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イベリス

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第四十四話 麦わら帽子を買いながらその六

「そうでしょ」
「怪談の人ね」
「まさにその怪談も読んだけれど」
「いいの」
「私にとってはね。妖怪とか耽美とかもいいから」
 だからだというのだ。
「小泉八雲や泉鏡花もいいわよ」
「そうなの」
「そして谷崎や三島もね」
 彼等の作品もというのだ。
「いいって感じたら」
「それでなの」
「読んだらいいわ」
「もう試しに何でも読んでみる?」
「それでいいのよ、ただ私はね」
 ここで愛はこうも言った。
「思想書とか小難しいの読まないから」
「ええと。哲学書とか」
「もう言ってるかも知れないけれど」
 こう前置きして咲に話した。
「ニーチェとかデカルトとか読まないし」
「小説だけなの」
「まして吉本隆明なんて馬鹿の本はね」
 愛は全否定で以て言い切った。
「何があっても読まないわ」
「吉本隆明?」
「戦後最大の思想家と言われていてもね」
 事実そう言われていた。
「あのオウムの教祖を偉大とか最も浄土に近いとか言ってたね」
「あの見るからに胡散臭い人を」
「そう言ってた様なね」
 まさにというのだ。
「馬鹿よ」
「そんな人なの」
「咲ちゃんが興味持ったなら別だけれど」 
 それでもとだ、愛はさらに言った。
「あの馬鹿の本は読む価値がないわ」
「そうなの」
「私あの馬鹿の文章はちょっと読んだだけよ」
「それでわかったの?」
「あのテロやってお金に執着して人何人も平気で殺してクーデターで権力求めて愛人何人も持って食べものにも卑しい教祖を最も浄土に近いとか言ったのよ」
 だからだというのだ。
「その発言の文章読んでね」
「わかったの」
「こんな馬鹿の言うこと聞く価値ないってね」
 愛は吐き捨てる様に言い切った。
「確信したわ」
「そうなの」
「聞いたら最初は何を言ってるかわからない小難しい文章の羅列でね」
「そんな風だったの?」
「そう、それでね」
 そのうえでというのだ。
「そのうちは教祖だったそうよ」
「オウムみたいな」
「何か何を言ってるかわからなくて」
 そうした文章を書いて主張ならというのだ。
「それを理解出来たらいいとかね」
「ああ、それで私頭いいね」 
 咲もそう聞いてわかった。
「偉いって」
「ああ、咲ちゃんもわかったわね」
「ラノベ作家でもいるから」
 それでとだ、咲は答えた。
「小難しい文章登場人物にもう一気に羅列させて言わせる人」
「それを読者さんに読ませるのね」
「それで読ませてね」
 そうしてというのだ。
「さて読者は理解出来るか」
「理解出来たら頭いいってなるでしょ」
「それで偉い、理解出来ないと馬鹿で」
「それよ、もうそこで選民思想出来るわね」
 愛はまさにと指摘した。 
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