぁ あけましておめでとう」と、乾杯したのだ。
「香波ちやん 召し上がって おせちのお重は 無いのよ みんな 食べないから、もう、止めてしまったの」と、お母さんが言って居たけど
「いえ お母さん 私 お正月だからって お雑煮と少しのお刺身だけでしたから こんなに、豪華なの初めてです いただきまーす」
「燿 この後 着物着るんだろう みんなで初詣に行こう 家族、揃ってなんて何年振りか だからな 聡 香波のも 用意してあるよな」
「はい 燿さんの成人式の時のものを 髪飾りとお草履も 揃えてあります」
そして、別の座敷に連れて行かれて、綺麗な着物。もちろん、初めてだった。
「香波ちやん 大変だったわ 晒をいっぱい巻いたのよね それでも、下着で調整して もっと食べなさいね ガリガリよ」
燿さんは、ブラもはずして着ていた。そして、私にお化粧もしてくれた。そして、わたしにも、髪飾りを・・。二人そろって、お父さんの元に、出て行くと
「おーぉ こんなに美人の娘をふたりも持って ワシはバチがあたるんじゃぁないだろうな」
「お父様 ありがとうございます 私 初めてで こんな綺麗なの着れるって思ってなかったから」
「又 他人行儀な言い方で・・なんで 親としては こんな綺麗な娘をみられて幸せじゃ」と、自分で用意したのか、お酒をまだ飲んでいた。
そして、みんな揃って、平安神宮へ。わたし、着物で歩くの初めてだったから
「燿さん あのー どうやって 歩けばー なんか 転びそう」
「普段より 小股でね 少し内股ぎみ 慣れるまで ゆっくりでいいから」
しばらく、何とか歩いていると
「香波 お父様に腕を組んで行ったら 喜ぶわよ あなたも転ばないし」
「私 そんなぁー いきなり」
「いいわよ 行きなさい」と、燿さんは、私の背中を押して
「お父さん 腕 組んでもらってもいいですかー」と
「おっ おー」と、腕を出してくれた。
「すみません 私 転びそうで・・」
「いや かまわんよ 燿とも こんな風に歩いたこと無いからなー うれしいような 恥ずかしいような」私は、掴まっていった。
「すみません 私も お父さんと こんな風に歩いたことないから・・うれしいかな」
「そうかー 香波は可愛いのう」
お詣りした後、お父さんは何か食べて行こうかと言って居たが、燿さんが、ろくなとこ開いていないわよと、家に帰って、その夜は、すき焼きだった。それも、私、初めて食べた。どうして、こんなに色んなものがあるの思いながら・・。
食べ終わっても、まだ6時過ぎだった。
「風呂は、お前達 先に 入れ」と、お父さんが
「あら 珍しいこと おっしゃるわね」
「この年になるとな 若い女性のエキスをもらった方が 生き生きするんだよ」
「お父様 そんな言い方って 下品よ いゃらしいー」
「そんなことあるものかー 当たり前の男の願望じゃー」
「はい はい それ以上は 変なこと考えないでくださいね 家の中 以外でそんなこと言わないでくださいね 娘だから、いいけど・・ 香波 お風呂いこー」
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