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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第20話 正宗の軍師

私達は洛陽のある司隷州河南尹を北抜け、河内郡に入いりました。

私は今、袁逢殿が馬を用意してくれたことに感謝しています。

馬での旅は楽ですし速いです。

私はこの旅の荷物の中に、火縄銃を一丁持ってきています。

これを持ってきたのは、絡繰り好きの李典を懐柔するためです。

きっと、彼女は興味を引いてくれると思います。

「正宗様、何故、陳留ではなく河内ですの。正宗様のご両親は山陽群にいらっしゃるのではありませんの。河内では方角が全然違うように思いますわ」

私の隣に馬を寄せてきた麗羽は、私に疑問を投げかけてきました。

「麗羽は私の旅の目的が人材探しであることを忘れていないかい。これから行く温県の孝敬里に、司馬懿という人物がいるはずだから、私の軍師として仕官してくれと頼みに行くのさ」

私は麗羽の方を向いて、淡々と最初の目的地について話しました。

司馬懿の出身地は、私の能力で直ぐ分かりました。

こっちの世界の司馬懿が男性なのか女性なのか分かりません。

恋姫世界は基本、英傑と呼ばれる人の多くが女性です。

そう考えると多分、女性じゃないでしょうか。

私は司馬懿をどうやって仕官して貰おうか悩んだ末に、彼女相手に小細工するだけ無理だと悟りました。

司馬懿は人の考えを読むことに長けた人物と情報から分かっています。

ならば、司馬懿に対して、自分の気持ちを素直に伝えた方が好印象を抱いてくれるかもしれないです。

その逆もあるかもしれないですが・・・。

深く考えたところで、妙案が浮かばないのでこの方法でいきます。

駄目でも、旅の帰路にもう一度訪ねます。

それでも駄目なら、司馬懿の元を何度でも仕官をしてくれるように足を運びます。

そういえば司馬懿を含め、司馬懿の兄弟は「司馬八達」と呼ばれていましたよね。

司馬懿の家柄もかなりの名門です。

私の家臣になってくれるでしょうか?

今、私は無位無官ですし・・・。

「司馬懿・・・。司馬家ということは名門ですわね。正宗様に相応しい家臣ですわね。それより、その司馬懿という人物の情報は例の力で手に入れましたの?」

「そうだよ。司馬懿が私の家臣になってくれるか分からないけどね」

「そんなことありませんわ。きっと、正宗様の家臣になってくれますわよ」

麗羽の言葉は私の気持ちを察した訳ではないと思いますが、私にとっては慰めの言葉になりました。

「アニキー、今夜は孝敬里で美味しいもの沢山食べられるかな?」

猪々子は目を爛々と輝かせています。

孝敬里に上手いものがあるとは限らないです。

「急げばありつけると思うぞ。でも、こうのんびり移動していたら今夜は野宿だな」

私は猪々子の緊張感のない言葉に、適当に返しました。

「なら、アニキ、早くいこうぜ!」

猪々子は馬を急がせて、先行してしまいました。

やはり涼州産馬は普通の馬と違って、馬力が全然違いますね。

もう、あんなところに行ってしまっています。

「あっ!ちょっと文ちゃん。待ってー」

斗詩は慌てて、猪々子の後を追っています。

私と麗羽も取り残されない様に急ぐとします。

「麗羽、猪々子が先行したから、早く後を追おう。斗詩だけだと、猪々子の抑えにならない」

「猪々子さんは本当に困ったものですわね。仕方ないですわ。正宗様、急ぎましょう」

麗羽は指を眉間に当てて、想いに耽っていましたが、顔を上げ私に言ってきました。

私は麗羽に対し頷くと、麗羽と共に馬を走らせました。

私は未だ見ぬ孝敬里の地に胸を膨らませました。





今日もウザイ連中だった。

お前らみたいな豚どものに仕官なんかするわけない。

大体、母上も母上だ。

あの連中は売官で地位を買った連中で、民草から搾取することしか知らない。

どうせ裏では宦官どもと通じているに違いない。

アタシは誰とも関わりたくない。

母上が五月蝿いから、あの連中に会ってやったけど、いい加減にして欲しい。

アタシは今、いつも通り部屋に引き蘢っている。

どいつもこいつも私に笑顔で接してくるけど、本音は恐れている。

一度、アタシが苛ついて睨みつけたら、アタシを見るあの目今でも忘れない。

あの連中は、私が将来きっと朝廷の高官になるはずと思っているみたい。

未来の高官の不興を買うと不味いと本気で思っている。

あの連中、頭がおかしいんじゃない。

アタシは官吏にもなっていないのに・・・。

だからこそ、あの連中は今の内に手なずけて置きたいのだろう。

私の才気が普通じゃないらしいから、友達だっていない。

近寄ってくるのは、私に媚を売ってくる打算的な連中ばかり・・・。

考えるだけで、虚しくなる。

アタシは好きでこの才を手に入れた訳じゃない。

もう、誰とも関わりたくない。

この部屋の中で静かに暮らして行ければ、それで良い。

母上もそのことを理解してくれないかな。

アタシが仕官したところで、その才覚からいずれ疎まれるようになるに決まっている。

自分より優れ過ぎている人物を部下に持って、その人物を重用し続ける訳がない。

せいぜい利用されて切り捨てられるのが落ちだと思う。

かの高祖劉邦が元勲達を誅殺したようにね。

だから、アタシは仕官の話に興味なんてない。

こうやって、部屋に引きこもって、のんびり読書しているのが性に合っている。

こうしている時間だけがアタシにとって平穏なひととき。 
 

 
後書き
主人公の右腕となる軍師は、司馬懿で決定です。
 
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