おっちょこちょいのかよちゃん
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205 杉山の真意
前書き
《前回》
かよ子達はりえを連れ去った妲己と交戦する。そして戦争主義の世界の本部にて最上位の道具四種が揃った時、黒い光が放たれ異能の能力を出す機械が完全に無効化された。そして撤退の準備を始める時、三河口とマリエルの前に戦争主義の世界の長と杉山が現れた!!
杉山君が三河口の質問に対して答えた言葉は一体何だったのか?今後明らかになると思うのでお楽しみに・・・!!
かよ子は妲己の持つ異能の能力を出す機械が存在意義を失った事で好機と捉えた。かよ子は石を操る能力を得た杖で巨大な岩石を妲己へ飛ばす。
「いけえ!」
妲己はこのままでは劣勢と見た。
「ちい!」
妲己は妖術を出す。そして杖の所有者に暗示を掛けた。
「杖の所有者よ、貴様はおっちょこちょいらしいな。ここでも私を倒せないというしくじりを起こす事になる」
「え?」
かよ子は何を言っているのか訳が分からなかった。
「おっちょこちょいは生まれつき。そしてそれは杖の所有者としての資格を母親の代から引き継いだ事の証なのだ。そのおっちょこちょいは一生治る筈がない」
「な、何を言ってるの!?」
「貴様、くだらぬ悪あがきはよせ!」
「仲間をそんなにかき集めたところで貴様は自分の使命を果たせない。仮に果たせたとしてもそのおっちょこちょいで皆に迷惑をかけるし、貴様の想い人にも迷惑がられる事になるのだ」
「う、うるさい!」
かよ子は巨大な岩石を八発も連射した。
「はあ、はあ・・・!!」
かよ子はこれで妲己は岩で圧殺されたかと思った。そして羽根をそのまま狐がいた所へと急ぐ。
「りえちゃん、りえちゃん!」
しかし、杯の所有者の返事はない。
「杯は!?杯はどこ!?」
かよ子はりえの杯だけでも取り返せばと思った。しかし、りえも、杯もどこにもなかった。
「私・・・、また、おっちょこちょいやっちゃった・・・!?」
かよ子はそう思った。自分でりえを殺してしまったのか。
「どうしよう、どうしよう・・・!?」
かよ子は慌てて泣いてしまった。
「か、かよちゃん、泣いちゃ駄目だよ・・・」
まる子が慰めようとする。
「そうじゃ、儂も泣いてしまうぞ〜。うおおお〜!!」
友蔵は更に大泣きした。
「待て、本当にそうなのか!?本部の守護に当たっている長山治に杯の持ち主の安否を確かめてみたら如何か!?あの妲己とか言う者、幻術をお主らに掛けておる当たり、巧妙にこの場を切り抜けたかもしれぬ」
「ああ、俺が連絡してみるよ!」
大野は通信機を取り出し、長山に連絡を試みた。
光江は東アジア反日武装戦線の組織「大地の牙」と交戦していた。二人組の男女は容赦なく手榴弾を投げる。光江は何とか御守の能力を利用して防ぐが、相手もまた怯む気配がない。
(東アジア反日武装戦線ってこんなに手強いの!?)
光江は威圧の能力を御守に流し込む。その時、女性の方が銃を出して発砲した。光江に攻撃は来なかった。しかし、本来なら光江の今の攻撃ならば気絶して暫く動けなくなるはずだが、二人は五体満足に立っていた。
「な、なんで倒れへん!?その銃で防いだんか!?」
「ああ、この銃があれば異能の能力を利用した攻撃は怖くないね」
(な・・・、専用の道具まで用意されとるなんて・・・!!)
その時、脳内に政美の声が聞こえた。
『こちら青葉政美。撤退するよ!今瞬間移動させる!』
「ええ、お願い!」
光江の姿が消える。
「あの野郎、逃げやがったか!」
湘木は3対1で敵とやり合っていた。三人の男は爆薬を大量に投げて湘木に襲いかかる。湘木は武装の能力で防御し、さらに斧で水を発生させ、爆薬の炎を払った。
(これじゃ、いつまでもつか分かんねえ!)
その時、政美から光江やマリエルに対しての時と同じ声が聞こえた。
『こちら青葉政美。撤退するよ!今瞬間移動させる!』
「こちら湘木!ああ、頼んだ!」
湘木の姿がその場から消えた。
「逃げたか!」
「ちい、機械が無力化されてなかったら奴を止める事ができたのによ!」
濃藤は剣を建物に刺してマリエルが出入りできる道を確保し続けていたが、政美のテレパシーが来る。
『こちら青葉政美。撤退するよ!今瞬間移動させる!』
「了解」
濃藤は政美の超能力でその場から離脱した。
三河口は杉山と相対する。だが、彼からは赤軍や敵の世界と同じく凶悪な気配を感じていた。
(聞いた話では誰かが戦争主義の世界の長と身体を共有させたと聞くが・・・)
「杉山君、お前、まさか、戦争主義の世界の長に身体を寄越したのか?」
「寄越した?俺はこいつの仲間になって身体の核として動いてんだ」
「まさにこの少年はこのレーニンの身体の核。私と共闘すると誓ったのだ」
声が代わった。同時に顔も別人に変化する。同じくその場にいたマリエルには先の行動が読めた。
(こいつ・・・、三河口君と剣の能力を吸い取って自分の物としようとしている・・・!)
「貴様の能力、吸収させてもらうぞ」
レーニンが三河口の能力を吸収しようとする。吸収は三河口の武装の能力では防御できなかった。
「巨人!三河口君を連れて戻って!」
「おう!」
豆の木の巨人は三河口を掴んで木に戻る。
「待ってくれ!」
三河口が途中で静止した。
「え?」
「杉山君、お前がレーニンの側についたのは赤軍の目的を達成させる為か?それとも、これが元の日常を取り戻す為に自分にしかできない事だと考えたからか?どっちだ?」
レーニンの姿が杉山の姿にまた変わる。
「俺は・・・」
杉山さとしは答える。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そうか・・・、豆の木の巨人、戻っていいぜ」
「ああ」
「マリエル、この事は皆に内緒にしてやってくれ」
「え?う、うん」
豆の木の巨人は三河口と共に木の上の自宅に戻る。木は縮み、元の豆に戻った。マリエルは豆を本に戻し、マザー・グースの鵞鳥で逃げようとした。
「逃がすか!」
杉山がまたレーニンの姿になった。
(剣を取り返す為に私ごと三河口君を殺す気ね・・・!!)
「貴様は生かさんぞ!」
レーニンの手から風が発生した。その風圧がマリエルを襲う。
「くう!」
リリパット王国の小人達がマリエルの盾となる。しかし、呆気なく倒され、消えてしまう。
(・・・はっ!)
しかし、マリエルは次の予知が訪れた。誰かが強制にでもこの地から離す事を。その予想通り脳内に声が聞こえた。
『こちら青葉政美。マリエル、瞬間移動させるよ』
「うん、お願い!」
マリエルの姿が消えていく。レーニンはあと一歩で剣を奪い返した物を捕らえ損ねた結果となった。
「よくも・・・、許さん!」
レーニンは杉山に八つ当たりする。
「何故に出てきおった。剣を取られたではないか!」
杉山は答える。
「でも、お前は強くなれたじゃねえか。俺もそんな気がするぜ。安心しろ。最後に勝つのは大将になった俺だからな」
なお、この時杉山の真意を聞いた者は三河口とマリエル、およびレーニンとマリエルが本から出した者達のみである。
大野は長山に連絡した。
「こちら大野!長山、今、安藤りえが狐に変身する女に連れ去られてるのを見た。山田の攻撃で女はやっつけたが、巻き添えを喰らったかもしれん!お前の眼鏡で確かめてくれるか!?」
『こちら長山だけど、そんな事があったのかい!?兎に角調べるよ!』
長山も大野の報告を受けて驚愕気味な反応だった。かよ子はオロオロしていた。
「どうしよう・・・。あの女の人を倒したと一緒にりえちゃんまで殺したら、私、最低だよ・・・」
かよ子は自己嫌悪していた。りえも自分と同じく杉山に好意があるように思っていたが、いくら恋敵でも殺生まではする気ではなかった。
「私、最低だ・・・。杖を持つ資格、ないよ・・・」
その時、長山から返事が来た。
「見えたよ。その安藤りえって子。馬に乗った女の人に乗せられてるよ!」
「え・・・、大丈夫だったの!?」
「恐らく勝てぬと思い、撤退したのであろうな」
石松は推察した。
『確か、その子が杯の持ち主だったんだよね?』
「う、うん・・・」
『その女の人が杯も持ってるんだ!それからその人もまた藤木君がいる所と同じ方角に向かってるよ』
「・・・え!?」
「サンキュー、長山!」
通信を終えた。
「山田かよ子、何れの目的にせよ、行く先は一つだな!」
「・・・うん!」
かよ子は藤木の奪還の為、そしてりえと杯を取り返す為、二つの目的の為に東北東の方角へ動き出す。
後書き
次回は・・・
「海上の撤退戦」
かよ子はりえが妲己に拉致される姿を確認した事をりえの友達に報告しようとする。そして再集合した剣奪還班は本部より撤退する為、迎撃を備えているヴィクトリア女帝の艦隊を殲滅し、クイーン・ベスの艦隊との合流を急ぐ・・・!!
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