皇帝を見て
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第三章
「それで」
「面白そうだな」
客達の中心にいる見事な龍を思わせる髭の男が応えた、中肉中背だがその髭のせいで随分と立派に見える。
「それじゃあ行ってみるか」
「劉さんはそう思うかい?」
「ああ、中原を治める人がどんな人かな」
劉と呼ばれた男は飲みながら笑って話した。
「見てみたくなった」
「それじゃあ行くかい?」
「わしはな」
こう答えた。
「そうするか」
「劉さんがそう言うならな」
「俺も行くか」
「俺もだ」
「俺も行くぞ」
彼が言うとだった。
酒場の客達は誰もがとなった、そうしてだった。
彼等は勘定を払うと店を出た、そして道にぞろぞろと並び行列を見た。
行列は長く物々しかった、見事に武装した兵達が列を作り立派な車が連なっていた。その車の中でだった。
一際大きなそして豪華な車を見た、皆その車そして開かれた窓の中にいる黒い礼装の男を見て語った。
「あれが皇帝だな」
「この国を治める皇帝だな」
「秦の皇帝だな」
「そうなんだな」
「そうだな、あの人がか」
劉と呼ばれた男も言った。
「皇帝なんだな」
「やっぱり違うな」
「凄い威厳だな」
「立派なもんだ」
「俺達とは何も鴨が違うな」
「本当にそうだな」
「全くだ、男だったらな」
彼は微笑んで嘆息しつつ言った。
「ああならないとな」
「全くだな」
「あそこまで立派にならないとな」
「やっぱり駄目だな」
「本当にな」
「そう思うぜ、まあわしだったらな」
彼は今度は大口を開いて笑って語った。
「相当なものになるな」
「劉さんだったらなれるな」
「何かそんな気がするんだよな」
「見ていると自然と好きになって」
「劉さんの為ならって思ってな」
「何かとしたくなるしな」
「劉さんだったらな」
周りはその彼に笑顔で応えた。
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