ハッピークローバー

「あの人は」
「無茶苦茶なお話あるからね」
「人豚とかね」　
　達川は青くなったままの顔で答えた。
「あの人は」
「それを見たらね」　
　それならというのだ。
「物凄いけれど劉邦だって」
「旦那さんもだね」
「浮気者で酒好きの遊び人で」
「凄いよね」
「もうやりたい放題だったじゃない」　
　このことは皇帝になってからもだった。
「それじゃあね」
「恐妻家といっても」
「それでもね」
「実は旦那さんは」
「好き勝手やってるわ、ヤンデレだって」
　富美子はこちらの場合も話した。
「男の人にもいるでしょ」
「いるな」
　成海もそれはと答えた。
「そうした奴って」
「ストーカーだってね」
「いるよな」
「だから世話女房がいれば」
「世話亭主だってか」
「いてね、成海っち自身がね」
　その彼自身に告げた。
「そうなのよ」
「俺がか」
「そう、それでかな恵はね」
　その成海の彼女であるならというのだ。
「大事にしないとね」
「大事にしてるけれど」
「もっとよ」
　富美子はかな恵に強い声で答えた。
「だからお酒もね」
「倒れるまではなのね」
「飲まないの、いいわね」
「そうなのね」
「そうよ、挙句肝臓壊して」
　そうしてというのだ。
「身体壊したらね」
「成海っちに余計に迷惑かけるわね」
「だから気をつけるの、いいわね」
「そうするわね、じゃあ今は」
「これで終わりにするのよ」
「そうするわ」
　かな恵は確かな声で答えた。
「もう飲まないな」
「あと一杯と思ってその一杯をね」
「我慢するのね」
「ええ、ストロングの三五〇だと五缶で」
　そこまででというのだ。
「止めてそれ以上はね」
「飲まないのね」
「かな恵もう一缶飲むでしょ」
「六缶ってビールでも一セットだしね」
「そうよね、けれどその一缶をね」
　それをというのだ。
「あえてよ」
「止めるの」
「もう五缶でべろんべろんになってるし」　
　かな恵のいつもを見ての言葉だ。
「だからね」
「その五つで止めて」
「自分で歩ける位でね」
「帰るのね」
「そうするの、成海っちだてね」　
　彼にしてもというのだ。
「かな恵が歩けたら楽だしね」
「まあそれはな」
　成海も言ってきた。