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展覧会の絵

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第二話 吸血鬼その二

 そしてだ。そのうえでだった。あらためてその彼、江崎猛を見る。見れば顔付きも弱々しく細い眉が困った感じに曲がっている。全体的に線の細い顔で表情も気弱な感じだ。
 その彼を見てだ。次はだ。
 宮本雅を見る。長い黒髪を後ろで束ねさらに上にあげて団子にしている。はっきりとした顔立ちで凛とした美少女だ。目は大きくやや切れ長だ。気の強い感じで唇も引き締まっていて薄い。見れば脚も長く胸も道着の上から目立っている。背も猛より高い。
 その彼女も見てだ。それで彼等はさらに話す。
「いつも宮本が守ってるからなあ」
「高校生にもなってな、江崎もなあ」
「情けないっていうか」
「やっぱり弱いよな」
「宮本が強過ぎるにしてもな」
 こうだ。礼をし合う彼等を見て述べたのだった。そしてだ。
 彼は猛のところに来てだ。そのうえで言うのだった。
「なあ、もうちょっとな」
「押せないか?宮本を」
「御前いつもあいつに負けてるけれどな」
「御前も二段だろ?」
 空手二段、それが彼の今の段だ。
「それも昇段審査どっちも一発で通ってるだろ」
「で、何でそんなに弱いんだろ」
「ちょっとおかしいだろ」
「どうしてなんだよ」
「そんなこと言ってもさ」
 自分を囲んでどうなんだ、といった感じで言ってきた彼等にだ。猛はだ。
 その困った顔でだ。こう返したのだった。
「雅は強いよ」
「まあな。全国大会にも出てるしな」
「同じ二段でもな」
「強さは違うな」
「それもかなりな」
「だから勝てないよ」
 その顔で言うのだった。困った顔でだ。
「あんなに強いとさ」
「それはわかるけれどな」
「あいつの強さは段超えたものがあるしな」
「けれど。何ていうかな」
「男がなあ」
 女に負ける、それがだというのだ。
「同級生の女の子だぞ」
「普通は勝てるだろ」
「っていうか守られるってどうなんだよ」
「この前だってあいつ等にだろ」
「そんなこと言ってもさ」
 困ったものに苦いものも含ませてだ。そしてだ。
 そのうえでだ。また話す猛だった。
「雅は強いから」
「いや、強いにしてもそれでもだよ」
「男だろ。だったらな」
「あんな連中軽くのして宮本の手を煩わせるなよ」
「その辺りしっかりしろよ」
「僕だってそうしたいよ」
 猛の口調はたまりかねたものになった。それでだ。
 部活仲間達に言った。だが、だというのだ。
「けれどさ。稽古とかじゃないと」
「戦えないか?」
「どうしても」
「そうだよ。そういうのできないし」
 猛の弱い原因がここにあった。空手の腕自体はそこそこでもだ。
 空手の稽古や試合の場以外ではだ。彼は戦えないのだ。しかもだ。
 雅は圧倒的に強かった。だから彼は弱く見えた。どうしてもだ。
 それでだ。彼はなのだった。
「何ていうかさ、どうしてもね」
「無理か、それじゃあ」
「あの連中をどうにかするのは」
「宮本の手を煩わせるままか」
「どうしても」
 こう言ってだ。俯く猛だった。その彼にだ。 
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