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東方絆日録 ~ Bonds of Permanent.

作者:福岡市民
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共存編
  妖怪少女たちの主張

敏久がZUNと会った翌日。彼は霊夢と人里近くのイベント会場に来ていた。
その内容は、会場の雰囲気から察するに妖怪の路上ライブらしかった。


霊夢「なーんだ、イベントっていつもの路上ライブのことだったのね…」


霊夢は何度もそのライブを見ているらしく、うんざりした表情だった。


敏久「そんなに何回も聴いているのか?」

霊夢「『聴いている』んじゃなくて勝手に聞こえてくんのよ!騒音公害もいいところだわ」

敏久「まあまあ、そう言わずに聴いていこうや。現に俺は初めてなんだし」


道端に仮設のステージが組んであり、ステージには妖怪らしき出演者が二人とプリズムリバー三姉妹の姿があった。


敏久(間違いない、これは“鳥獣伎楽”のライブだな。)


敏久は東方に関する書籍でヤマビコの幽谷響子と夜雀(よすずめ)のミスティア・ローレライから成るパンクバンド「鳥獣伎楽(ちょうじゅうぎがく)」がこうして幻想郷各地で路上ライブを行うことを知っていた。

『果たしてどんな歌が聴けるんだろう?』
ワクワクしている敏久に霊夢が話しかけてきた。


霊夢「ねえ」

敏久「あ?」

霊夢「人の意思に関係なく騒音を撒き散らす迷惑な妖怪を見たら私ね、もう退治したくて体がウズウズしてくるのよ…」


霊夢は目をぎらつかせ、しかも視線は2人の妖怪少女をガッチリ捉えていた。もちろん冗談のつもりだろうが、このままだと本当にやりかねない。
敏久は急に不安になってきた。


敏久「が、我慢しろよ?」

霊夢「善処するわ」

敏久(それってダメな官僚の常套句だよな…。)


敏久はますます不安を募らせるのだった。


〜〜〜〜


(西)が幽谷響子に出会った日の夜、彼女は守矢神社の面々と響子のライブを見に行った。


神奈子「おっ、やってるやってる」


人里から博麗神社に向かう道の途中に仮設のライブ会場があり、そこに大勢の観客が集まっていた。

ライブはすでに始まっているようだ。
ステージには響子の他に、夜雀のミスティア・ローレライと騒霊(ポルターガイスト)の姉妹であるプリズムリバー三姉妹がいた。
(西)はミスティアやプリズムリバー三姉妹との面識はまだない。


響子「♪終わらない歌を歌おうー ♪クソッタレの世界のためー ♪終わらない歌を歌おうー ♪全てのクズ共のためにー」

諏訪子「この歌は聴いたことがないね。なかなかいい歌みたいだけど」


しばらく歌に聴き惚れていた諏訪子が呟いた。(東)がすかさず説明する。


(東)「“THE BLUE HERTS”という外の世界のミュージシャンの“終わらない歌”という歌です」

諏訪子「へえー!」

響子「♪終わらない歌を歌おうー ♪僕や君や彼らのためー ♪終わらない歌を歌おうー ♪明日には笑えるようにー……」



ーー
ーーー


響子が歌った外界の歌は「終わらない歌(THE BLUE HERTS)」や「心の花を咲かせよう(いきものがかり)」、「負けないで(ZARD)」などだった。
また、東方アレンジは“Bad Apple!!”(Alstromeria Records)や「信仰は儚き人間の為に(岸田教団&THE明星ロケッツ)」、“Melody!”(いえろ~ぜぶら)など、どれもメッセージ性が高い曲ばかりだった。

ライブ終了後、(西)は音響器具の片付けをしている響子に声をかけた。


(西)「お疲れさま。なかなか良かったばい!」

響子「ありがとう、来てくれてたんだね!」

(東)「響子さん、その節はどうも♪」

響子「あっ、こないだの巫女さん。こんばんは!!」

神奈子「貴女が幽谷響子さんね。早苗から聞いているよ。私は八坂神奈子、守矢神社に祀られている祭神の片割れよ」

諏訪子「えっと……。神奈子と同じく守矢神社に祀られている土着神の洩矢諏訪子だよ。気軽に『ケロちゃん』って呼んでね♪」

響子「私はヤマビコの幽谷響子です!よろしくお願いします!!!」

神奈子「おお、噂どおりだ。ものすごい声だな……」(←耳を塞ぐ)


響子の大声は周辺一帯に反響した。
すると会場の撤収作業をしていた妖怪の少女がその声に気づき、こちらに近付いてきた。


?「響子、何やってんのよ!早く片付けを……あっ、人間発見!私が鳥目に―――」

守矢組「させない(させません)よ!」


翼を生やした鳥の少女が何か言いかけたその瞬間、(西)以外の守矢組が臨戦態勢に入った。
神奈子は御柱(おんばしら)、諏訪子は鉄輪(かんなわ)、(東)は大幣(おおぬさ)をそれぞれ少女に向け威嚇している。


響子「皆さん、喧嘩はやめましょうよぉ…」


そして響子はどうしたらいいか分からず、おたおたしていた。


?「私が見る限りだと…みすちー、貴女は確実に負ける。相手が悪すぎるわ」

?「特に襲うメリットもなさそうだしねー」

?「だからやめよう?・・・ね?」


ステージを解体していた色違いの服を着ている三人組も騒ぎを聞きつけ、この「みすちー」なる人物の説得に加わった。


みすちー「・・・。」


やがて観念したのか、彼女は振り上げた腕を下ろすと皆に向かって言った。


みすちー「皆さん本気にしたんですか?いやだなあ、幻想郷ジョークに決まってるじゃないですかー!」

みすちー以外(じゃあ今の“間”は何だったんだ…!?)

みすちー「それにしてもびっくりしましたよぉ。まさか神奈子さんたちのお知り合いだったなんてねー!」


あはははは、と愛想笑いで誤魔化す少女。


神奈子「この子は西村早苗。数日前に幻想入りした女の子さね」

ミスティア「初めまして、私は夜雀のミスティア・ローレライ。“みすちー”と呼ばれているわ」

(西)「よすずめ……?」

ミスティア「夜雀は夜に道行く人の後を鳴きながらついて回る鳥の妖怪で、過去には伊予(いよ)(=愛媛県)や土佐(とさ)(=高知県)に出没したという記録があるわ。私はその夜雀なの」

(西)「へえ…私は西村早苗です。よろしくお願いします」

ミスティア「よろしく。そういえば貴女、新聞に載っていたわね」


それじゃあ私たちも自己紹介するわ、と黒い服を着た金髪の少女が一歩前進した。


ルナサ「初めまして西村さん。私は騒霊チンドン屋“プリズムリバー楽団”の団長にしてプリズムリバー家の長女、ルナサよ」


続けて薄桃色の服を着た薄水色の髪の少女が自己紹介する。


メルラン「同じくプリズムリバー楽団員で次女のメルランです」


最後に赤い服を着た茶髪の少女が自己紹介をした。


リリカ「同じくプリズムリバー楽団員で三女のリリカだよ。よろしくねー!」


三姉妹が自己紹介を終えたそのとき、霊夢と敏久がやってきた。


霊夢「叫び声がしたのはこの辺かしら?……あら、にっしーじゃない。久しぶりね」

敏久「よう西村。久しぶりだな!」

(西)「霊夢さん、敏くん!」

響子「この男の人は早苗の知り合い?」


不思議に思った響子が尋ねる。


(西)「そうだよ。ね、敏くん?」


敏久「ああ、かくかくしかじかというわけだ。よろしくな」


敏久の説明に響子も納得したようだ。


響子「なるほど、それじゃあ私たちのことも十分知ってるのね!こちらこそよろしく」

リリカ「ところでみんなはこれから何か予定あるの?」


リリカが皆に訊いた。


神奈子「いや、特に何もないけど?」

霊夢「私たちも特には…」

ミスティア「私たちもないわ」


もしよければの話しだけど、と前置きしてルナサが言った。


ルナサ「今日は夜も遅いから私たちの屋敷に泊まったらどう?歓待するわよ」

リリカ「いろいろと話しも聞きたいしねー」

メルラン「うんうん。そしてあわよくば寝込みを襲ってあーんなことやこーんなこと……ごめんなさい、冗談です」


(西)がメルランを睨むと彼女は大人しくなった。


諏訪子「それならお邪魔させてもらおうかな」

(東)「ええ。…メルランさんに襲われないか心配ですけど」

メルラン「だから冗談だってば!本気にしないで!?」




ーーー何はともあれ、一同は霧の湖の湖畔に建つプリズムリバー邸へ向かったのだった。 
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