おっちょこちょいのかよちゃん
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198 少女は生け捕りに
前書き
《前回》
赤軍の長・重信房子、そして戦争主義の世界の長・レーニンと対面したかよ子だったが、レーニンは杉山と同体化した事、そして彼らはりえの杯を奪う事を優先している事と知ると、かよ子はりえに早急に連絡した。そしてりえの方には九尾の狐に変化する女・妲己が襲撃する。迎撃するりえやあり達だったが、その場には房子とレーニン、そしてレーニンと同体化した杉山が現れた!!
りえはその場に現れた男・レーニンの声が杉山に変わった事に驚いた。
「あんたはレーニンって言ってたけど、杉山なのっ!?」
「私はレーニンだ。偽物の道具のせいで自分の身で動けぬようになってしまったので代わりの身体を取り込んだのだ。そうしたらその杉山さとしという少年が私に身体を提供してくれたのだ」
声がレーニンのものに戻った。
「つまり、こいつといれば俺は大将になれるんだよ」
レーニンの声がまた杉山に変化する。
「どこが大将よっ!裏切るなんて臆病者じゃないっ!」
りえは杉山の意見を否定した。
「あんたそのものをぶっとばすわっ!」
りえの怒りが爆発する。
「杉山君、君の優先する事は赤軍や敵の世界の人を倒す事でしょ?大将になる事は今はやってる場合じゃないはずよ」
ありが神を召喚した。
「貴様の首を討ち取るぞ!嘗ての敵、劉邦よ、この者達と共闘しよう!」
「おう!」
項羽と劉邦も協力し合う仲となる。
「できるのかしら?」
房子が拳銃を発砲した。
「何、動けぬ!?」
項羽も、劉邦も、彼等に従う兵達もその場で硬直した。
(あの女、前に名古屋で会った時は剣を使ってたけど、これがあの女の能力なの!?)
ありはアイヌラックルに攻撃を指示した。
「アイヌラックル、この女も、狐も、片付けて!」
「了解」
「項羽、劉邦、怯むな!」
悠一のテクンカネが光る。彼等の硬直が解けた。
「恩に着る、煮雪悠一!」
項羽も劉邦が再び動き出す。そしてアイヌラックルが炎と雷の攻撃を狐と房子に攻撃する。
「ふうん・・・、私も狙うのね」
房子は余裕そうな表情だった。
「どういう意味よ?」
「お姉さん、俺達も攻撃します!」
鎌山と立家もそれぞれの鎌と爪を使って攻撃する。しかし、赤軍の女は何ともなかった。
(健ちゃんの能力を複製した機械ね・・・)
ありは挑発を試す。
「あんた、名古屋で会った時は剣使ってたけど自分が持ってる能力ないんじゃないの?」
「は?」
房子は笑った。
「シャクシャイン、来るんじゃないかしら?」
「ああ、間違いない!」
阿弖流為と母禮も先手を狙った。
「私も行きます!」
鈴音が錫杖で房子を氷漬けにしようとした。
「そんなのが聞くかしら・・・」
どの攻撃も効いていないようだった。
「効いて・・・ない!?」
そしてレーニンから恐ろしい気配を感じた。
「う・・・」
りえが怖じ気づき始めた。失神しそうになる。
「お前、どうしてそんなに俺を追いかけるんだ?」
レーニンが杉山の声で喋った。
「それはアンタが逃げたからでしょっ・・・!」
りえは必死に抗議した。
「安心しろ。俺はこうして戻って来てやったんだ」
「あんた、上から目線で喋るんじゃないよ!」
みゆきが怒ってブーメランをレーニン、いや、杉山に向かって投げつけた。しかし、九尾の狐の火炎放射で押し返されてしまう。みゆきは狐に睨まれ、気絶する。
「もう私も変化する必要なさそうね」
狐は女性の姿に戻った。しかし、雷撃が女性を襲う。
「あ、ああっ!」
「させへんよ!」
立家が爪から電撃を浴びせた。
「邪魔者め、消えて貰おうか!」
「妲己、私も協力するわ」
房子は短刀を出して立家に向けて攻撃する。
「危ない!」
虞美人が赤い花を出して結界を張る。
「女、いい加減にせよ!杯はどう足掻こうが決して渡さん!」
劉邦が鉾を振るう。暴風が起き、妲己や房子を狙う。
「この風は!?」
「この風は普通の風起こしではないぞ!貴様らの邪気も吹き飛ばし、成敗させる風だ!」
妲己や房子のみではない。レーニンにも効いているようだった。
「ほう、いい攻撃だな。しかし、それらの攻撃も水の泡だ」
レーニンが異能の能力を解き放つ。劉邦の風がかき消された。
「重信房子、妲己、とどめを刺せ」
「了解」
房子が拳銃を発砲する。周りが爆発に呑まれていく。
「よし!」
妲己が再び九尾の狐に変化してりえをまた襲う。りえは威圧の能力を受けて動けなくなった。
「させんぞ!」
シャクシャインが立ちはだかり、妲己の行動を防ごうとする。
「貴様、邪魔だ!」
「はあ!」
シャクシャインが槍を出した。妲己が火炎放射する。それに対してシャクシャインも槍で炎を薙ぎ払う。そしてどこからか大水の攻撃が妲己を襲った。
「いやあ、止めて、止めて、止めてえええ!!」
冬田が羽根から大波を出して襲っていたのだった。
「どうしてこんな事しなきゃいけないのお!?杉山くうん、そんなことしたらあ、大野君が困るわよお!お願いだからいい加減仲直りしてえ!!」
冬田は泣きながら訴えた。
「やかましい娘だ」
「待てよ」
レーニンの声が杉山の声になった。
「大野にはここに来る前に会ったぜ。だが、俺はあいつがいなくても大将になれるって解ったんだよ。その為には『こいつら』の側につくという事だ」
「そんなあ・・・。そんなの、間違ってるわよお!」
冬田は訴えた。
「ワリいな。だが、これが俺にしかできねえ事なんだよ!こいつは貰ってくぜ」
杉山がりえを杯ごと奪おうとした。
「ダメえ!」
冬田の羽根から大木の幹が現れ、杉山を殴り飛ばそうとした。
「渡さないわ!」
ありもアイヌラックルを差し向け、杉山を、いや、レーニンを近づけさせないようにした。そしてみゆきももう一度、ブーメランを投げる。しかし、房子の援護による銃撃、妲己が持つ機械による防御、そしてレーニン自身の武装の能力の防御で全て防がれてしまった。そして威圧の能力をレーニンはりえに向ける。しかし、りえは動けなくなるだけで、気絶とまでは行かなかった。
「ふ・・・。機械を吸収したのでは上手く行かんな。妲己、貴様も威圧感を放て」
「了解」
妲己からも威圧の能力が発動された。
「させるか!」
シャクシャインや阿弖流為達ももう一度、恐れずに果敢にレーニンや妲己に飛びかかった。しかし、全て弾かれた。
「邪魔だ、ここで死んでもらおうか」
「やめろ!」
悠一のテクンカネが光る。シャクシャインや阿弖流為、母禮がレーニンや房子の攻撃から光に守られた。
「レーニン、同化していましたか」
フローレンスが現れた。
「貴様・・・」
「レーニン、いいえ、杉山さとし君、貴方は『そちら』に寝返りまして何をしたいのですか?」
「ふ、俺は大将になる為だよ。大野がいなくてもな」
「それで大将になれますとお思いですか?貴方は大野けんいち君が転校しますと言います事で喧嘩をなされ、そしてその私情をこの戦いに持ち込みます上にそれで我々や共闘します筈の皆様と敵対しまして、何をお考えになられますのですか!?」
「ワリいな・・・、ごたごた話をしている暇はねえんだ」
その時、何かが鳴った。
「こちらレーニンだ。何かあったか?」
『こちら戸平和夫。剣を奪い返そうとする者が接近している模様!』
「なぬ!?くう、フローレンス、そして貴様ら、ここまでだ!妲己、重信房子、今だ!」
「ええ」
妲己は動けなくなったりえをそのまま気絶させ、房子は銃撃を行う。フローレンスによって房子の銃撃は防がれた。そしてフローレンスは九尾の狐の姿の妲己を襲う。フローレンスが光線を放つが、妲己が急に念力のようなものでりえを動かし、楯にした。
(な・・・!!)
フローレンスは自ら光線を消す。あの女の変化能力は非常に厄介と感じた。
「私はここで立ち去る。妲己、その杯の持ち主の子娘は貴様に任せる」
「了解」
「行かせますか!」
フローレンスが何としても止めようと妲己とレーニンをを金縛りにしようと試みた。しかし、機械による武装の能力で防御された。
「貴様ら、ここで生涯を閉じるが良い!」
妲己が妖術を用いた。皆が龍に飲み込まれるような幻影を見せられる。
「な・・・、虞美人、皆様を避難してください!」
「はい!」
虞美人が花を使用し、皆をその場から離脱させた。
りえは意識を失っていた。
[貴様を元・剣の所有者のように殺すつもりはない。杯は貰い、生け捕りにさせていただく]
意識を失う闇の中、そのような声が聞こえた。
(生け捕り・・・?)
りえはこれから己が何処へ連れて行かれるか知る由もなかった。
とある岸では軍隊が引き揚げていた。
「女王、ヴィクトリア女帝の援軍がまた現れて行きます!」
「ちい、ここも劣勢になってきているか・・・。こちらにも最強・無敵の精鋭が来るとフローレンスにイマヌエルから聞くが、早く訪れてきて欲しいものだ・・・」
「もう我慢は終わりになるようだよ」
別の女性が現れた。
「ブランデー・ナンか。どういう事だね?」
「もうあそこにお見えになったからだ」
ブランデー・ナンと呼ばれた女性が指を差す。そこに一名の女性、九名の少年少女の姿が見えた。
後書き
次回は・・・
「偽物の剣」
一人の女王の元に辿り着いた剣奪還班はその女王と共に剣の本格的な争奪戦の段取りを開始する。そして三河口は女王から剣奪還の為、そして今後の戦いを有利とするに必要となる物を受け取るのだが、それは・・・!?
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