タイトル案は第一話に記載しています。
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
帝都終末戦争③【終】
ー帝都 中央ー
「潔く死ね。お前にできることは、もう無い」
「いいや、信じている限り、僕が負けることはない」
大佐が勇者を追い詰め、風を集める。
イメージしろ..!!!!
「第三章...」
「第四章...」
二重の光を、剣に集める。
「その程度の光、跳ね返してやる..!!」
その時、大佐の頭上で、短刀が光った。
「何!!?」
(さっき石を投げた瞬間、上へと放り投げたのか!?)
(短刀は全て使い果たした..!!このまま挟撃する..!!)
「『断罪』」
「『神罰』」
「『執行』」
光だけの三重奏が、大佐へと降り注ぐ。
「ぐっ!!」
嵐を発生させて防ぐが、それでも防ぎきれず、あちこちに傷を負う。
(もう傷の回復は待てない..!! このまま光で焼き尽くす!!)
(私が負けるわけにはいかない..!! 死力を尽くして、最後の脅威を打倒する..!!)
右手を15度回し、斬撃のような風を放つ。
「第一章『救済』」
「第二章『断罪』」
「第五章『審判』」
暴風の斬撃と、光輝く十字の三重奏が重なり合って弾ける。
力は互角。両者共に一撃ごとに傷を負っていく。
ー第一章第一節_何人たりとも神に背いてはならず、神の教えは絶対の正義であるー
ー第一章第二節_魔族は人類にとっての敵であり、神に背く害悪であるー
ー第一章第三節_人に生まれたならば必ず正義を為すべきであるー
ー第一章第四節_穢れなき魂は、死後救済の地へと導かれるー
「第一章『救済』」
「第三章『神罰』」
「第四章『執行』」
終焉の光と荒れ狂う風が激突し、その衝撃で周囲が崩れていく。
激闘の最中、大佐が口を開く。
「なぜここまで......お前、狂っているな」
「いいや、僕はそう思わないな」
世界の全てが僕を非難しようとも。
正義は僕にある。
他でもない僕が、それを信じているから、戦う。
ー第二章第三節_正義を為すのに、手段を選んではならないー
ー第二章第七節_何時如何なる時も、冷静さを欠いてはならないー
ー第二章第十五節_正義を阻むものは、即ち悪であるー
理解者なんていらない。
誰にも理解されなくたっていい。
僕一人、そこに立っていれば十分だ。
「第二章『断罪』」
「第三章『神罰』」
「第五章『審判』」
光と風は、互いを削り合いながら激闘を続ける。
人生に一度だって無駄も間違いもない。
それ故に正しくて有意義だ。
僕は誰にも負けはしない。
互いに深手を負う。
もう後がない状況で、両者は接近した。
模擬戦でお前に勝ったことは一度もない。
だから、今このとき、お前を倒す。
そして、大佐は、強く右腕で拳を突き出した。
それを躱して、右腕を踏んで飛び上がる。
すかさず、左腕の拳で僕を狙い、打ち込んでくる。
身を翻し、左腕を蹴って、両足を開いて地面に着地する。
その状況で、大佐は右手を回さず、真っすぐに勇者の胴を狙う。
放たれたるは、人類最強が繰り出す全力の一撃。
嵐を越えた、全てを破壊する爆風が、勇者に放たれる。
ーなら、それは失敗じゃない。次への布石さ。
ー私がいなくなっても、いい子にしてるんだよ。
「聖典........題目......」
ー第一章『審判』
ー第二章『断罪』
ー第三章『神罰』
ー第四章『執行』
ー第五章『審判』
「『アリシア』」
全ての光は収束し、聖なる剣は振り切られる。
そのとき、勇者の剣は《《風を斬り裂いた》》。
炎上する帝都の中央で、立っているのは勇者一人。
ー神様がそう言ったの。いいことしたら救われるんだってね。
ー第一章第四節_穢れなき魂は、死後救済の地へと導かれるー
これで、やっと..............
そして勇者は地へ倒れた。
だんだんと呼吸が浅くなっていき、目が虚ろになっていく。
帝都中央、その様を見つめる群衆はもういない。
ーじゃあね。また、会えるから。
ああ、やっと会える。
赤く燃える帝都の中心で、一人、息を引き取っていく。
さてと、帰るか。
ページ上へ戻る