星河の覇皇
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第八十一部第一章 全戦線でその十二
「頭に入れている」
「全てですね」
「知力でもヒトラーに負けているつもりはない」
大学教育は受けていないがヒトラーにはかなり高度な知性があったことは事実だ、どの様な難しい本も読破する読書家でありワーグナーの音楽を愛しドイツ語だけでかう英語やフランス語、イタリア語も話すことが出来た。
そしてだ、記憶力もかなりのもので。
「ヒトラーは三週間前の報告を覚えていたな」
「そう報告した者に返していましたね」
「君の報告は三週間前と変わらんとな」
誰が言ったかまで覚えていたのだ。
「だが私はだ」
「三週間どころかですか」
「一月でもだ」
それだけだというのだ。
「覚えていられる」
「三週間どころかですね」
「一月半でもな、そしてだ」
モンサルヴァートはさらに言った。
「ヒトラーは戦争指導は駄目だった」
「そこはスターリンと同じでしたね」
「しきりに現場介入を行った」
特に戦局が劣勢になるとそれは顕著だった。
「そうしてだ」
「戦局をより悪化させましたね」
「私はそれはしない」
「現場への介入は」
「フロントがスポーツチームの現場に介入するとだ」
ギルフォードは二十世紀からこの時代に至るまで理解されやすい例えをここで出した。軍事ではないがだ。
「いいことはあるか」
「それは」
「ないな」
「フロントが現場に介入してです」
「チームが強くなったことはないな」
「監督やコーチを無闇に交代させたり」
「選手の起用に口出ししてな」
そうしたことを行ってだ。
「チームは弱体化するか」
「どういった強力はチームも」
モンサルヴァートもこうした事例はその目で知っているのでわかっている、これはオリンピックでも同じ様なことが起こる。
「それによってです」
「弱体化してな」
「悪いことになります」
「そうだ、私はそれはわかっている」
「政府はフロントですね」
「そして軍はな」
こちらはというと。
「要するにな」
「チームですね」
「フロントはチームの運営や総合的な監督は行うが」
それでもというのだ。
「しかしだ」
「チームの采配について言ってはなりませんね」
「選手がプレイしてだ」
「監督やコーチが采配や育成を行う」
「ルールを守っているかどうかのチェックはする」
軍隊では軍規となる。
「しかしだ」
「それでもですね」
「グラウンドはユニフォームの世界でありだ」
「背広の世界ではなく」
「自分達は試合をしないからだ」
「つまり素人ですね」
「元選手でも現役ではない」
そうした立場だからだというのだ。
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