血はつながってなくても遺産は

　　　　　　　　　　　　　　　　血はつながってなくても遺産は　
　松田家に二人の娘がいる、長女の理穂子は両親の実の娘だが次女の理美は母の理香子の妹夫婦の娘で両親が彼女が生まれてすぐに交通事故で亡くなったので夫婦で話し合って養女として引き取って育てることになり今に至る。
　姉は黒髪を長く伸ばし切れ長の目で細面で一六五程の背ですらりとしていて母親譲りの外見だ。姉はやや丸顔で黒髪は短い。目も丸く背は一五六程でやや肉付きがいい。
「やっぱり姉妹でもね」
「血縁として従姉妹だからっていうのね」
「私とお姉ちゃん似てないのね」
「あんたはお母さん似なのよ」
　実のとだ。理香子は理美に話した。
「だからね」
「この外見なのね」
「それで理穂子もお母さん似でね」
「それぞれのお母さんに似てるのね」
「産みのね、けれどあんたも理穂子も同じよ」　
　理香子は理美にこうも言った。
「私とお父さんの娘よ」
「血はつながってなくても」
「そう、ずっと一緒に暮らしてきてるから」　
　その為にというのだ。
「家族でね」
「娘なのね」
「そうよ」
　理美に笑顔で話した、こう言っていつも二人の娘を分け隔てなく育てていた。そして理穂子も一歳下の理美と仲がよかった。
　だが理美が大学を卒業し就職してすぐにことがあった。
　一家の大黒柱である父の憲吾が仕事中の事故で急死したのだ、それで保険金と労災それに遺産が入ることになったのだが。
　その話をした弁護士が家族に言ってきたのだ。
「次女さんは養女ですね」
「ええ、そうですが」　
　理穂子は弁護士にその通りだと答えた。
「それが何か」
「この場合血がつながっていないので」
　その為にというのだ。
「財産相続がどうなるか」
「下の娘には分ける必要がないのですか」
「そうもなりますが」
「私は別に」　
　理美は話を聞いてそれならと述べた。
「お金は」
「いいの？」
「別に。仕事してるしね」
「それ言ったらお姉ちゃんもでしょ」
　理香子は理美に言った。
「同じじゃない」
「けれど私がお母さんと血がつながっていないのは事実でしょ、亡くなったお父さんともお姉ちゃんともね」
「けれど娘でしょ」
「血で言ったらお母さんから見たら姪だしお姉ちゃんから見たら従妹だし」
　そうした間柄だからだというのだ。
「別にね」
「分けられなくていいの」
「そうだけれど」
「いや、あんた妹でうちの娘でしょ」
　ここで強い声で言ったのは長女の理穂子だった。
「だからあんたもちゃんとよ」
「保険金とか労災をなの」
「遺産もよ、全部貰っておくのよ」
「何でなの？血がつながってないのに」
「お母さんが言ってるでしょ、ずっと一緒に暮らしていたら家族だって」　
　こう妹に言うのだった。
「だからよ」
「それでなの」
「そう、うちの娘だから」
「遺産とか貰っていいの」
「というかこうしたことはちゃんとしないと」
　姉は妹にさらに言った。
「後々揉めたりしこりになるからね」
「ちゃんとするの」
「よくあるお話でしょ、お金のことで揉めると本当に尾を引くから」
　そうなるからだというのだ。