ハワイ帰り
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第一章
ハワイ帰り
吉田早苗は夏にハワイに旅行に行った、そうして帰ってきたが。
それまで黒髪ロングで楚々とした雰囲気で穏やかな表情にシックな服装とナチュラルメイクのお嬢様といった感じであったのが。
髪の毛はアロハ、夏用メイクに赤いレイバン、アロハシャツにデニムの半ズボン姿で帰ってきたので。
出迎えた大学の友人達はまずはこう言った。
「あの、誰?」
「早苗?」
「そうよ、私よ」
声は本人のものだった、ただし穏やか口調が根明なものになっている。
「変わったでしょ」
「いや、変わったどころか」
「もう別人よ」
友人達は宇宙人を見る様な目で応えた。
「その域よ」
「本当に誰よ」
「ハワイ最高ね」
早苗はこうも言った。
「そこで私は生まれ変わったのよ」
「生まれ変わったじゃないでしょ」
「別人になったじゃない」
「あんた誰さんよ」
「そう言いたいわ」
「もうね、ハワイの全てがよくて」
レイバンをかけたまま話した。
「ファッションもね」
「それにしたの」
「今の別人バージョンに」
「ええ、これからはこのスタイルでいくわ」
早苗は笑って言った、そして。
ラップの様なポーズを付けてだ、友人達にこうも言った。
「そこんとこ宜しくね」
「まさかこうなるなんて」
「ハワイに行っただけで」
友人達は啞然とするばかりだった、そして。
大学に来た早苗を見て誰もが驚いた。
「誰あのアフロの派手な人」
「レイバンにアロハシャツの」
「誰なんだ」
誰もが驚いた、そして家でもだった。
早苗の両親はアパート暮らしの娘からのメールを受けて言った。
「早苗はどうしたんだ」
「別人になったわね」
「ハワイに行ってな」
「旅行に行くこと自体はいいことだけれど」
「何でああなったんだ」
「ハワイで何があったのよ」
驚くばかりであった、だが本人は。
これまで日本茶派だったのがトロピカルドリンクを好んで飲む様になり甘いものも和菓子からアイスクリームになり。
ハワイアンな食事を好む様になった、彼女は友人達に話した。
「いやあ、パンケーキに生クリームたっぷりで」
「パイナップルも食べてよね」
「ハンバーガーにも入れて」
「ハンバーガーはベーコンもどっさりよ」
自分の部屋で友人達に料理を振る舞いながら話した。
「それがいいのよ」
「ハワイ風ね」
「そういうのが」
「これがまた美味しいのよ、ただバイト先でね」
そちらの話もした。
「店長さんも君誰だったわ」
「だってそこまで変わったら」
「そう言われるわよ」
「仕草も変わったし」
「昔とね」
「これが本当の私だったのよ」
部屋着もアロハシャツだ、それで陽気に言うのだった。
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