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FAREWELL

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第一章

             FAREWELL
 さようなら、この言葉を何度言っただろうか。
 また明日という挨拶が殆どだった、それで私はこの言葉を何でもなく使ってきた。知り合いや親戚の人達が亡くなった時もだった。友人も。
 けれど今は違っていた、高校と大学を卒業して就職してから付き合ってきた彼と今夜のバーで別れ話をしている、浮気とか喧嘩じゃなくて最近疎遠になってきたところで彼が転勤で北欧の何処かの国に行くことになった。
 お互いお酒を注文したけれど飲まないで向かい合って話をしていた、彼は私にこう言った。
「最近忙しかったね」
「お互いね、それで会わなくなってね」
 私も応えた、冷めていると自分でも思いながら。
「それで、なのね」
「フィンランドに行くことになったからね」
「何年も帰って来ないのね」
「十年って言われたよ」
 彼は私に笑って答えた。
「待てないよね」
「長いわよ、十年は」
 私は彼ににこりともせずに答えた。
「また長いわね」
「何でも向こうの支社長で給料もずっと上がってね、お家もかなりいいものを用意してくれているそうなんだ」
「栄転かしら」
「少なくとも出世してお給料もね」
「じゃあいいかしら」
「うん、北欧は一度旅行に行ったけれど嫌いじゃないし」
「寒いっていうわね」
 私は北欧ということから彼に言った。 
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