ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね(お試し版)
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十二話「ようやくわかった現在地」
「ふ~む、そう言えばそうでしたね」
一転して窮地に陥った俺を救ったのは、俺の言葉を師匠が理解できないことだった。俺はジェスチャーで苦しい言い訳をしようとしたのだが、どうやらアバンには伝わらなかったようで、それを見て問いつめても納得できる答えが出てくるのは難しいとあちらも思ってくれたらしい。
「この件についての話はもう少し後にしますか」
その言葉が師匠から引き出せたことで、俺は密かに胸をなで下ろす。無論、今度こそ油断してはいけないのだが。
(この世界の言語って日本語だからなぁ)
アバンの持っていた本をチラ見してようやく思い出したのだが、本に使われていたのが平仮名とカタカナと漢字の組み合わせだったのだ。
(つまり筆談なら意思疎通可能と言う訳で)
これに気づかれると、さっきの窮地が再び始まることとなる。
(本当にどうしようなぁ)
修行、その座学に至れば、このファンタジー世界っぽいのに言語は日本語という事態にはすぐ直面する。
(信頼関係を構築するなら、打ち明けるべきなんだろうけれど)
言葉が通じないからという理由で今後誤魔化せなくなるというデメリットをどうするかという問題が残る。後、さっきのポカをフォローしなくてはいけないという問題も。
「では、メラゴースト君はひとまず契約した呪文が使えるようになっているか確認しなさい」
ただ、師匠の次の一言は俺の思惑を吹き飛ばすには充分だった。
「魔法の儀式で契約すれば誰でも呪文が使えるわけではない」
見合った精神力が必要と言うのもあるが、実力や呪文への理解その他もろもろが条件をクリアしないと呪文を使うことは出来ないのだそうだ。
(そう言えば原作の主人公も契約だけならほとんどの呪文と契約できていたんだっけ)
にもかかわらず、最初はメラすらまともに使えなかった筈だ。つまり、契約に成功しても実力が見合わないなら、いつか使えるようになるかもしれないよってだけのことだというのだ。
(俺って、俺って……)
故に浮かれてポカをやらかしたあげく、現状では契約した呪文もほとんど使えない訳だ。俺は再び凹み、立ち直るのに暫しの時間を要した。
「ところで先生、ランタンを用意するって言ってましたが、それはどうするんスか? 村も町もこの辺りにはないんでしょ?」
師匠がポップに話しかけられたのは、そんなさ中のこと。
「それはそうなんですが。ここはベンガーナの南東。それもベンガーナからはもうずいぶん離れてしまっていますし、このまま南下を続ければ海へ至ります。ので、海沿いにあるであろう村を当たろうかと思ってますよ」
師匠の零した情報を耳が拾ったのは、落ち込んでいたとはいえ、俺が望んでいた現在地についての情報だったからだ。
(ベンガーナの南東……大陸を日本の本州に置き換えるとベンガーナは大阪だから、今いるのは三重か和歌山に該当する辺りかな)
もっとも、俺の記憶が確かなら、更に南には大陸が一つあったはず。
(その大陸にあるのが確か、パプニカ。原作主人公がアバンに会ったのがパプニカからの依頼だった気がするから)
二人はそのパプニカに向かっている途中、ということだろうか。
(と言うことは、魔王の意思とやらが影響をもたらし始めるまでもう時間ってあんまり残ってないんじゃ)
永く見ても数か月後と言う状況に俺は愕然とするのだった。
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