東方絆日録 ~ Bonds of Permanent.
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共存編
早苗:七色の人形遣い
プリズムリバー邸訪問からほどなくして新年を迎えた。
それからさらに一週間が経ったある日、(西)は魔法の森にある魔法使いで人形遣いのアリス・マーガトロイドの家を訪ねていた。彼女の操り人形に興味を持ったためである。
アリス「こんにちは、いらっしゃい」
(西)「お邪魔します」
こじんまりとはしているが狭さを感じさせない家。その至るところに製作中と思わしき人形が何体も置かれていた。
完成した人形もちらほら見受けられる。完成した人形は掃除や洗濯、裁縫など様々な家事を器用にこなしていた。
(西)「すごかあ!みんなアリスさんが作りんしゃったとですか?」
アリス「そうよ。日常生活を補佐するものから偵察用、戦闘用…といった感じで用途ごとに使い分けてるの」
棚を指差しながらアリスが説明する。
一列にずらっと並べられた人形はなかなか壮観であった。
(西)「そういえばこれって操り人形なんですよね。アリスさんが操ってあるとですか?」
アリス「んー、なんて言えばいいのかしら。確かに私が操っている面もあるけどこの子たちは半自立型で、簡単な命令なら自分たちの意思でこなせるのよ」
(西)「へえ…?」
アリス「実際にやってみせましょうか。……こほん、上海、蓬莱。こちらへいらっしゃい」
ほどなく小人ほどの大きさの人形が二体浮遊してきた。
青い服の人形を上海、赤い服の人形を蓬莱という。
アリス「上海はお客様にミルクティーを、蓬莱は私がいつも飲んでいる紅茶を持ってきて。どっちもホットで持ってくるのよ」
上海「シャンハ-イ」
蓬莱「ホラ-イ」
指示を受けた二体の人形はどこかへ飛んでいった。
(西)「大丈夫なんですか?」
アリス「まあ見てなさい。ちゃんと持ってくるから」
ー
ーー
ーーー
5分後、人形が戻ってきた。
お盆にはホットミルクティーとホットダージリンティーが載っている。
上海「シャンハ-イ」
上海が(西)の前にミルクティーを置いた。
(西)「あ、ありがとう…」
(西)は戸惑い気味に礼を言った。
蓬莱「ホラ-イ」
蓬莱もアリスの前に紅茶を置いた。
アリス「ありがとう」
アリスは紅茶を一口すすると「上出来ね」と呟き、机の引き出しから小さな入れ物を取り出した。
アリス「二人ともありがとう。ご褒美をあげるからこっちに来なさい」
上海「ヤタ-ゴホウビ-」
蓬莱「ゴォウビ-」
(西)「うええ⁉︎」
(西)はよもや人形が言葉を話すとは思ってもいなかったので腰を抜かさんばかりに驚いた。
(西)「たまがったぁ…。喋れるんですね!」
アリス「ええ。上海と蓬莱は私が最初に作った人形で、言葉もいくつか教えているから喋れるわ。でもなぜか蓬莱はいつまで経っても舌足らずなのよね…」
蓬莱「ホラ-イ、シタタジュダアヨ」
アリス「ええ、そうね」
アリスは人形にグミのようなものを食べさせながら話しをしている。
(西)「へえ!……ところで、いま人形たちに食べさせよるそれは何ですか?」
アリス「人形専用のおやつ。カロリー満点の特製グミよ」
(西)「ウチもひとつ貰うてよかですか?」
アリス「どうぞ」
一つ失敬し、口に放り込む。しかし味が全くしなかった。
(西)「うーん、いっちょん味がせんとですけど…?」
アリス「そりゃそうでしょ、人形には味覚がないからねえ。味をつけても意味がないわ」
(西)「そうですか…」
『よくもまあ、こんな無味無臭のものを嬉々として食べられるなあ。』
違う意味で感心した(西)だった。
ー
ーー
ーーー
その後も(西)はアリスの家で人形の仕組みについて教わり、帰路についたのは日が暮れてからだった。
昼でも光源に乏しい魔法の森は夜になるとなおのこと暗い。足元に気を取られていた(西)は前方から来た人物に気づかず、その者とぶつかってしまった。
(西)「す、すみません!大丈夫ですか⁉︎」
?「あいたたた…。夜目が利かないのは私も同じだけど、もう少し注意して歩いてくれたまえよ」
声から察するに、ぶつかった相手はどうやら少女のようだ。
?「しまった、今の弾みで“ダウジングロッド”を落とした!君も探してくれないか⁉︎」
(西)「もちろんです!」
ダウジングロッドの特徴を聞き、直ちに明かりを点けて捜索にあたる。稲妻型をした二本の長い棒とのことだった。
果たしてそれはすぐに見つかった。最初ぶつかった地点に落ちていたのだ。
(西)「それらしきものを見つけました!」
?「おお、すまないね」
(西)がダウジングロッドを渡すため相手の顔を照らすと、相手はネズミのような耳と尻尾を持つ少女だった。
(西)「か・・・。」
ネズミ少女「か?」
(西)「可愛いー‼︎」
ネズミ少女「?」
ーーーネズミの耳と尻尾を持つ少女はきょとんとしていた。
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