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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百十五話 鷲塚、小次郎を気遣うのことその九

「まあ刹那をどうにかしないといけないのも一つの問題だな」
「本当にね」
 孫権は頷きだ。そうしてだった。今の刺客のことについてまた言った。
「紫鏡は間違いなく来るわね」
「雪蓮姉様ね」
 孫尚香も前の騒動から述べる。
「絶対に狙って来るわね」
「ええ。それを何とか防がないと」
 こう言うとだった。周泰と黄蓋がだ。
 それぞれ孫権と孫尚香の傍に寄り添って来て言うのだった。
「蓮華様は私が御護りします」
「小蓮様、わしでよいだろうか」
「ええ、有り難う」
「祭がいてくれたら安心できるわ」
 姉妹でそれぞれ言う。
「後は姉様だけれど」
「雪蓮姉様の護衛は?」
「甘寧ちゃんとあのおっぱいのお姉ちゃんがおるやろ」
 あかりがすぐに述べた。
「孫策さん自身腕立つしそんなに心配いらん思うけれどな」
「万が一ということがあります」
 呂蒙は真剣な顔で述べた。
「何かあってはなりません」
「うちもやらせてもらうで」
 あかりもだ。真剣な顔で呂蒙の言葉に応える。
「あんた等は友達や。友達の為には一肌も二肌も脱ぐね」
「わし等はいい友を多い得たのう」
 黄蓋はあかりのその言葉を受けて満足した微笑みで言った。
「多少風変わりじゃがな」
「ははは、まあ宜しくな」
「やるからには頑張らせてもらうからな」
 漂と十三が笑顔で応えてだった。そうしてだ。
 彼等は決意を新たにしていた。そのうえで刺客を防ごうともしていた。仲間達が一つになり。
 それは小次郎達も同じだった。鷲塚、それに響がだった。
 小次郎が孫策の天幕の入り口に座って寝ているのを見てだ。こう声をかけたのである。もう真夜中になっており空には白い満月がある。小次郎の新撰組の服が月の灯りの中に浮かび上がっている。
 鷲塚がだ。こう声をかけたのである。
「孫策殿の護衛か」
「あの男は必ず来る」
 小次郎は顔を上げて鷲塚の言葉に応える。
「間違いなくだ」
「そうだな。あの男は執念深い」
「そのことはわかっているな」
「よくな」
 知っているとだ。鷲塚も返す。
「あの男ならば来る」
「だからこうして待っている。それにだ」
「それにですね」
「孫策殿をやらせはしない」
 小次郎は今度は響に対して述べた。
「それ故にもここにいる」
「休んではいるか」
「うむ、こうしてだ」
 言いながらだ。毛布を出してだ。
 それで身体をくるみだ。二人に話すのだった。
「休んでいる」
「わかった。しかしそれでもだ」
「無理はするなというのだな」
「そうすることだ。いいな」
 こうした話をしてだった。小次郎は孫策の天幕の前で護衛の役も務めているのだった。あの男が来るのを待っていたのである。
 刹那が闇の中でだ。于吉達に話していた。
「今のところは順調だ」
「順調なのですね」
「潜伏できているか」
「そうだ。できている」
 こうだ。彼は于吉と左慈に述べる。
「何時仕掛けても問題はない」
「それにですね」
「あの男なら何があってもだな」
「所詮は捨て駒だ」
 刹那は実に冷酷に述べた。
「どうなろうと知ったことではない」
「そうですね。所詮はですね」
「それ以外には使い方がない」
 于吉も左慈もだ。刹那の話に対して率直に返した。
「成功しても失敗してもいい」
「まさにそういうことだな」
「所詮はその程度だ」
 また言う刹那だった。
「生きている頃からそうだったしな」
「我々の崇高な目的も理解できていませんし」
「それ程の頭もないしな」
「そうした方の使い道は本当に一つしかありません」
「捨て駒だ」
 こう素っ気無く述べてだった。彼等は刹那の策を見ていた。
 その彼にだ。ゲーニッツが述べてきた。
「ただ。気になることがあります」
「あの男か」
「はい、出てきました」
 そうなったというのだ。
「どうされますか、一体」
「どうということはない」
 刹那はゲーニッツの言葉にもやはり素っ気無い。
「滅ぼすだけだ」
「この世界自体と同じくですね」
「そうだ。滅ぼすだけだ」
「かなりの強敵でもですね」
「俺の目的は決まっている」
 例え何者が立ちはだかってもだというのだ。
「この世界に常世を実現させるだけだ」
「常世。実に素晴らしい世界です」
「邪な死者の世界とはな」
 于吉も左慈もそうした世界については笑顔で応える。
「では今回はお任せしました」
「どうなるか見せてもらう」
「そうするといい」
 こう話してだった。彼等は状況を見守るのだった。刹那の仕掛ける策のそれを。


第百十五話   完


                            2011・10・10 
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