おっちょこちょいのかよちゃん
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
196 同体化した少年
前書き
《前回》
かよ子達藤木救出班はレーニンによって再生されたゴジラによってとある山脈の中へと飛ばされてしまった。かよ子は己のおっちょこちょいのせいだと自分を責めるのだが、皆の声に支えられ、気を取り直す。その一方、赤軍の重信房子と戦争主義の世界の長・レーニンはある目的の為に動いていた・・・!!
オリジナルキャラ紹介・その18
尾藤海斗(おどう かいと)
熊本県に住む中学生。初登場116話。サッカーに打ち込んでおり、部活もサッカー部に所属している。清正から託された蹴ると炎を噴き出して勢いをつけて相手を攻撃する不思議な球を使用して戦う。攻撃重視の武装の能力を所有している。彼の母は嘗て清水に住んでおり、戦災孤児として先代の杖や護符の所有者と会った事がある。好きな食べ物はチャーハン、うどん。
かよ子は谷の中で一夜を過ごしていたが、ふと急に目が覚めた。しかし、まだ夜は明けていなかった。
(こんなに早く目が覚めるなんて・・・)
別に例のレーニンが出てくる夢でうなされていた訳ではない。ただ何となくである。皆は眠っていた。まる子は寝相が悪く、ゴロゴロ転がりながら寝ていた。
「何か、落ち着かない気分だな・・・」
かよ子には見聞の能力は持っていない。しかし、心のどこかで落ち着かない感じがしていた。それは目的地から遠ざかってしまったからか、それとも自分の好きな男子が赤軍達の側に寝返ってしまったからか、もっと言えばその両方なのか・・・。
(イマヌエルさんは、あの山を越えればいいって言ってたな・・・)
かよ子は緑のない、土のみの山を見た。そして日が出るまでそのまま見つめていた。
「おお、山田かよ子、起きていたのか」
「石松・・・」
石松が起きていた。
「うん・・・、早く起きちゃって」
「まあ、遠くの地に飛ばされたのだ。悔しい余りであろう。だが、挫けるでない。必ず目標は達成するべきだ」
「うん、そうだよね・・・!!」
そして皆が大体起きて来た。
「あ、かよちゃん、おはよう~」
「まるちゃん、おはよう」
そして声が聞こえた。
『皆様、おはようございます。朝食の御用意ができましたのでお召し上がりください』
フローレンスの声だった。今朝は和食風だった。鯖に米、味噌汁にお干たし、そして海苔だった。
「ちぇっ、今日は外れかあ・・・」
まる子は少し不貞腐れた。
「さくらももこよ、飯の献立に当たり外れなど関係ない。気に入らなければ食わなければよかろう」
石松が窘めた。
「ぶー・・・」
「私、ももこちゃんがそう言うの言うと嫌だ・・・」
のり子が悲しげに言った。
「あ、うん、ごめん・・・」
「よし、食ったら先行こうぜ」
大野が案じ、皆は了承した。そして食べ終わると、かよ子は羽根を動かし始める。
「それじゃ、行くよ!」
羽根は飛ばした。山脈の山々のうち、緑のない山を飛んでいった。
「次郎長さん」
「何だ?」
かよ子が質問する。
「この山脈は色々な山があるよね。どうして一つの山脈に緑があったりなかったり、火山や雪山、さらには雲が上に乗ってる山とかあるの?」
確かに、この山脈の山々は多様な性質を持っている。
「この山々には様々な性質を持っているように作られたのだ。西洋にある四大元素および東洋、特に中国から伝わる五行説の源となるようにな」
「四大元素?五行説?」
「四大元素とは炎、水、地、風の事、五行説とは炎、水、木、金、そして土の五つの事だ。お主の杖は杯、護符、剣と共に四大元素を司る最強の宝具の一つ。杖はその中で炎を司る役割であるのだ。フローレンスとイマヌエルはこの地を作り出した時にその元素の源をこの山脈としたのであろう」
「そうなんだ・・・」
山脈を越えた所、大野や関根が異常な程の胸騒ぎを覚えた。
「この胸騒ぎは・・・、近くに『敵』がいるぜ!」
「ええ!?」
「何だ、あの車は?」
綱五郎が一点を指差した。自動車が通っていた。
「あれは・・・!」
かよ子達が発見すると同時に車から人間が二人降りてきた。一人は女でもう一人は男だった。
「杖の所持者か」
「レーニン様、丁度いい時に出会いましたね」
「ああ、寄り道するか!」
「あの人は・・・!」
かよ子はその女を覚えていた。クリスマス・イブの日に名古屋で赤軍達と戦った日に現れた赤軍のリーダーだった。あの時は広島から奪ったという異世界の剣を用いていた。
「絶対に杖は渡さないよ!」
かよ子は強気になる。
「本部に連絡せよ!」
石松が促した。
「了解!」
椎名が通信機を取り出して本部と連絡を取る。
「こちら藤木救出班、椎名歌巌!赤軍の長に異世界の男一名と対面した!」
『なんですって!?』
「通信したって何のいい事がある?」
男が呟いた。そしてかよ子達を睨む。
「くっ!」
かよ子の羽根の結界が男の攻撃を防ぐ。
「ふ、やはり機械では借り物の威力にしかならんか。威圧の能力とやらでもな」
そして男の声が変わった。
「よう、こんな所まで来てたなんてな」
かよ子達にとって聞き覚えのある声だった。
「・・・え?」
本部の管制室。かよ子の母達が杖の所有者の様子を確認する。
「うちの子がまた敵とぶつかったって!?」
「はい、赤軍の長に更に敵の勢力の人間です!」
フローレンスはその位置にいる点に違和感を感じる。本来、戦争主義の人間であるならば点の色は黒になるはずである。しかし、点は黒と黄、交互に表示されていた。
「この点は一体?敵ですか、味方ですか・・・?」
フローレンスはもう一度藤木救出班に連絡する。
「こちらフローレンスです。皆様が相対していますのは赤軍の人間ともう一名はどなたなのですか?」
『フローレンスさん、レーニンって人とあたってるけど・・・。声が杉山君に変わった・・・』
「杉山さとし君に!?」
フローレンスは思い出した。戦争主義の世界の長・レーニンは偽物の護符、杖、杯の能力が作動して動けなくなった事。しかし、赤軍の丸岡修がこちらに監禁していた足立正生と吉村和江を奪還された際にレーニンの声が聞こえた時、「あの少年」の声が聞こえた事。つまり、レーニンは杉山さとしの身体を吸収してそれを「核」として動いていると言う事である。
(しかし、どうしてあのレーニンが動いていますのでしょうか?他の者に出向かせますよりも自分で行きます方が都合がいいのですか?)
イマヌエルが呼ぶ。
「フローレンス、大丈夫か?」
「いえ、私が以前、赤軍の人間を取り返されますといいます失態を犯しました時、レーニンの声が聞こえましたのです。その時、杉山さとし君の声も聞こえまして・・・。つまり、レーニンは杉山さとし君を取り込みまして、杉山さとし君の身体で動いてていますといいます事になります」
「何だと!?」
イマヌエルにとっても信じ難い事であった。
「お前ら、また会ったな」
その声は紛れもなく杉山さとしの声だった。
「その声は・・・、杉山君!杉山君なの!?」
「そうだよ」
相手は否定しなかった。
「俺はこいつの身体と一体となって動いているんだよ。自分が大将だって事を解らせる為にな」
「杉山・・・」
大野の拳が怒りで震えた。
「おめえ、いつからそんなクズに成り下がったんだよお!!」
大野はレーニンを、いや、杉山を殴りにかかった。しかし、呆気なく弾き返された。
「うおっ・・・!」
「大野君!」
「大野けんいち!」
「無駄よ、レーニン様にも『あの機械』を持たせて吸収しているのよ」
房子が説明した。
「あの人!剣はどこなの!?今持ってるの!?」
「それは貴女達にとって知る必要の無い事よ」
赤軍の長の女性はあえて明かさなかった。
「折角通りかかった駄賃だ。杖諸共貰おう!」
杉山からレーニンの声に戻った。
「山田かよ子!羽根から出るな!」
「うん!」
かよ子は次郎長の指示に従った。
「山田、お前、羽根を改造したのか?」
杉山の声に変わった。
「ほう、桐島聡達東アジア反日武装戦線との戦いや、昨日の和光晴生が出した怪獣の能力からして羽根に結界が張れるようだな。だが、我が威圧の能力とやらで気絶させてくれる!」
レーニンがかよ子を睨みつける。かよ子はレーニンの圧が身体に来て震えるのを覚えた。威圧の能力が効いているのだ。次郎長達も気絶してしまった。
(私の武装の能力や結界でも駄目なの・・・?耐えたい・・・!それに・・・)
かよ子はある願いをを持っていた。
(このレーニンが杉山君を取り込んだっていうなら連れ戻したい・・・!)
その時、越えたばかりの山脈から音が飛び出した。
「・・・え?」
かよ子は振り向いた。山脈の火山から炎が噴火していた。その炎がかよ子に、いや、かよ子の杖に結界を貫通して降りかかった。杖が桃色に光る。
「これは・・・?」
かよ子ですら驚いた現象だった。
「あの山から杖に力を・・・?」
房子でも理解不能だった。
「これは・・・!!」
レーニンは苦しみ出す。
「重信房子!杖は後回しだ!杯の持ち主を追うぞ!」
「え、ええ!今日はここまでよ!次は必ず貰うわ!」
二人は車に乗る。
「い、行かせないよ!」
かよ子はリュックから花火を取り出し、火薬を操る能力を得た。しかし、武装の能力なのか、撥ね返された。
「行っちゃった・・・」
かよ子はレーニンの言葉を思い出す。
「杯の持ち主を追う・・・?」
そしてあの二人の狙いが解った。目的はりえの持つ杯と。
後書き
次回は・・・
「目指すは杯」
赤軍の長と戦争主義の世界の長が第一に狙うのはりえが持つ杯だと解ったかよ子は慌ててりえに連絡を取る。だが杉山を追う為に進むりえ達の前に一人の女性が立ちはだかる。その女性は狐の姿に変化し・・・!?
ページ上へ戻る