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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百十五話 鷲塚、小次郎を気遣うのことその六

「そうだとすればだ」
「あの男もまた」
「そうだ。甦っていても不思議ではない」
「確かに。常世の力を使えばその程度のことはだ」
「容易だ」
 小次郎はまた言う。
「刺客としてまた使うことも」
「そうだな。今まで何故そのことに気付かなかった」
「危険だ」
 小次郎はその整った顔をさらに強張らせて述べた。
「このままでは」
「うむ、すぐに皆に知らせよう」
「既に刺客が入り込んでいる」
 強張った顔でだ。小次郎は言っていく。
「あの男だけとは限らない」
「結界を破りそうしたというのか」
「結界は術に関するものだけだ」
「ではか」
「常世に対する結界は張っていなかった筈だ」
 それが問題だったというのだ。それでだ。
 鷲塚と小次郎はすぐに劉備達にそのことを報告した。それを受けてだ。
 劉備はすぐに兵達を含めて警戒態勢にさせた。そのうえで刺客を見つけ出そうというのだ。
 だが、だった。彼等は容易に見つからない。その陣中でだ。
 月がだ。憂いのある顔でだ。こう守矢と楓に告げていた。
「刹那を何とかしなければならないわね」
「それはその通りだ」
 まずは守矢が妹に答える。
「だがそれでもだ」
「それでも、なのね」
「月、命を粗末にするな」
 守矢は鋭い顔で妹に告げる。
「御前はこの世界では死んではならない」
「僕もそう思うよ」
 楓もだ。姉を気遣う顔で見てだ。
 そのうえでだ。彼女に告げたのである。
「姉さんは。この世界では絶対に」
「けれど封印を施さなければ」
 どうなるかとだ。月が言うのはこのことだった。
「この世界自体が」
「御前一人が背負うものではない」
 守矢はその月に話す。
「決してだ」
「ではどうすればいいの?」
「御前は一人ではない」
 守矢は妹にさらに言う。
「私がいる」
「そして僕も」
「私達以外にもいる。御前一人が背負わなくてもいいのだ」
「では私は」
「戦うことはいい」
 それはいいとだ。守矢は言う。
 それと共にだった。妹に言うことは。
「だが命は粗末にするな」
「では。あの男は」
「私達全ての力で封じる」
 そうしてだ。月の命を救うというのだ。
「御前一人では御前が犠牲になる」
「けれど僕達全員の力ならどうかな」
 楓もだ。妹に話す。
「そうなる」
「少し考えさせて」
 月は即答しなかった。それでもだった。 
 兄弟の言葉を受けてだ。考えを変えていっていた。
 その彼女にだ。楓も言うのだった。
「姉さんは昔からだったね」
「昔から」
「そう。優しくて自分のことをいつも犠牲にして」
 それが月だった。彼女は幼い頃からそうした心根だったのだ。
「けれどそこでね」
「そこで?」
「姉さんのことを気遣う人のことも覚えておいて」
 そうして欲しいというのである。
「だから。自分一人で背負わないで欲しいんだ」
「それでなんだ」
「そう。姉さんが犠牲にならずに済む方法があるから」
 だからこの世界ではだというのだ。
 
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