七年も
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第二章
「二十面相の変装であったな」
「少年探偵団ですね」
「知っているか、それに出ただ」
まさにというのだ。
「西洋悪魔、メフィストの様な」
「私はメフィスト卿程位は高くありません」
男は微笑んで述べた。
「木っ端役人といった程度です」
「そうか、あんた悪魔か」
「人間はそう呼びますね」
「その悪魔が俺に何の用だ」
「話せば長くなりますが」
「だったらあがれ、臭くて汚いが酒も食いものもある」
堀田はそれならとぶっきらぼうな声で述べた。
「安いがお茶もある」
「そうしたものを口にしつつですね」
「話すか」
「それでは」
男、自分を悪魔と言う彼もだった。
堀田の言葉に頷き家に上がった、彼は家に上がると礼儀正しく堀田が出した茶も飲めと言われるまで口にしかった。
それで茶を飲みつつ言った。
「まずは正座が苦手で」
「俺も苦手だ、だから最初からこうだ」
ちゃぶ台を囲み胡座をかいての言葉だった。
「だからあんたもな」
「それでは」
「それでなんだ」
悪魔に居間であるがそうとは思えないまでに散らかったその部屋の中で問うた。
「悪魔が俺に何の用だ」
「いえ、貴方の暮らしを聞きまして」
悪魔は足を崩してから堀田に答えた。
「一つ貴方と賭けをしたいと思いまして」
「賭け?俺は博打はしない」
堀田は素っ気なく返した、彼も茶を飲んでいる。
「興味がないからな、女もクスリもだ」
「そうしたものはですね」
「酒は好きだが」
それでもというのだ。
「煙草も吸わない、好きなのは本と料理だ」
「そういったもので」
「賭けはしない」
このことを悪魔に言うのだった。
「あんなものをして何が面白い」
「それがそうした賭けではありません」
「博打じゃないのか」
「そうです、貴方に我慢してもらうことがありまして」
「我慢か」
「七年程風呂に入られないというのはどうでしょうか」
悪魔は堀田に微笑んで提案した。
「七年我慢出来れば貴方に実に多くの金銀財宝を差し上げます」
「それで金持ちになれか」
「左様です、どうでしょうか」
「七年か」
「貴方はお風呂は嫌いですね」
「ああ、滅多に入らない」
その通りだとだ、堀田も答えた。
「だからこの通りだ」
「汚れていると」
「そして臭い」
その垢と汚れが目立つ顔で答えた。
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