飲んだことがきっかけで
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第一章
飲んだことがきっかけで
工藤リンの母親は日本人で父親はアメリカ人である、父親譲りの赤髪をロングにしていて母親の黒いはっきりとした切れ長の目とだ。
形のいい顎と鼻、白い肌と一六〇程の背で見事なスタイルをしている。だが男の話はどういう訳かなく。
大学を出て働いて二十代後半になっても誰とも交際したことがない、友人達はそんな彼女に言うのだった。
「美人過ぎるから?」
「だからかしらね」
「リンに男の人に縁がないのは」
「モデルさんか女優さん並に美人でね」
「スタイルも抜群だしね」
「それにリン自身声かけないし」
「それでかしら。キスもまだなのよ」
リンは友人達に話した、今は居酒屋でパーティーをしてそこで飲んで食べながら話をしているのだ。
「私はね」
「それは逆に凄いわよ」
「二十七でそれって」
「誰だってベッド位はね」
「もう経験している年齢なのに」
「そうよね、もう結婚も考える年齢だし」
リンはグラスにある赤ワインを飲みつつ言った。
「交際もね」
「考えないとね」
「冗談抜きにね」
「それで結婚もよ」
「そろそろね」
「そうよね」
大学の頃からの友人達に言った、だがこのパーティーの時からも暫くは縁がなかった。だがある日のことだった。
仕事が終わって入社二年目の後輩の遠山玄徳短い黒髪で卵型の顔で丸い目が目立つ童顔と一七五の痩せた身体の彼にだった。
仕事が遅くなったのでこう言った。
「ご飯一緒に食べない?」
「先輩とですか」
「ええ、どうかしら」
「いいんですか」
「丁度前から行きたかったお店があったのよ」
リンは遠山に笑顔で話した。
「食べ放題飲み放題でね、ただ食べ放題飲み放題が二人からで」
「入られなかったんですか」
「けれど今は二人でしょ」
遠山を見て言った。
「だからね」
「それで、ですか」
「どうかしら」
「先輩がそう言われるなら」
遠山も頷いた、そして二人でその店に入ると。
料理も酒も早く来てしかも味もそれなりだったので二人共酒も食事も進んだ、しかも二人で大仕事をやり遂げたので満足もしていて。
飲んで食べた、リンは酒は強かったが今回はとりわけ飲んでだった。
店を出る時にはふらふらになっていた、それは遠山も同じで。
その状態でだ、彼に尋ねた。
「お家近く?」
「いえ、ちょっと離れてます」
「じゃあいい場所あるからそこに泊まって」
「何処ですか、そこ」
「カプセルホテルよ、そこまで酔ってたら帰られないでしょ」
「家までですか」
「だからね」
真っ赤になった顔で話した。
「今日はね」
「カプセルホテルですか」
「そこに泊まりなさい、私はお部屋近くだから」
「帰られますか」
「歩いてでもね」
「あの、そこまで送ります。僕はタクシーでも帰られる場所なんで」
遠山から言ってきた。
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