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私はいじわる 小悪魔が住みついた

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3-⑾

 3月期の終業式の日、私が学校に行くと、もう自分の机に座って、昂君が何人かの男の子に囲まれていた。

「昂 昨日 そんなこと言って無かったやんかー」と、咄嗟に言ってしまった。みんなは

「わー 昂の彼女がきたー」とか、言って居たけど、昂君は

「すまん すまん 急に、決まったんや 終業式なんで出たいって言ったらな」と、平気な顔をしていたので

「なんで ウチに連絡してくれへんのー 行ったのにー」

「でもなー お前が来ても 何してくれるん 無駄やろー」

「そんなんゆうてもー 朝も登校班に居てへんやったやんかー」

「あー まだ、松葉杖やろー 歩くの遅いから、早い目に出て来た」

「何で ゆうてくれへんの― 一緒にきたのにー」

「ウン お前 寝ぼすけやし どんくさいのってお荷物になるからなと思ってな」

「うー 言うてくれたら 起きたワー お前って言わないでよー! なんで、ウチのことを・・・」

「ちょっと 昂 真珠がどんな思いで毎日、病院に通っていたと思ってんねん 男の子達から冷やかされても あんたが勉強遅れないようにって思って・・たんやで・・ もっと、真珠の気持考えてやってよー 昂って、恰好良いって思ってたけど、真珠を悲しませるようことばっか言って・・ウチは真珠の親友やから許せへんでー」と、見ていた鈴花ちゃんが昂君に詰め寄っていた。

 男の子達は、鈴花ちゃんの剣幕に散って行ったが、昂君が

「わかったよー そんなに怒るなよー きれいな顔が鬼みたいになってるぞー」と、ポツンと

「うーぅ ウチのことは関係ないやんかー」

「関係ないんやったら 俺と真珠のことやから 怒るなよー」

「くっ クッ 真珠 こんな奴 放っとこー もう あきらめなよー 他のもっと良い男が居るってー」と、私を昂君の席からはなすに引っ張って行ったが、その時、私は昂君の方を見ると、昂君が私を見て、チュッとするような仕草をしていたのだ。

 なっ なんなのよ 今の エェー キッス? そんなわけないよね いや 違うかな 確かにキスしてくれたのー よね 私、錯乱したまま席について、先生が入ってきても、話もうつろだった。

 終わって帰る時、どうしようかなって思ったけど、昂君の机に寄って行くと

「真珠 荷物 持ってくれるか?」と

「ウン かめへんけど」私は、突然なので動揺してしまった。

 靴箱のところに来ると、蘭ちゃんが、待ってたかのように駆け寄って、昂君に声を掛けて来た。

「昂君 退院おめでとう でも、まだ、足 完全じゃぁないんだ 大丈夫? 私 心配だわ」

「ぶつかると 危ないから 離れてよー 真珠 荷物もってるから、履き替えるの、昂に肩かしてあげなよ」と、近くで見ていた鈴花ちゃんが、私の背中を押しやってきて、荷物を取り上げてきた。
 
 私はー えぇー えぇー と、動揺しながら昂君の横に行って、腕を支えていたんだけど

「すまんな 真珠 肩 貸してもらっていいか」と、私「ウー?」と返事してんやけど、直ぐに肩に手をまわして、引き寄せられていた。私、その瞬間「なによー これって」と、顔が真っ赤になっていたと思う。

 それを見ていた蘭ちゃんは、鈴花ちゃんを睨みつけるように、何にも言わないで行ってしまった。鈴花ちゃんは、後ろから「フン」と、言っているように聞こえたのは気のせいだろうか。

 歩き始めた時、昂君は右側だけ松葉杖を使っていた。

「なぁ 昂 ウチは並んで歩いた方がいいの? 後ろからの方がいいのかなー?」

「うーん どん臭く無ければ、左の斜め前がいいんだけど まだ、足が頼りなくてな 杖使ってんねん」

「難しいこと いわんとってーなー 斜め前ねぇー」と、車が通るのをガードするように歩いていた、そして、後ろから香菜ちゃんが付いて来ていた。

「真珠 俺 リハビリで病院行くねん 途中までで良いから ありがとうな」

「えー 病院行くんやー ウチも付き添いしてってええかなーぁ」

「うー かまわんけど つまらんぜー」

「ええねん 昂が 苦しそうにしてるのって おもろいかなーってな そんなん、なかなか見られへんやん」

「あのなー 治ったら お前のこと追いまわすからな―」

「ええでー ウチ その折れたとこ 蹴とばしたんねん」

「あのなー 後ろから聞いとったら 言い合いしとっても、イチヤイチャしてるみたいでなー うち こっちやから帰るでー 真珠 荷物どうする? 運んどいたろかー?」

「あぁ ごめん 香菜ちやん 持っていけるし、大丈夫 又、遊びに行くなー ウチ 病院付いて行くわー」と、香菜ちゃんと別れた。

「昂 さっきのん どういう意味やのー」

「さっきのって 肩貸せっていったことかー 柔らかくて、助かったよー」

「ちゃうって 教室のこと ウチに向かってチュッとしとったやんかー」

「うーん そんなことしたかー 見間違いちゃうかー そんなことばっかー考えとるから」

「ちゃうわー ウチは・・ただ もう ええねん」

 病院で、昂君がリハビリしているのをガラス窓から見ていると、数歩歩いたかと思うと、脇の手すりに摑まると言う繰り返しだった。あんな歪んだ昂君の顔を見るのは、初めてだったのだ。でも、必死になって、自分の足で歩こうとしていた。その後、電熱で温めたり、マッサージをしてもらって、出て来た昂君に

「お疲れ様 辛いよねー」と、昂君の腕を支えていたら、

「すまん 肩 貸してくれ」と、又、肩に手をまわしてきた。

「チョットー ウチは、別にええねんけどなー はずかしいー みんな見てるやんかー」

「かまへんやないか 柔らかくて、気持ち良いよ」

「あのさー 変なふうに、考えてるんちゃうやろなー」

「真珠 と違うから・・ もう、先生も杖を使わないでって、言ってたんやけど、なんか不安でな」

 しょうがないので、そのまま肩で支えるようにして、歩いて帰っていった。私は、道行く人の視線を感じながら、恥ずかしいので昂君の足元ばっかり見て、顔を上げれなかったのだけど、火照ってきているのが自分でもわかっていた。






 

 


 
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