ロックマンゼロ~四天の再臨~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
プロローグ
ここはネオアルカディア本部。都市の中枢部にある高い塔の上層部には、民を統べる最高機関が存在している。
機関に在籍しているのはネオアルカディア四天王と呼ばれる4人の優れたレプリロイド達だ。彼らはそれぞれエックスの遺伝子を元に作られており、皆秀逸な能力を秘めている。各々はまだ若く年季は浅いが、四天王達が治める統治内政は支持されており、人民・レプリロイド民の双方から人気が高い。
ここはその塔上階にある会議用のとある一室。現在、中央の円卓を囲んで四天王達が会合を開いていた。
議題は“特殊エネルギー源の確保”についてだ。
以前まではレプリロイド達の生存反映に必要不可欠な一般用エネルギー資源が不足しており、故にエネルギー資源の確保が早急な懸案事項となっていた。しかし科学者シエルによる革新的なエネルギーシステム[システマ・シエル]の発明により、現在はその懸案事項はほぼ解消されている。
だが、それで問題の全てが解決されたわけではなかった。一部の特殊なエネルギー機構を持っている稀少型のレプリロイドの存在だ。彼らは一般的な多くのレプリロイド達とは異なりシステマ・シエルの生成エネルギーでは生き長らえる事が出来ない身体を持っている。人間の私利私欲を叶えるため生み出された希少種である彼らは、その特殊な動力機構のためにエネルギー適合が難しく、現在もエネルギー資源の困窮に飢えていた。彼らの困窮を解消すべく、新たな特殊エネルギーの確保が急務だった。
「さて、特定指定異種レプリロイド138に適合可能なこの特殊エネルギーについてたが、名称はギラテアイト。現在郊外の南西40kmほどのライズ地区に存在が疑われている」
ヘッド両端に縦に伸びた緑のパーツを誇る若人が指し棒を持って画面上の1地区を指し示す。
彼は賢将ハルピュイア。四天王のリーダーを務めるまとめ役だ。
生真面目ではあるが、プライドが高く若干キザな面もある。
目で視認できないほど速く移動する事が出来、そのスピードを持って相手を圧倒する。
風と雷を自在に使いこなし、空を滑空する事も出来る。
「へえ、んじゃそこに早速行って手っ取り早く取ってきちまおうぜ」
「待て。わかっているのはあくまでライズ地区にあるというおおまかな事だけだ。ライズ地区はひとえに1地区といっても広大な面積を誇る。1人がピンポイントで行って短時間で回収できるような容易なものではないんだ」
「なんだ、場所の細かな特定までは出来てねえのか。ちぇ、それじゃあいちいちどこにあるか探し回って掘り当てなきゃいけねえ。面倒な探索は嫌いだぜ」
ハルピュイアの返答にウザったそうに言う赤いがたいのいい男。
彼もまた賢将と同じく四天王の1人だ。赤い色そのままに暑苦しい感じさえうける。彼は闘将ファーブニル。
熱のある闘気を持つ闘いの好きな漢だ。その陽気さから類い稀な戦闘資質が有り、手持ちの武具ソドム・ゴモラから連弾して炎を打ち込む。武器による遠距離攻撃だけでなく拳を使っての直接攻撃も得意。パワー・高い跳躍力など身体能力が高く、荒事などの鎮圧任務などに向いている。反面固い事務作業などは苦手で真面目に取り組まない事も多々あるようだ。
「また戦闘馬鹿はすぐそうやって面倒くさがる。私達の任務は敵との直接戦闘だけじゃないの。こういう地道な作業も大事な仕事なんだから、いい加減四天王としての自覚を持ちなさいよ」
「へえへえ、うるせえな。そんくらいわかってるんだよ背伸びスイーツ娘」
「なんですって!」
「こらファーブニル、お主は何故そう余計につっかかる。レヴィアタンの指摘はもっともだ」
闘将の減らず口に憤慨する少女と、それに賛同する黒衣の忍び。
彼らもまた四天王であり、前述の賢将・闘将と対等な間柄だ。
両の手を机に押しつけて思わず立ち上がったのは妖将レヴィアタン。青い綺麗なボディを持ち、ヘッド部両端にはハルピュイアとは逆方向にヒレパーツが伸びている。彼女は水中でも行動しやすい特性を持っており、流麗に泳いで活動する事が可能だ。その手に持つフロストジャベリンと氷を使った多彩な技は見る者を魅了し、また殲滅する。華奢な身体からは想像のつかない強さも持つ少女だ。細かな探索や事務作業などの地道な職務もテキパキと取り組み進められる。思考力も良く、さぼりがちなファーブニルをよく注意している。
「わかったよ、ちっとは真面目に取り組むか」
「ふん、全くガキなんだから」
「わかればよい。レヴィアタン、お主もそうかっかするでない。今は冷静に議論を進めるとしよう」
2人をなだめて仲裁役になっているのは隠将ファントムだ。
落ち着いた物腰と冷静な目を持ち、4人の中で一番精神年齢が高い。喋り方や格好含めて忍者風の男だが、そのままの通り彼は影の四天王で忍びの属性を持っている。闇に紛れて敵を闇討ちしたり多彩な分身が可能。他にもクナイや手裏剣を使ったまさに忍者のような戦闘スタイルをとる。
他の3人の仲裁役をする事も多く、4人をまとめるために彼の物腰は必要不可欠だ。寡黙で忠誠心に熱く、主であるエックスに害をなす者には容赦なく鉄槌を下す。以前のゼロとの戦闘ではその強すぎる忠誠心から自爆までし、命を落として絶命していた。
彼以外の残りの3名も、以前オメガの爆発からゼロを庇った事で全員一度は命を落としている。
だが彼らのメモリーチップは実は別にコピーが存在しており、四天王達が身体を充電中などに定期的に情報が転送され同期されていたため、そのコピーメモリーチップにより再構築が可能だった。元のメモリーチップと遜色ない記憶データを持つメモリーを使い、新たに賢将・闘将・妖将・隠将のボディが修復され、新生ネオアルカディア四天王として復活する事に成功している。
「んじゃあどうやってギラなんちゃらエネルギーを探し出すんだ?」
それじゃ地区内のどこにあるか細かな特定が出来ないじゃねーか、とファーブニルがハルピュイアに問う。
「ギラなんちゃらではなくギラテアイトだ。とりあえず現状ではまだ大まかな場所しかわかっていないが、いくつかめぼしい地点はしぼられている」
「我ら残影軍団が隠密を活かして探りを入れたのでな。既に4つの候補地を見つけている」
「フフ、さすがファントムの残影軍団ね。さぼりの戦闘馬鹿と違って役に立つわ」
「何だと!おら…!」
妖将の軽口に今度はファーブニルがつっかかる。
だが当の彼女は涼しい顔をして笑顔で言った。
「じゃ、あとはその4つの候補地を手分けして探せばいいって寸法ね」
「うむ、その通りでござる」
「ただし候補地におけるエネルギー探索においては、配下の部下には任せず我ら四天王が直々に向かうのがいいだろう」
「あん?何でだよ。そのままエネルギーも部下に探させればいいじゃねえか」
抗議を華麗にスルーされた闘将がばつが悪そうに尋ねる。
確かに探索なら頭数が多い方がいいし彼の言う事は理にかなっていた。
「普通に考えれば多くの者達を投入して探した方がいい。だが今回の目的は“特殊エネルギー”の採集だ。このエネルギーは特定の指定レプリロイド限定に効能があるという特性から希少価値が非常に高い」
「故に他の敵対勢力が狙っている可能性があるのでな。部下に任せるのは少々心許ない部分がある」
隠将の言う敵対勢力とは、ネオアルカディア外部の未開の土地に存在している勢力の事である。
ここネオアルカディアは人間とレプリロイドが共存繁栄し、お互いが協力して平和に生活している。
だが都市の“外”はそうではない。
ネオアルカディアのように統治が行き届いた高度な都市ならば人間・レプリロイドの間に秩序が保たれているが、外の世界にはそのような常識が通用しない荒れた地域が未だ多数点在している。秩序が保たれていない場所に住む存在は、共存繁栄を掲げるネオアルカディアからすれば敵対勢力と言える。
今回の対象地区であるライズ地区もその例に漏れず治安の悪い場所だった。
「まあ粗悪な地区、というだけならば何も我らが直々に出向く必要はない。部下のボス級レプリロイドで十分対処できるだろう。だが、こと特殊エネルギーに関しては事情が異なる」
ハルピュイアは指し棒を再び電子画面に向けた。
「これら4つの候補地のどこかにはおそらくエネルギーが“貯蔵されている”はずだ」
「貯蔵?地中に資源として埋まっている、ではなくて?」
「左様。我ら残影軍団の調査によるとライズ地区の者によってギラテアイトが内密に産出され、地下の機密施設に保持して管理下に置かれているとの情報が複数入ってきているでござる」
途中のフレーズに違和感を覚えたレヴィアタンにファントムが説明する。
どうやらライズ地区に巣くう勢力が特殊エネルギーを内密に掘り出しどこかに貯蔵している事は確かなようだ。
ちなみに[内密に]というのはネオアルカディアにエネルギー採掘の許可を申請していないからである。
ライズ地区はネオアルカディアの郊外にある地区だが、都市区域内であり、ネオアルカディアの法の管理下にある。
そのため無許可で特定稀少資源の密漁は法により禁じられていた。しかし遠方の郊外であるが故、ネオアルカディアの管理が行き届いておらず、管制当局の監視の目をすり抜けて採掘されてしまっていたらしい。
「あー、そういやここの地区はまだ謎が多いんだったよな」
「ああ。使途が不透明な施設がいくつかある地区でな。こちらの管理の目が薄い故に施設内で何をしているか把握できていない」
「ふぅん、もしかしたら何か危ない実験や研究をしているかもしれないってわけね」
「我らの調べた限り、その可能性は一定数あるとみて間違いないだろう。故に部下の手に任せておくわけにはいくまい」
現在この地区では大量破壊兵器開発などの危険な企みを企てている事が危惧されていた。そして、そのような重要機密案件を執り行っているという事は、敵対勢力の中でも上官が関わっている可能性が高い。
「なるほど、親玉に強えー奴がいるってわけか。んじゃあ部下にはやらせられねえな」
「確かにそれならスタグロフやカムベアス達じゃ心許ないわ。あちらにある程度レベルの高い奴が控えてるなら私が出ないと駄目ね」
幹部格の者が施設に構えているとなると、配下のボス級レプリクラスではおそらく逆に倒されてしまうだろう。
そのため、ネオアルカディア四天王が直々に候補地に出向いてミッションを行う必要があるのだ。彼ら四天は他のレプリロイド達とは一線を画す存在。知能・戦闘力・美しさ・索敵能力など特別に優れたパラメータを保持している。配下のボス格レプリロイド達と比べてもそれら総合能力の高さは群を抜いていた。特別な4人の精鋭達だからこそ彼らはネオアルカディア四天王と呼ばれ、時に闘い、時に統治し、時には笑顔を民衆に振りまき、人民から慕われている。今回は彼らが直々に出向いた上で、目的物の採集、場合によっては敵勢力との戦闘・奪取が必要になる事案だ。
「決まりでござるな。では我ら4人がそれぞれの候補地に出向くとしよう」
「ええ、じゃあ今からそれぞれどこの“施設”に向かうか決めましょ」
「怪しい施設の数は調度キリよく4つらしいじゃねえか。どんな場所だ?」
「エネルゲン水晶発掘所・紫硝子の城・パール空港・ダイヤモンドビルだ」
四人はしばしどの場所に行きたいか考えた。
数刻の後、一番早く手を上げたのは紅一点のレヴィアタンだった。
「あ、じゃあ私、紫硝子の城で!綺麗そうだし」
「はっ、綺麗かどうかなんてミッションで関係ねえだろ」
「何よ、どうせなら景色も楽しみたいじゃない」
「(そういうとこがスイーツだっての)んじゃ俺はダイヤモンドビルにするぜ」
「では我はエネルゲン水晶発掘所に出向くとするか」
「ならば、俺は残ったパール空港に行くとしよう」
四天王それぞれが行き先の候補地を選び、早速彼らは転送装置へと向かう。
「じゃ、さくっと行って特殊エネルギーを回収してくるとしますか」
「俺は強え奴とやれるのが楽しみだぜ」
「お主は戦闘の事しか頭にないのでござるか」
「まあファーブニルだからな」
「そりゃ戦闘馬鹿ですものw」
「んだと!うるせえぞレヴィ……!」
ちょっと調子に乗ってる軽口に応戦しようとした闘将の言葉が途中で遮られる。
転送装置の転送が開始されたためだ。
4人の将達はそれぞれの行き先へ向けて飛び立っていった。
ページ上へ戻る