軽蔑
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第二章
「歯が折れたらどうするのよ」
「大学で後輩に聞いたんだ」
「後輩?」
「お前が高校一年の時のクラスメイトだった葉山にな」
「葉山?あの大人しい子ね」
言われて思い出した。
「あの子お兄ちゃんと同じ大学だったの」
「同じサークルに来たんだ、あいつから聞いたぞ」
「聞いたって何をよ」
「お前が高校一年の時にしたことをな」
「一年の時って」
「お前が瀬能って子にしたことだ」
「あのデブ?」
美佳は彼の名字を聞いてこう言った。
「あのデブがどうかしたのよ」
「お前あの子に散々意地悪していじめていたらしいな」
「いじめてないわよ、あんな勘違いのデブの馬鹿には何をしてもいいでしょ」
「何で何をしてもいいんだ」
「どうしようもない奴だからよ」
それ故にというのだ。
「だからよ」
「そう思ったからか」
「そうよ、だからね」
美佳は兄に言い返した。
「言ってやったのよ」
「そして意地悪をしてか」
「どうしようもない屑何してもいいでしょ」
怒った顔でこうも言った。
「社会のダニなんだから」
「ダニか」
「そうよ、ダニよあんな奴」
高校時代思っていたことをそのまま言った。
「頭悪い運動神経ゼロ、デブで勘違いばかりして無神経で変に恰好つけて」
「そんな奴だとか」
「いじめてもいいじゃない」
「よくわかった」
兄は妹の言葉をここまで聞いて言った。
「お前の考えは」
「わかってくれた?」
「そうした奴ならいじめてもいいんだな」
「何してもね、殴らなかっただけましてでしょ」
全くというのだ。
「もっとも男子から孤立させる様にもしたし陰口も言ったけれどね」
「言いたいことはもうないな」
美佳を怒った顔で見つつ言ってきた。
「それで」
「それで?」
「お前がやったことは暴力だ」
こう妹に告げた。
「殴っても蹴ってもいなくてもな」
「暴力?」
「言葉のな、それは殴ったり蹴ったりするのと同じでだ」
「どう同じなのよ」
「人の心を傷付けるからだ」
「だからあんな奴何してもいいでしょ」
美佳の言うことは変わらなかった。
「別に」
「屑だからか」
「そう、何してもね」
「嫌いな相手なら何をしてもいいならだ」
ここでだ、兄は。
再び妹の顔を右の拳で殴った、そして仰向けに倒れた彼女に馬乗りになり。
今度は両手で何度も何度も殴り続けた、そうしつつ彼女に言った。
「俺はお前の行動が嫌いだ、だから殴る」
「ちょ、止めてお兄ちゃん」
顔を散々に殴られつつだ、美佳は兄に言った。顔に何度も何度も激痛が来ることを感じながら。
「何でこんなことするのよ」
「これが暴力だ、暴力の痛みを思い知れ」
兄は妹をひたすら殴った、見ればそこに来た両親も彼を止めず自分を厳しい顔で見ているだけだった。
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