ハッピークローバー
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第十七話 合コンが終わってその七
「それどころか出て行った奥さんが爪切りまで持って行っただった」
「えっ、爪切り!?」
一華は父のその言葉に思わず眉を顰めさせて聞き返した。そうしつつキッチンでコップに水を入れて飲んでいる。もう三杯目である。
「爪切りって」
「それまで世話になっていたんだ」
「そんなものまで」
「しかしな」
それでもとだ、父も眉を顰めさせて話した。
「そんなことまで恩に思わずな」
「むしろ持って行ったなんて」
「怨みがましく言ってな」
そうしてというのだ。
「自分の甲斐性なしもな」
「自分から言ったのね」
「器の小ささもな」
「爪切りまで言うなんて相当器が小さいわね」
一華もこのことはわかった。
「支えてもらっても恩に思わずかえって怨みに思って」
「甲斐性なしでだ」
「器が小さい人ね」
「しかもそれを平気で人に言ったんだ」
「余計に酷いわね」
「そこまで無神経でしかもものの道理がわかっていなかった」
「どうにもならない人ね」
一華は眉を顰めさせたまま言った。
「それはまた」
「だからそれから転落してだ」
支えてくれる人が去ってというのだ。
「どんな人から世話になってもな」
「そんな風でなの」
「遂に皆から見捨てられた」
「しかも働いてないのよね」
「ならわかるな」
「皆から見捨てられたニートってね」
その末路はというのだ。
「一つしかないわよ」
「野垂れ死にだな」
「そうなったの?」
「いや、一回ホームレスになって助けてもらって」
「それでも更正しなくて」
「それでな」
そのうえでというのだ。
「見捨てられてな」
「野垂れ死に?」
「行方不明だ」
「そうなってるの」
「ただ死んでいてもな」
父は眉を顰めさせたまま言った。
「いいがな」
「誰にも見放されたから」
「ああ、何も出来ないのに自分がこの世で一番偉いと思っていたんだ」
「奥さんに逃げられても?」
「それでもな」
「何でそう思えるのか不思議ね」
「ずっと親に甘やかされていてな」
それでというのだ。
「そうなったんだ」
「そうなの」
「親戚のお葬式で家族でもないのに自分から上座に上がってたしな」
「それもよくないわよね」
「普通の人がするか」
父は吐き捨てる様に言った。
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