仮面ライダーAP
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第18話 曰く付きの男達
前書き
◆今話の登場ライダー
◆芦屋隷/仮面ライダーZEGUN
自身が装着しているZEGUNスーツをはじめ、多くのライダープロジェクトに関ってきた科学者である金髪碧眼の美男子。仮面ライダーZEGUNに変身した後は、特殊なカードを介してエネルギーを凝縮させたキックを放つ「ゼガンインパクト」を中心とする接近戦で戦う。マシンGチェイサーに搭乗する。年齢は25歳。
※原案はヲタク大王先生。
◆森里駿/仮面ライダータキオン
かつてはノバシェードの尖兵であり、遥花に敗れた後は隷の保護観察を受けつつ実験に協力していた改造人間。仮面ライダータキオンに変身した後は、タキオン粒子をチャージして放つ「ライダーキック」を中心とする接近戦で戦う。マシンGチェイサーに搭乗する。年齢は25歳。
※原案はエイゼ先生。
◆ズ・ガルバ・ジ/仮面ライダーN/G-1
19年前に警察の手で殲滅されたとされる「グロンギ」の生き残りであり、駿と同じく隷の実験に協力することを条件に保護されている。仮面ライダーN/G-1に変身した後は、右足に力を込めたキックを放つ「G-1キック」を中心とする接近戦で戦う。マシンGチェイサーに搭乗する。年齢は不詳。
※原案は八神優鬼先生。
ライダーマンGをはじめとする、新世代の仮面ライダー達。彼らはマティーニを筆頭とするノバシェードとの死闘に疲れ果て、その多くが力尽きていた。
累々と横たわる者達を一瞥しながら、気を失っている遥花の前に足を運んだマティーニは、彼女の息の根を止めようと片足を振り上げる。
するとその瞬間、不意を突くように背後からエネルギー弾が飛んで来た。背を向けながら片腕でその光弾を叩き落としたマティーニは、まだ諦めていない者がいるのかと忌々しげに振り返る。
彼の眼前には、マシンGチェイサーに跨る金髪碧眼の美青年の姿があった。赤、青、白に彩られたトリコロールカラーの拳銃「ゼガンシューター」を握る青年は、静かにマティーニを見据えている。
「……まだ他にも、死にたがりが残っていましたか」
「僕自身も含めて……仮面ライダーとは、そういう連中の集まりだからな。人間という種には、君には理解出来ない力が秘められているのだよ。この僕でさえ、解析しきれないほどの力がな」
「理解出来なくて結構。あなた方が決死の覚悟とやらで絞り出す微々たる力など、改造人間という絶対的武力の前には塵芥に等しいのですから」
「……なるほど、理知的なのは雰囲気だけのようだ。理解出来ないものは見ようともしない、知ろうともしない。そんな無学で怠惰な男には、何一つとして導けはしないよ」
警視庁に属する研究チームの主任としてライダープロジェクトに関わって来た、強化外骨格開発のエキスパート――芦屋隷。仮面ライダーティガーをプロデュースした巨大企業「筬夢志重工」からの出資を元手に、数多の試作機を開発した天才科学者である。
彼はマティーニの強大さを知りながらも、共にGチェイサーで駆け付けて来た「曰く付き」の増援を引き連れて、この場に現れていたのだ。隷の「実験」に協力することを条件に仮面ライダーとして生まれ変わった2人の「元怪人」も、ノバシェードの首魁と真っ向から睨み合っている。
「やはり人間とは愚かな者ばかりですね。……これほど分かりやすく力の差を示したばかりだというのに、それでもなお戦わずにはいられないというのですか」
「天峯……その人間の軍門に降った者達の1人として、教えてやる。……貴様のそういう驕りこそが、敗因となり得るのだとな」
「……お久しぶりですね、駿。番場遥花に敗れたあなたがまだ生きていたことにも驚きですが、よもやそちら側に付いていようとは。旧シェードに殺された妹によく似ているという、彼女の存在に絆されましたか?」
「番場遥花は……怪人として堕ちるしかなかった俺を、それでも救おうとしていた女だ。俺は、そんな奴に借りを返しに来たに過ぎん」
かつてはノバシェードの尖兵だった、森里駿。ライダーマンGこと遥花に敗れて逮捕された後、隷の元でライダープロジェクトに協力していた彼は、人間の強さを知った怪人の1人としてマティーニに「忠告」していた。
マティーニの足元で気絶している遥花を見下ろし、苦虫を噛み潰したような表情でかつての上司を見据える駿は、その眼に燃ゆる闘志を宿している。亡き妹の面影を持つ遥花だけは、殺させまいと。
「遊戯にも劣るお前の癇癪を、これ以上放っておくわけには行かんのだ。俺達のような人ならざる者達が、それでもこの世界で生きていくためにはな……!」
「ゲゲル……19年前に初めて存在が確認された古代の戦闘種族『グロンギ』の言葉ですね。彼らは当時の警察が開発した『神経断裂弾』によって全滅したはずですが……まさかあなたは、その生き残りであると?」
「人間の戦士を侮るということは即ち、彼らに敗れた俺達も愚弄している……ということだ。グロンギの誇りを汚す者共を制するためならば、俺は実験動物にも成り下がる」
「ほほう……面白い。他の連中を全滅させた暁には、我々ノバシェードが引き取って差し上げましょう。グロンギの肉体、一度解剖して見たかったのですよ」
2000年に初めて発見された、古代の戦闘種族「グロンギ」。その唯一の生き残りであるズ・ガルバ・ジは、人間の姿でマティーニの前に現れていた。彼も駿と同じ「怪人」に分類される身でありながら、仮面ライダーに与する立場としてこの場に立っているのだ。
隷の研究開発に従事することを条件に抹殺から免れている彼は、グロンギとしての誇りに賭けてマティーニを倒さんと意気込んでいる。そんな彼の闘志を目にしてもなお、ノバシェードの首魁は彼のことを実験動物としか見ていない。
「べらべらと喋るばかりで、そちらから仕掛けて来ないところを見るに。どうやらすでに、エネルギーを温存しなければならない状態にあるようだな。遥花お嬢様達との戦いで、かなり消耗していると見える」
「……だからどうだと言うのです。まさか、今の私ならあなた達でも仕留められると?」
隷をはじめとする、研究チーム出身の新世代仮面ライダー。その立場故、スーツの扱いに最も長けている彼ら3人は、各々の「変身アイテム」を同時に取り出していた。
「ここで何を語ろうと、実現出来ねば所詮は机上の空論だ。……僕達の成果物がその結果に届くか否かは、今に分かる! 森里君、ガルバ君! 見せてあげようじゃないか!」
「無駄口を叩くな、芦屋。そんなこと、今さら言われるまでもない……!」
「俺達は初めから、そのつもりでここに来たのだからなッ!」
先頭に立つ隷がベルトを装着し、駿が試作型ライダーブレスを袖から出した時。ガルバもアタッシュケースを内側から変形させ、身に纏う強化外骨格を形成させていく。
彼らの変身が始まったのは、それから間もなくのことであった。
「変身ッ!」
隷がベルト横の前側にある挿入口に専用のカードを差し込むと、その身体中に下から段々とアーマーが装着されていく。
『GET READY?』
「変身……!」
ライダーブレスに携帯電話を模したデバイスを装填した後、機械音声に応じた駿が声を上げた瞬間。彼の全身が、アンダースーツと装甲に包み込まれていた。
「……変身」
アタッシュケース状の待機形態からスーツ状に変形した外骨格が、ガルバの全身に張り付くように「鎧」として形成されていく。仮面ライダーとしての姿を得た彼を最後に、曰く付きの男達は全員の「変身」を完了させた。
「これまで世界各国の軍や企業の要望に応じて、何着ものスーツを仕上げて来たが……やはり僕にはこれが1番しっくり来るね。なにせ出力だけなら、USAとボクサーにも負けていない代物なのだから」
「仮面ライダーG3」を想起させる外観に加え、額の部品がV字型のアンテナに換装されている「仮面ライダーZEGUN」。その全身の配色は赤、青、白のトリコロールカラーになっている。
装着者にして開発者でもある芦屋隷は、そのスーツから漲る最高出力のエネルギーを肌で感じ取り、武者震いしているようであった。
「……番場遥花を殺らせはしない。お前の手の内を知らない奴ばかりだと思うなよ? 天峯……!」
黒のアンダースーツの上に装着された、スリムな印象を与えている灰色の装甲。その外観は「仮面ライダーカブト」を想起させるものであったが、頭部の形状は「仮面ライダーヘラクス」を彷彿とさせていた。透き通るような水色の両眼を持つその戦士の名は、「仮面ライダータキオン」。
隷によって発見された未知の物質「タキオン粒子」を取り入れた実験機であり、超加速機能「CLOCK UP」の試験も兼ねている、森里駿の専用スーツであった。改造人間である駿でなければその機能に耐えられないとされている、装着者以上に「曰く付き」な呪物なのである。
「グロンギとして、リントに与する者として、そして仮面ライダーとして……お前の蛮行は何としても阻止する」
「仮面ライダークウガ」のマイティフォームを基盤としつつ、よりメカニカルで無骨な外観になっている「仮面ライダーN/G-1」。その鎧を纏うズ・ガルバ・ジは、得手とする近接戦に備えるかのように、腰を落として身構えていた。
「……数にものを言わせることしか能のない弱卒共が。いいでしょう、やれるものならやってご覧なさい。いい加減、私もうんざりしているところなのですよ!」
「それは良い。……君の心が乱れれば乱れるほど、僕達の勝率も上がるというものだッ!」
「うんざりしているのは俺達も同じだ。奇遇だな、天峯ッ!」
「お望み通り、すぐに終わらせてくれるッ!」
彼ら3人は共に並び立つと、マティーニを仕留めるべく一気に飛び出して行く。「曰く付き」の男達は激しく拳を振るい、蹴りを放ち、力の限り打撃を叩き込み続けていた。己の命ごと、燃やし尽くすほどの勢いで。
「はぁあぁあッ!」
「とぁあァッ!」
「ぬッ、むぅッ! ……ふふっ、3人掛かりでその程度ですか! やはり戦闘員としての『質』においては、その目的にのみ特化している改造人間には敵わないようですね!?」
「デカい口を叩いている暇があるなら、さっさと僕達を片付けてみたまえよ! それともしないのではなく、出来ないのかな!?」
そんな彼らを同時に相手取り、その打撃全てに対応し続けているマティーニも、己の全力を使い果たしてでも彼らを討ち取らんとしていた。軽口こそ叩いているようだが、どちらにも余裕は全くないのである。
遥花を含む仲間達を倒されてしまったZEGUNとタキオンとN/G-1には、もう後がなく。彼らの猛攻を必死に捌いているマティーニにも、ほとんど余力が残っていない。この激戦の勝敗が、人類とノバシェードの未来を決すると言っても過言ではないのだ。
この戦いの終幕は、刻一刻と近付いている。しかしZEGUN達に加勢できる戦力は、もう残っていないのが実状であった。
「……んっ、ぅう……!」
暗い闇の底から、目覚めかけている番場遥花を除いては。
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