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イベリス

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第四十八話 東京という街その六

「それが一番なのよ、最初からね」
「そういうことね」
「大人になってから行ける場所はあるのよ」
「今行かなくてもいいのね」
「そこを間違えたらね」
 その時はというのだ。
「大変なことになるのよ」
「ヤクザ屋さんに声をかけられたりとか」
「そういう手の人達にね」
「それで悪い道に入るのね」
「そうなるから」
 だからだというのだ。
「色々知ってからでいいのよ」
「ああした場所に行くにはなのね」
「冗談抜きに渋谷や秋葉原や原宿でも行ってなさい」
 東京のそうした場所にというのだ。
「いいわね」
「そうするわね」
「それか葛飾ね」
「下町ね」
「あそこの風情もいいから」
 それでというのだ。
「あちらもね」
「行くといいのね」
「ええ、行く場所は本当にね」
「考えることね」
「そうして選ぶことよ」
 それが大事だというのだ。
「行く場所をね」
「そうなのね」
「東京は色々な場所があるから」
「行っていい場所と悪い場所はわかっておくことね」
「歌舞伎町以外にもそうした場所あるから」
 高校生が行くべきでない場所はというのだ。
「間違っても風俗街とかホテル街とかはね」
「吉原とか?」
「あと大塚とか巣鴨とかもね」
「鶯谷もよね」 
 咲もそうした場所のことは聞いていて話した。
「それと渋谷でも近くの道玄坂の」
「あそこもよ。ホテル入ったことないわよね」
「ないわよ」
 咲は母に即座に答えた。
「そんな場所」
「ああした場所は高校生でも入る娘いるわね」
「そうみたいね」
「けれどお母さんが思うにあんたが行くにはね」
 それにはというのだ。
「まだ早いから」
「行かないことね」
「そして入ることもね」
「相手の人がいても」
「ええ、その相手の人が確かな人でないと」
 さもないと、というのだ。
「入ったら駄目よ」
「そうなのね」
「相手の人は軽く決めない」
「慎重に選ぶことね」
「そうよ」
 こう言うのだった。
「いいわね」
「お付き合いする人は」
「悪い男なんかにね」
「引っ掛からないことね」
「よく悪い奥さんが旦那さんを駄目にするって言うけれど」
「逆の方が圧倒的に多いな」 
 父もここでこう言った。
「世の中な」
「そうよね」
「悪い旦那がな」
「奥さんの人生を駄目にするわね」
「そうだな」 
 だからだというのだ。 
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