レーヴァティン
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第二百四十五話 函館入りその十
「なりません、ただ遊びで殺めたり」
「屍を朽ちるままにすることはな」
「避けるべきです」
「やはりそうだな」
「ですから食べることも用いることも」
「いいな」
「拙僧もそう考えます」
謙二は英雄に深い思慮がある声で答えた。
「それは」
「だからだな」
「これからも獣や魔物はです」
「食って用いる」
「そうしましょう、蛇なぞ干せば肥料になりますし口にしても」
「あれで結構な」
「美味です」
この生きものもというのだ。
「鶏の様な味がして」
「食える」
「左様です」
「古典でもあったな」
英雄はここでこうも言った。
「蛇を干したものを魚のそれと言って売って食わせる」
「今昔物語でありますな」
峰夫が応えた。
「芥川龍之介の作品でも書かれていたであります」
「羅生門だな」
「あちらでは悪行となっていますが」
「それでもな」
「堂々と蛇だと言って売れば」
それならというのだ。
「今ならであります」
「悪事でも何でもないな」
「当時はそうした時代だったということで」
「そうだな」
「そしてであります」
峰夫は英雄にさらに話した。
「蛇を食べて美味くその毒もであります」
「熱するとな」
「なくなるであります」
蛇の毒が蛋白質で出来ているからである、その為煮たり焼いたりするとそれで分解されてしまうのだ。
「そうすれば」
「そして食える」
「しかもであります」
「美味いからな」
「退治すれば」
そうすればというのだ。
「小骨が多いにしても」
「食うべきだな」
「それが大蛇なら」
「尚更だな」
「食するべきであります」
「そして皮も使える」
蛇のそれもというのだ。
「特に大蛇ならな」
「尚更であります」
「道具にもな」
「鰐のそれと同じく」
「だから粗末にすべきではないな」
「全くであります、普通に蛇の皮を持っていると」
峰夫はさらに話した。
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