ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね(お試し版)
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十六話「パプニカへ」
前書き
どうでもいいことですが、Ⅳのメラゴーストのステータスをのっけてみたりします。
どれだけひ弱だったか察していただけると幸いかな。
HP MP 攻撃力 守備力 素早さ
12 2 11 12 8
比較対象として、以下はあばれうしどりのステータスです。
HP MP 攻撃力 守備力 素早さ
20 0 22 12 10
ついでにもっと先ですが、原作でレベル18のポップはこんな感じらしいです。
HP MP 攻撃力 守備力 素早さ
86 69 17 17 26
あれ? 武器防具装備すれば格闘戦ではポップと良い勝負になるのかな?(HPの差は考えないモノとすると)
「……長かった」
大陸と大陸を渡るのだ、当然と言えば当然かもしれないがずっと巨大カンテラに押し込まれたままと言う状況も体感時間を引き延ばすのに一役買っていたと思う。
「にしても、色々あったなぁ」
漁火代わりにされて食糧調達を手伝ったり、魔物が寄ってくるといけませんからとカンテラ自体に布をかぶせられて長いこと何も見えない時間が続いたり、舟をこぎ続けた師匠のことをつくづく人間離れしてるなと思ったり。
(気が付けば陸地が見え始めてるんだもんなぁ)
島と言った規模ではないので、おそらくあれがホルキア大陸なのだろう。
(ルーラの呪文の契約は幸いにも成功してるし、こんな船旅もそう何度もないんだろうな)
師匠と共に行くのも原作主人公の故郷までだと思うので、ホルキア大陸から南海の孤島までもう一度船旅はあると思うが、師匠はパプニカからの依頼で主人公の故郷に赴くのだ。流石にパプニカも船ぐらいは用意してくれると思う。
(用意してくれなくて小舟を使う場合でもその一回こっきりの筈)
メラゴーストで人間ではないからか、幸いにも船酔いとは無縁の航海だったし、耐えられないこともないのではないだろうか。
「おい、メラ公! 陸地が見えて来たぜ、ホラ」
尚、この短い船旅の間に俺は兄弟子からそんな風に呼ばれるようになっていた。ポップはまだ俺が筆談出来ることを知らないし、あちらが名前を尋ねてきても話す言葉がメラメラとしか聞こえてないようなので、仕方ないといえば仕方ないのだが。
(この状況だと気づいてましたよと言うのも野暮かな)
一応本当だと言ってから俺は視線を陸地の方へと戻す。
(パプニカ、かぁ)
被害が出ることが解かっているからこそ、未だに迷う。少しでも被害を減らせる手立てがあれば、良いとは思うものの良案はなく。
(やはり師匠に魔王の意思の影響を俺が受けるかどうか聞いておくべきだよなぁ、ただ)
魔王の意思の影響でモンスターが凶暴化するというのを俺が知っているのは、原作知識によってだ。原作知識を伏せて師匠に尋ねるとするなら、まず魔王の意思でモンスターが凶暴化するという情報を俺が得た元をでっちあげる必要がある。
(パプニカの城下町で聞いたとかにするにしても、モンスターの俺が単独行動を許される筈はないし)
それならまだ、物語の話を師匠にするついでに逆にこの世界のことを聞き、師匠の口から話してもらう方が自然だし難易度も低いと思う。
「この世界で今後も生きていくとして、気をつけないことがあったら教えてください」
とか、そんなところだろうか。この質問が出てくるまでが遅いのではと訝しまれたら、師匠が一緒だったので当面安全だと思っていたとか何とか言って誤魔化すとして。
「二人とも、陸地が見えて興奮するのもいいですがもうすぐ上陸です。上陸の隙をついてモンスターが襲ってくることがあるかもしれませんし油断は禁物ですよ」
「あ、はい」
師匠にたしなめられ、兄弟子が申し訳なさそうに頭を下げるのを隣に上の空だった俺もすみませんと頭を下げる。
「わかってもらえればそれでいいです。私はこの小舟を漁村まで返しに行かないといけませんからね」
「へ? あっ、ルーラっスか」
一瞬あっけにとられつつもすぐに答えに思い当たる当たり、流石魔法使いと言うべき何だろう。俺がどういうことかを理解する前にポップの口にした答えに師匠は正解ですと頷くと、小舟が浜に上陸するや否や、濡れたままの小舟を担いで瞬間移動呪文であるルーラの呪文で空へと飛び立っていった。
「やっぱすっげぇな、先生は」
ぽかんと空を見上げる兄弟子に俺は同意するしかなく、師匠が空を飛んで戻ってきたのは、しばし後のこと。
(そう言えば、こっちのルーラの呪文は村や町みたいな特定の場所だけじゃなくて記憶してる場所にも飛べるんだっけ)
ずいぶん使い勝手が良いなと心から思う。
「さて、これからいくつかの村を経由してパプニカのお城へ向かう訳ですが……船上では十分な修行はできませんでしたからね。その遅れも取り返す意味でも――」
「せ、先生それってまさか」
そして、俺が感心してる間に口を開いた師匠の言の途中でポップが顔色を変え。
「まさか?」
「あ、いえ、特別ハードコース、とか?」
「いえいえ、後れをとり返すためとはいえコースの変更まではいきませんよ」
問い返されて恐る恐る口にしたモノを師匠はかんらかんらと笑い飛ばし。
「ああ、ですがお望みならコースを変えても構いませんよ」
「じょ、冗談じゃないッスよ!! おれは通常の特訓で十分ですからっ!!」
にこりと笑いかける師匠にぶんぶん手を振る兄弟子を見て、俺は原作にもこういう展開があったなぁとふと思い出していた。
「では、メラゴースト君。貴方はどうします?」
「え」
ただ、俺としてはこの時予想しておくべきだったのだろう。師匠がこっちにも話を振ってくることを。
(うん? けど、これってひょっとしてキツいコースの名目でポップを遠ざけて、色々質問とかする機会を設けてくれたってことなんじゃ)
反応は遅れたが、遅れたからこそ一瞬考えることができ。俺は頷きを返し。
「ゲゲっ」
こいつマジかよ的な顔を兄弟子に向けられる中、師匠を見返して。
「ナイスガッツです。では、早朝と夕方も特訓ですね」
「E?」
師匠の意図を読み違えたことに俺が気づいたのは、もはや手遅れになってからのことだった。
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