詩人皇帝
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第二章
「実に素晴らしかった」
「江南の景色は」
「そうでしたか」
「お気に召されましたか」
「うむ、長安が都だが」
この国、隋のというのだ。
「余はすっかり魅せられてしまった」
「江南の景色に」
「ではまたですね」
「江南に行かれたいですね」
「機会があれば」
「そうしたいものだ」
こう言ってだった。
楊勇は江南についての詩をさらに詠っていった、そしてだった。
それは策謀、歴史に悪名を残しているそれを用いて皇帝になってからも変わらなかった。それでだった。
長安の近くを流れる黄河と江南を流れる長江を運河でつなげた、それでこう言った。
「これで南のものがすぐに北に来られる様になった」
「はい、船を使えば陸よりも速く着きます」
「それも多く」
「それはいいことです」
「実に」
「そうだ、そして長安から船を使ってだ」
皇帝の座から言うのだった。
「江南にも行ける」
「万歳老がお好きな」
「そこに行けますね」
「左様ですね」
「それが出来ますね」
「そうしたい、そしてあの景色をまた詠う」
詩にというのだ、こう話してだった。
楊勇は詠い続けた、江南に行幸もして。だが隋は彼の代になってだった。
黄河と長江をつなげた事業に多くの人手と金を使い。
そして高句麗を攻めたことで国力を消耗しそこから国が乱れた、すると楊勇はその乱れを治めることなく。
江南に行って多くの美女達と遊んで暮らした、そこで彼は女達に言った。
「もうどうにもならぬ、それならな」
「それなら?」
「それならといいますと」
「ここで死にたい」
江南の地でというのだ。
「ここでな」
「だからですか」
「ここに来られましたか」
「そうされたのですか」
「この景色を観て詩を詠ってだ」
そうしてとだ、宮から江南のそれを観つつ話した。
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