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それ以上

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第五章

「よく磨かれていて」
「元々上等のもので」
「造りもいいです」
「銀の質も」
「こちらもな」
 かなりというのだ。
「いいな」
「全くです」
「そして料理の一つ一つもです」
「実にいいです」
「山海の珍味を集め」
 そうしてというのだ。
「そしてです」
「上等の調味料や香辛料で味付けし」
「かつ料理の腕もいいです」
「それもかなり」
「これはだ」
 王は食べて言った。
「フランソワ=ヴァテールのものだ」
「あの料理人ですか」
「フランス一とさえ言われる」
「あの料理人がですか」
「ここにはいてだ」
 この城にはというのだ。
「采配を振るっている、しかも我々以外の者達を見ろ」
 王は宴の参列者達も見る様に言った、すると。
「錚々たるものだな」
「我が国の諸侯が集まっています」
「名のある諸侯は全て」
「そして名士達もです」
「誰もが」
「あれはジャン=ド=ラ=フォンテーヌだ」 
 王はその中の一人を見て言った。
「詩人のな」
「はい、間違いありません」
「我が国一の詩人ではないですか」
「あの者も来ていますな」
「劇作家のピエール=コルネイユもいる」  
 彼もいた。
「そして作家のポール=スカロンもな」
「芸術家も錚々たる顔触れです」
「他にも才能がある者が揃っています」
「実に見事です」
「列席者まで」
「余ならば普通に集められるが」
 王である自分ならというのだ。
「余以外ならだ」
「まさに大蔵卿のみ」
「このフランスでは」
「左様ですな」
「見事なものだ、余なら出来るが」
 王はまたこの言葉を出して述べた。
「しかし今の余はこれ以上のものを持ってはいない」
「そうした意味で大蔵卿は王を超えられている」
「既に持っている時点で」
「そう言えますか」
「そうだ、そして今よりだ」
 王は今度は正面を見た、そこには舞台があるが。
 バレエがはじまっていた、フランスでも屈指のバレリーナと演奏家達による衣装も華やかなバレエであったが。
 そのバレエも見てだ、王は今度はこう言った。
「最高の舞台がはじまる」
「今度は舞台ですか」
「舞台がはじまりますか」
「バレエが」
「今から観よう」
 王は全く笑っていない目で述べた、そして。 
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