イベリス
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第四十五話 考えは変わるものその十
「考えてみれば」
「皆変わるのね」
「少しずつな」
「万物は流転するとか?」
「その通りだな」
「そうなのね」
「だから咲もな」
父として娘に話した。
「どんどんな」
「変わっていくのね」
「そうだな、しかしな」
「しかし?」
「どうせ変わるなら」
それならというのだ。
「よくな」
「いい方向にってことね」
「変わらないとな」
こうも言うのだった。
「悪い方向じゃなくてな」
「変わるにしてもそうね」
「そうだ、まあ人間も何でもどう変わるかはその都度選択肢があるからな」
「それ次第なのね」
「選挙だってそうだぞ」
父は娘に政治の話もした。
「おかしな人を選ぶとな」
「おかしくなるのね」
「そうなんだ、日本もやったしな」
「前の政権交代ね」
「あれは絶対に駄目だと思ってあの政党には投票しなかったんだがな」
「お父さんはそうだったの」
「お母さんもな、けれど他の人達は違ってな」
有権者の多くはそうしたというのだ。
「あの政党を選んでだ」
「ああなったのね」
「大変なことになったからな、何もかもが駄目だった」
「震災の時は特によね」
「ああ、最悪と言っても足りなかった」
父は焼酎を飲みながら苦い顔になった、それは思い出したくないものを思い出してそうなったものだった。
「今思い出してもな」
「それで責任取ってないですね」
「他の人のそれには五月蠅いがな」
「自分に甘く他人に厳しくね」
「一番じゃ駄目ですかもあったな」
「それは震災じゃなかったわね」
「けれどな」
それでもというのだ。
「あれも最低だったな」
「言った人も自分に甘いわよね」
「人間ああなったら駄目だな」
父はこうまで言った。
「本当に」
「ああして自分に甘くて他人に厳しくて」
「言うだけで何もしないな」
「あんな人になったら駄目よね」
「それでそんな人達を選ぶとな」
選挙でというのだ。
「悪く変わるんだ」
「変わるにしても」
「実際日本は大変なことになったな」
「本当にね」
咲はその頃は子供だった、だが今インターネット等で聞いて読んでいることから乳にどうかという顔で答えた。
「もう潰れるのかって」
「そんな風になっていたんだ」
「あんまりにも酷くて」
「宮崎なんかも酷かった」
「肉牛のことね」
「何もしなくて牛を殺処分せざるを得なくなったんだが」
苦いどころか怒っての言葉だった。
「その時の大臣は早く殺しておけばよかっただからな」
「何もしないで牛をそうしろって言ったのよね」
「ああ、畜産家の人達が丹念に育てた牛をな」
「人間じゃないわね」
「ああいう奴を人間失格って言うんだ」
父は娘に怒った顔と声で話した。
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