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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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ハーケン会戦~紅き翼の才媛の推測~

~ハーケン平原~



「あんたは……っ!」

「セ、セシリア将軍……!?」

「え……という事があちらの女性がメンフィル帝国軍の”総参謀”にして、現メンフィル皇帝であられるシルヴァン陛下の側妃に当たる人物ですか……」

「そして”リィンのもう一人の担当教官”でもある女将軍か。」

「ど、どうしてセシリア将軍まで私達の足止めを……」

「――――――言ったでしょう。私達と貴方達、それぞれリィンがいない状態の学級同士という”お互いリィンを欠いた状態という条件は同じ”だと。それは当然”教官”も例外ではないわよ。」

「だからといって、将軍――――――それもメンフィル軍の上層部クラスの中でも重鎮に当たる人物がわたし達の足止めを担当するなんて滅茶苦茶過ぎ。」

「確かアンタ、メンフィル軍の”総参謀”なんでしょう?”総参謀”がこんな所で油を売っていていいの!?」

セシリアの登場に仲間達がそれぞれ血相を変えている中サラは怒りの表情でセシリアを睨み、アリサは信じられない表情で声を上げ、アリサの言葉を聞いたセドリックは呆けた表情で、クロウは真剣な表情でそれぞれセシリアを見つめ、エマは疑問を口にし、エマの疑問に対して答えたエーデルガルトの答えを聞いたフィーはジト目で反論し、セリーヌは疲れた表情で指摘した。

「フフ、今回の大戦の全体的な指揮の担当はカシウス中将の上、メンフィル帝国軍内での細かい指揮は他の参謀達で十分ですので。――――――むしろ、我が軍の参謀達に滅多に経験できない”大戦の実戦経験を積ませるちょうどいい機会”でもありますわ。」

「こ、この”大戦”を”メンフィル帝国軍の他の参謀達に実戦経験を積ませるちょうどいい機会”って……」

「ハッ、オレ達が言えた義理じゃねぇが、幾ら何でもエレボニア帝国軍の事を舐め過ぎだろ。」

「”総参謀”なのにエレボニア帝国軍を舐め過ぎて、”窮鼠猫をかむ”みたいな状況に陥るみたいな可能性は考えなかったの?」

セシリアが口にしたとんでもない考えを聞いたエリオットは信じられない表情を浮かべ、アッシュとフィーは厳しい表情でセシリアに指摘した。

「勿論、カシウス中将達と協議の上その可能性も想定した上での”対策”も取ってあります。――――――そして、クラウゼルさんが今仰った”エレボニアがメンフィル・クロスベル連合に対して窮鼠猫を噛む作戦はその対策によって失敗に終わった事の報告が先程ありました”から、もはや”今のエレボニア帝国軍にはメンフィル・クロスベル連合に勝利できる要素は皆無ですわ。”」

「”帝国軍が連合に対する窮鼠猫を噛むような作戦は既に失敗した”だと?」

「それは学院長達の事を仰っているのですか……!?」

セシリアの答えが気になったユーシスは眉を顰め、ラウラは真剣な表情でセシリアに訊ねた。



「いいえ、違いますわ。――――――エレボニアにとっての”乾坤一擲”となる作戦。それは”少数精鋭部隊によるロレント市郊外にあるメンフィル大使館への奇襲並びにカシウス中将の実家――――――ブライト家への襲撃”ですわ。」

「何だとっ!?」

「メ、メンフィル大使館への直接奇襲はわかりますが、どうしてカシウスさんやエステルちゃん達の実家――――――”ブライト家”にまで襲撃を……!?」

「恐らくはカシウスの旦那の奥方と幼児であるエステル達の弟を拉致して、旦那もそうだが”SS級”正遊撃士であるエステルと”S級”正遊撃士のミントに対する人質にする為だろうな。」

「”焦土作戦”や”アルスター襲撃”の件では理解していましたが、まさに”勝利の為ならなりふり構わない手段”ですね……」

セシリアが口にした驚愕の情報を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中アガットは厳しい表情で声を上げ、不安そうな表情で声を上げたアネラスの疑問に対してジンは複雑そうな表情で推測を口にし、エレインは真剣な表情で呟いた。

「ですがセシリア将軍はそれらの作戦は既に失敗に終わったと仰いましたが……」

「ええ。メンフィル大使館に襲撃した顔ぶれは”紅の戦鬼”率いる”赤い星座”の猟兵達に”黒の工房”が雇った”ニーズヘッグ”の猟兵達、”銅のゲオルグ”に”破壊獣(ベヒモス)”、ようやく復帰した”黒のアルベリヒ”と”猟兵王”、そして”鉄血宰相自身が駆る黒の騎神”だったとの事ですわ。ちなみにブライト家を襲撃した顔ぶれはかかし(スケアクロウ)率いる情報局の局員達とギルバートという名の隊長率いる結社の猟兵達との事ですわ。」

「何ですって!?」

「団長やレオが……」

「し、しかも”オズボーン宰相自身が駆る黒の騎神”まで襲撃したって……!」

「ふええええええっ!?それじゃあレクターもそうだけど、ギリアスのオジサンも襲撃に失敗したって事~!?」

「やれやれ、おまけに懐かしい名前まで出てきたな。」

「フン、大使館じゃなく、エステル達の実家の襲撃の担当だったのがあのヘタレにとっては運がよかっただろうよ。」

「レンちゃんの話だと、大使館の防衛にはよりにもよってセリカさん達が担当しているとの事ですからねぇ……というか、大使館を防衛している人達は知っていますけど、エステルちゃん達の実家を防衛していたのはどんな人達だったんですか?」

シャロンの言葉に頷いた後説明を続けたセシリアが口にしたら更なる驚愕の事実にアリサ達が再び血相を変えている中、フィーは呆け、マキアスとミリアムは信じられない表情で声を上げ、それぞれギルバートの顔を思い浮かべたジンは疲れた表情で溜息を吐き、アガットは鼻を鳴らし、アネラスは苦笑した後ある事を訊ねた。



「”ブライト家”での撃退を担当した顔ぶれは当然ファラ・サウリン卿達”ブライト家”の面々、そして”空の女神”を含めた”空の女神の一族”に加えて彼女達の護衛を担当している守護騎士と従騎士だと聞いています。」

「エステルさん達に加えて”空の女神”の一族、更には教会の守護騎士まで…………」

「その守護騎士と従騎士は間違いなく第5位――――――ケビンとリース君でしょうね……」

「うわ~……ブライト家の方も、メンフィル大使館側と遜色ないメンツだったようですね~。」

「ああ……エステル達の実力もそうだが、そこに神父にリース、アドルの旦那達にナユタ達の加勢に加えて”空の女神”自身とエステルが契約している使い魔達、そしてその使い魔達の中には”女神”であるフェミリンスもいるのだから、それに対して鉄血の子供達(アイアンブリード)率いる情報局の局員達とギルバート率いる結社の猟兵達ではかかし(スケアクロウ)達の方が”哀れ”に思える程のあまりにも荷が重すぎる相手だな。」

「つーか、相手の戦力を考えたら、不良神父達もそうだが自称”ただの新妻”達の加勢がなくてもエステル達だけで制圧できたんじゃねぇのか?」

「な、何ソレ~!?”戦力過剰”にも程があるメンツだよ~!?」

「つーか、”女神が直々に個人の実家を守る”とか完全にイミフだろ。一体どんな女神なんだよ、”空の女神”は。」

セシリアの説明を聞いたガイウスとトマスは静かな表情で呟き、アネラスとジンは苦笑し、アガットは呆れた表情で呟き、ミリアムは疲れた表情で声を上げ、アッシュはジト目で呟いた。

「それで、それぞれの襲撃は失敗に終わったって言いましたけど、も、もしかしてその失敗で僕達が知っている人達が討ち取られたりしたんですか……!?」

「フフ、その点は安心して構いません。大使館の方は猟兵達は”紅の戦鬼”と”破壊獣”、そして”猟兵王”を除けば”皆殺し”にしましたが、”紅の戦鬼”達は手酷くやられはしたものの”黒の騎神”や”黒のアルベリヒ”達と共に撤退したとの事ですし、ブライト家の方はギルバート・スタインは一瞬の隙をついて逃亡してしまったとの事ですが、残りの面々――――――つまり、かかし(スケアクロウ)を含めた情報局の局員達、そして結社の猟兵達はファラ・サウリン卿達に無力化されて”捕縛”された後全員王国軍に引き渡されたとの事です。」

「ほえ~……それじゃあ、レクターは王国軍に捕まったんだ~。」

「……そうなると、オズボーン宰相の元に未だ残っている鉄血の子供達(アイアンブリード)は”彼女”一人だけになってしまったという事か。」

「クレア少佐………」

不安そうな表情で声を上げたエリオットの問いかけに苦笑しながら答えたセシリアの説明を聞いたミリアムは呆け、静かな表情で呟いたアルゼイド子爵の言葉に続くようにトワはクレア少佐を思い浮かべて複雑そうな表情を浮かべた。



「……それで?アンタはさっき、”結社に残っていた執行者達の事情が変わった為、黄金蝶は今後の自分達の事を考え、メンフィル・クロスベル連合に協力する申し出をしてきた”って言っていたけど、あれはどういう意味なのよ?」

「言葉通りの意味ですわ。――――――”盟主”と多くの”蛇の使徒”達の抹殺によってもはや崩壊寸前であった結社の音頭を取っていた”道化師”が抹殺された事、そして”死線”の結社脱退を機に”結社に未だ残っていた執行者達は全員結社に見切りをつけて、結社から脱退した”からですわ。」

「何ぃっ!?」

「け、”結社にまだ残っていた執行者達全員が結社に見切りをつけて、結社から脱退した”って事は”結社は正真正銘滅びた”って事じゃないですか……!?」

サラの問いかけに答えたセシリアの話を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中アガットとアネラスは信じられない表情で声を上げた。

「そして結社を抜けた残りの執行者達にとって連合による指名手配は厄介だった為、連合がそれを解く代わりに”黄金蝶”が結社に残っていた執行者達の代表として、連合に協力する事で執行者達、メンフィル・クロスベル連合の双方は納得したという訳です。」

「そしてその”黄金蝶”から連合に対する申し出の”仲介”を依頼された貴方が”黄金蝶”を連合に”仲介”したという訳ね、ヴァン……ッ!」

「―――――さっき言っただろう。俺は”筋が通れば悪人だろうが差別はしねぇ”ってな。――――――というか、確かに結社から依頼は請けたが、この依頼は”紅き翼”の連中もそうだが、エレイン達遊撃士にとっても文句はねぇと思うんだが?何せ俺が請けた依頼によって結社にまだ残っていた執行者達全員が結社を抜ける事で結社は正真正銘滅びる事になるだろうからな。」

「そ、それは………」

執行者達(れんちゅう)が過去にやらかした罪まで何の償いもせずに、許される事は筋が通らねぇだろうが!?」

セシリアの説明を捕捉したステラの説明を聞いたエレインは厳しい表情でヴァンを睨み、睨まれたヴァンは肩をすくめて答えて指摘し、ヴァンの指摘に対してアネラスが複雑そうな表情で答えを濁している中、アガットは厳しい表情で反論した。

「おいおい、それに関してはアンタ達だけは文句を言う筋合いはないんじゃねぇのか?――――――”漆黒の牙”や”剣帝”に関してはまあ、3年前の”異変”解決の貢献があるからまだいいにしても、”蒼の深淵”達もそうだが、去年のエレボニアの内戦勃発の元凶の一人でもある”C”が過去に犯した罪の償いをしていないにも関わらず、”仲間”として受け入れたアンタ達は。」

「そいつは………」

「チッ……」

「…………」

肩をすくめて指摘したヴァンの指摘に対して反論できないジンは複雑そうな表情で答えを濁し、クロウは舌打ちをした後苦々しい表情を浮かべ、エマは複雑そうな表情で黙り込んでいた。



「――――――そんな事よりも、”紅き翼”の皆さんにとっては私に聞きたい事があるのではなくて?――――――特に”灰獅子隊が請けた今までの要請(オーダー)のほとんどは、何故Ⅶ組と(ゆかり)ある地が多かったのかを。”」

「あ…………」

「セシリア将軍自らその話を持ち出したという事は、その疑問について、セシリア将軍は偽りなく答えてくれるのですか?」

意味あり気な笑みを浮かべて問いかけたセシリアの問いかけを聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中アリサは不安そうな表情で呆けた声を出し、アンゼリカは真剣な表情で訊ねた。

「ええ。リィンが留学と内戦でお世話になった礼代わりに答えてあげますわよ?――――――ただ、その前に紅き(あなたたち)の考えを聞かせてもらっても?」

「もったいぶった言い方をしているけどどうせ、あんたが”リィン達とⅦ組(あたし達)の関係を断たせる為”でしょうが!?」

アンゼリカの問いかけに頷いた後問い返したセシリアに対してサラは怒りの表情で答えたが

「―――――ううん、それ以外――――――いえ、そもそも”その考えが間違い”で、”本当の理由はリィン君達もそうですが、メンフィル帝国にとってもメリットになる理由なんじゃないですか?”」

「トワ、それはどういう事だ?」

トワは真剣な表情を浮かべてサラとは全く異なる推測を口にし、トワの推測が気になったクロウは眉を顰めて訊ねた。

「……”灰獅子隊”の事を知ってからずっと考えていたんだ。セシリア将軍――――――ううん、メンフィル帝国が幾ら今回の戦争で活躍しているとはいえ、”ルーファス公子の討伐と紫の騎神を今回の戦争では事実上の戦闘不可能に追いやった程度の手柄だけで、リィン君にレボリューション――――――メンフィル帝国がリベール王国と共同で開発した最新の巡洋艦を預けてメンフィル帝国軍本陣とは別の遊撃部隊を率いさせる”のだから、サラ教官が言った理由以外にも何か他にもっと深い理由があるんじゃないかと。」

「それってどういう意味~?」

「……貴族連合軍の”総参謀”にして”子供達”の”筆頭”であった兄上の討伐、そして敵側の騎神を一体、この戦争では戦闘不可能にした件での手柄だけでは、リィンが”灰獅子隊の軍団長を任される手柄として足りない”と会長は考えているのか?」

トワの話が気になったミリアムは首を傾げ、ユーシスは真剣な表情でそれぞれトワに訊ねた。



「うん………」

「―――――中々興味深い考えですね。そう仰るからには、ハーシェルさんはどういう推測をなされているのですか?」

二人の問いかけにトワが頷くとセシリアは興味ありげな表情でトワに問いかけた。

「…………………………セシリア将軍の”リィン君の担当教官としての気遣い”もあったと仮定した上で………”リィン君がこの戦争で更なる上の地位に着くことで戦後のエレボニアについて口出しできる立場になった時、トールズ士官学院に通っていた経験でわたし達エレボニアの人々と親しいリィン君の二心を疑うかもしれないメンフィル帝国の人達を納得させる理由を作る為にも、その理由であるリィン君達が本当にエレボニアと決別できているかどうかを試す為”と将来”公爵家”に陞爵し、更には今回の戦争で得る予定のクロイツェン州の統括領主に内定しているリィン君に今回の戦争で活躍してもらって、その活躍による名声でこの戦争で得る予定のクロイツェン州の統治をしやすくさせる為……―――――そして……”メンフィル帝国がエレボニア帝国の存続を許す理由を作る為”なんじゃありませんか?」

「ええっ!?メ、”メンフィル帝国がエレボニア帝国の存続を許す理由を作る為”って、一体どういう事ですか……!?」

「会長が仰った前の二つの理由はリィンもそうだがメンフィル帝国にもメリットがある話だから理解できるが、最後の理由はエレボニアを救おうとしているリィンにメリットはあっても、エレボニアと戦争をしているメンフィル帝国にはメリットはないと思うのですが……」

真剣な表情でセシリアを見つめながら問いかけたトワの問いかけにアリサ達がそれぞれ血相を変えている中セドリックは困惑の表情でトワに訊ね、ラウラは真剣な表情でトワを見つめた。

「……………」

「……教官?」

「まさか……彼女が口にした推測は全て当たっているのですか?」

一方セシリアは反論する事なく、静かな笑みを浮かべてトワを見つめ、セシリアの様子が気になったドゥドゥーは首を傾げ、イングリットは驚きの表情でセシリアに訊ねた。



「フフ…………”最後の理由”――――――”メンフィル帝国がエレボニア帝国の存続を許す理由を作る為”という現在のメンフィルとエレボニアの関係を考えたら、”絶対に到らないその考え”の”理由”を聞かせてもらっても?」

「……最初に”違和感”を感じたのはメンフィル帝国の要求に従ってエレボニアからの”追放刑”を実行して紆余曲折があって、リィン君達の部隊に配属された皇女殿下がメンフィル帝国より爵位としては一番最下の”男爵”とはいえ、”爵位を頂いた事”です。」

「え……ですが、その件はアルフィンがゼクス将軍達――――――”第三機甲師団”を連合側に寝返らせた”功績”だと聞いていますが……」

興味ありげな表情を浮かべているセシリアの問いかけに答えたトワの答えが気になったセドリックは戸惑いの表情で指摘した。

「はい、確かにそうです。――――――ですが、幾らメンフィル帝国が”実力主義”とはいえ、戦争相手の国の皇族――――――戦後、メンフィル帝国が勝利して自国の領土として併合した国の人達の”メンフィル帝国からの独立の旗印にされかねない存在”に”戦力は十分過ぎる状況でありながら敵国の軍の一師団を寝返らせた程度”の功績で爵位まで与えるでしょうか?」

「それは………」

「……確かに追放刑を受けたとは言え、皇女殿下に”メンフィル帝国の貴族としての爵位”があれば、殿下を”独立の旗印”にすることもそうだけど”皇女殿下をメンフィル帝国が併合したエレボニア帝国の領主にすべきだという大義名分にする事”も可能だね。」

「そもそもエレボニアの10倍以上の戦力を用意したメンフィルにとっては敵国の軍の一部を寝返らせるみたいな”小細工”をする必要はないもんね。」

「はい……実際エリンでもリウイ陛下は”戦力の強化”の為にクロスベルもそうですが、ヴァイスラント新生軍と協力関係を結んだ訳ではないと仰っていましたものね……」

トワの推測を聞いたユーシスとアンゼリカは真剣な表情で呟き、フィーの推測に頷いたエマはセシリアを見つめた。



「次に”義勇兵”としてリィン君達の部隊に所属した今もエレボニア帝国に所属している人達――――――皇女殿下、クルト君、オリエさん、そしてミュゼちゃんが”灰獅子隊”結成後、そのまま”軍団長”であるリィン君の直属の部隊の一員として登用された事です。」

「そ、それってどういう事ですか……!?」

「殿下達はリィンが率いる部隊として戦ってきたのだから、リィンが灰獅子隊の軍団長になれば、そのままリィン直属の部隊の一員になる流れが普通だと思うのだけど……」

トワが口にした更なる推測にアリサは困惑の表情で声を上げ、エリオットは戸惑いの表情で指摘した。

「みんなも知っているように”灰獅子隊”の役割は”遊撃”。それは言い換えれば、”軍と軍がぶつかり合う正面衝突の戦いよりも手柄――――――つまり、敵将の撃破や敵拠点の電撃制圧を狙いやすい役目”でもあるんだよ。」

「……確かに軍と軍がぶつかり合いの戦いは、普通はどちらが先に消耗するかの消耗戦になるから、そんな戦いで軍を率いている”将”が討たれるなんて事は滅多にないわね。」

「……オーレリアやゼクス殿のように自ら最前線に立って軍を率いる将もいるが、普通は”将”というのは後方から軍を指揮するのが今のゼムリア大陸の軍隊の戦い方だな。」

「それに対して”遊撃”は味方軍とは別行動をする事で敵軍に対する”奇襲”をしやすいな。」

「ああ……紅き(ぼくたち)も全て”奇襲”で介入していたものな。」

「それにリィン様達が関わった戦いでもリィン様達が”その戦場にとっての手柄”をあげていましたわね。」

トワの説明を聞いたサラとアルゼイド子爵は真剣な表情で同意し、ユーシスの意見にマキアスは頷き、シャロンは静かな表情で今までの出来事を思い返した。



「うん。そしてそんな”手柄を狙いやすい部隊”に幾ら戦争相手の国に所属している人達――――――それも、”エレボニアにとっては有名な家系の関係者達”を所属させるなんてエレボニアを滅ぼすつもりでいるメンフィルの判断として”違和感”があり過ぎる判断だと思ったんだ。だって、もし皇女殿下達が手柄をあげれば、”実力主義”のメンフィルは当然”皇女殿下達の手柄に対する正当な評価”をしなければならないのだから、”場合によってはその評価がエレボニアの存続に繋がる”かもしれないのに、そんなリスクを負ってまでメンフィルは皇女殿下達をリィン君の直属の部隊にし続けるかな?」

「……確かに皇女殿下――――――アルノール家は当然として、”ヴァンダール”、”カイエン”は”エレボニアにとっては有名な家系”だね。」

「そしてそんな家系の血族達がメンフィル側として手柄をあげて、メンフィルに評価されれば、それがエレボニアの存続に繋がる可能性は十分に考えられるな。」

「そだね~。それこそその”手柄”と引き換えに”最初の理由”を説明した会長が言っていたみたいに、アルフィン皇女もそうだけど、ミュゼ達がメンフィルが併合したエレボニアの領土の領主になる事でエレボニアのメンフィルからの独立に繋がるかもしれないよね~。」

トワの推測を聞いたアンゼリカは頷き、真剣な表情で呟いたユーシスの推測にミリアムは頷いた。

「………しかし、それこそセシリア将軍のリィンに対する気遣いではないだろうか?実際、大使館でもセシリア将軍はリィン達の精神面を支える意味でも皇女殿下達をリィン達の部隊の所属にしたと仰っていたが……」

「うん。でもそれならそれで、皇女殿下達をリィン君達と一緒に最前線に出さずに、後方支援に徹させる指示を出す事もできたはずだよ。」

「……確かに言われてみればそうですね。」

「う、うん……それに騎士の家系である”ヴァンダール”の人達はともかく、お姫様のアルフィン殿下や協力関係を結んでいる軍のトップのミュゼは”戦場での戦死のリスク”も考えたら普通は”戦場”――――――それも最前線には出さないよね……?」

ラウラの指摘に対して答えたトワの推測を聞いたリシテアは納得し、アメリアは困惑の表情でセシリアに視線を向けた。



「そして最後の理由は………――――――”メンフィル・クロスベル連合がわたし達紅き翼を拘束して幽閉等をすることもせず、放置し続けた事です。”」

「あん?それに関してはトップの連中がヴァイスラントに対する”義理”やリベールとの関係を悪くしない為に放置していたんじゃねぇのか?」

トワがセシリアを見つめながら口にした最後の理由が気になったアッシュは眉を顰めて指摘した。

「確かにそうだけど、それでも本当にわたし達が邪魔になったら拘束してどこか安全な所で戦争が終わるまで幽閉する事でもヴァイスラントに対する”義理”は十分なはずだし………――――――それに何よりも連合は今までのわたし達の介入で協力してくれたアネラスさん達遊撃士の加勢について、遊撃士協会に”抗議”とかしていないのはおかしいよ。」

「た、確かに言われてみれば、私達も遊撃士協会の規約に沿ってトワちゃん達に協力していたとはいえ、連合の人達がアルテリアに”抗議”をされたトマスさんの時みたいに遊撃士協会――――――レマンにある”本部”に”抗議”とかしていないのはちょっとおかしいですよね……?」

「ああ……エステル達には今回の”大戦”のように本当に肝心な時には邪魔されないように”釘刺し”をしたにも関わらず、オリビエ達に直接協力している俺達に対しては何の”釘刺し”もしていないな。」

アッシュの指摘に対して答えたトワの疑問を聞いたアネラスは戸惑いの表情で、アガットは真剣な表情でそれぞれ同意した。



「――――――これらが、わたしが考えた”メンフィル帝国がエレボニア帝国の存続を許す理由を作る為”の理由です、セシリア将軍。」

「フフ…………―――――お見事。私の考えに対する推測の評価点として100点満点で評価するとしたら”文句なしの100点満点”ですわ。私の予想ではよくて”80点”くらいかと思っていましたが、まさかその予想を遥かに上回るとは………さすがは”トールズ始まって以来の才媛”と称されているだけはありますわ。」

トワに見つめられたセシリアは静かな笑みを浮かべた後拍手をしてトワを賞賛した――――――





 
 

 
後書き
次回の話でこの物語のリィンの未来の話が出る予定です。(いやまあ、シルフェニアの18禁版や黎篇のプロローグで既にネタバレしているから今更かもしれませんがww) 
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